来訪者
◆◇sight:3人称◇◆
「な、なんだよ・・・・ここ」
「え、勇真・・・なにここ、私たちどうしちゃったの?」
「・・・・っ」
「おやおや・・・これは――少し弱った状況ですね」
男性が3人、女性が1人の突如、魔の森に放り出されていた。
勇真と呼ばれた男はどうやら、呼んだほうとカップルのようだった。
カップルの年齢は大学生ほどだろうか。
残りの男性2人は寡黙そうだが、ガッシリとした体格の眼光鋭い男性。40代ほど。
もう一人は、細身で柔和な笑みを浮かべた男性。30代ほど。
勇真と呼ばれた男が、男性2人を警戒する。
「おっさん共、陽に近づくなよ?」
「勇真!」
陽と呼ばれた女が感動したような声を出した。
「陽お前は絶対に、俺が護るからな!」
「うん、信じてる!」
盛り上がるカップルを他所に、男性2人は辺りを観察し始めた。
柔和な笑みを浮かべる男性が、近くの植物を見る。
「あの植物――」
「これが?」
寡黙そうな男が、植物を見て手を伸ばした。
「――ああ、手は触れないで下さい。ヤケドするかも知れません」
寡黙そうな男性は、伸ばそうとしていた手を、引っ込めた。
「なるほど」
「ハバネロですね。店で扱っていました」
「ほう」
「周りの様子からも察するに、ここは恐らく熱帯雨林です」
「わかるのか?」
「ハバネロは、熱帯雨林が原産なので」
「詳しいな」
「確定ではありませんが」
「とにかく、わけのわからない状況だが、俺達が危険な状態なのはわかった。まずは水の確保が優先だろう。水辺を探さないと」
「ですね・・・・それから火と雨風をしのげるシェルター」
寡黙そうな男性が、男女を振り返る。
「君たちは、枯れ葉や枯れ枝、乾いた木材を集めてくれないか?」
だが、若い男は怒声を挙げる。
「オッサン、調子に乗んなよ!? 陽にいい所でも見せてぇのか!? ――なんで俺がお前の命令を聞かないといけねぇんだよ! まずは武器だろう、陽を護るための! 野生動物からも、お前らからも!!」
寡黙そうな男性がため息を吐く。
「そうか」
言って彼は、柔和な笑みを浮かべる男性と、水辺を探しに向かった。
「私の名前は高山です。 高山妙利。輸入業を生業としていました」
「俺は杉田 鋼一。金型技師をやっていた」
「おや? 杉田さん、何をしているのですか?」
杉田は、尖った石で、近くの樹に傷を付けながら歩いていた。
「目印だよ、こうしておかないと、あの2人の所に帰ってやれん」
「ははは――正直、私は彼等を見捨ててもいいと考えています。ほぼ間違いなく、何かのトラブルを起こす」
「そう言ってやるな。若いヤツなんてあんなもんだ。一途ないい男ではないか」
高山が肩を竦める。
「お優しい」
「心苦しいだけだ」
「おっと、せせらぎの音がしますね――背の低い草木が見えます。おそらくあっちでしょう」
「本当に詳しいな」
2人の男性が小走りになると、かくして川が見つかった。
「随分濁った川だな」
「まるでアマゾン川だ――これは日本人の私たちだと、飲むのに苦労しそうですね・・・・」
「熱すれば良いのではないのか?」
「日本人がこの水を熱しただけで飲んだら、お腹を壊します。細かいドロや植物の成分などが混ざっているんです――これを飲むなら、凝集剤という物を使わないと無理です」
「作れるか?」
「いや・・・凝集剤ですよ? 私にはとても・・・・」
「それは、弱ったな」
「水は・・・最悪、最初はこれを飲むしか無いですが、なんとか雨水を溜めたりしましょう――とりあえず、食料確保をしましょう。罠を仕掛けておきたい。丁度いい。竹も見えます」
「罠?」
「筌と言います。簡単に言えば返しの付いた籠です――竹で編めます」
「ああ、あれか。作ろう、手先は器用な方だ」
「助かります。私はもう少し簡単な罠を作ります」
「簡単な?」
「川の流れの緩い場所の側に穴を掘って、竹管をナナメに埋めるだけです。細い場所を好む魚が、たくさん捕れますよ」
「飯の心配は無さそうだ」
「そこらに、食べられる野草があります。それも集めておきます」
「あの2人も、こちらに移動させるか」
「ですねぇ」
男2人は罠の準備に取り掛かった。
そうして仕掛けを終えて、元の場所に戻ると――、
「アイツ等・・・・」
「いませんね」
高山は、持っていたメモ帳を破いて書き置きをする。
『水辺を見つけました。樹に付いた傷を目印に来て下さい』
そうして、竹に入れて持ってきた水と、バナナと、バナナの葉に包んだドジョウを置いて移動した。
「案外、優しい所があるじゃないか」
「ああしたほうが、杉田さんが移動しやすいでしょう? ――正直、私は彼らと合流できないほうが、良いと思ってますよ」
「・・・・そうか、正直だな」
「お褒めに預かり光栄です。腹の中は見せるタイプの交渉人なので」
そうして、彼らは出会う。
「ん? ――人か?」
「原住民でしょうか? ――いや・・・・ドレスの原住民?」
運命となる少女に。




