発動ですわ
「とにかく、一酸化炭素をもっと!」
「う、うん!」
私とメグは2つの鉄塊を押し返しながら、炭を投入して燃やし続ける。焔爪と凍牙にはもうこっちの存在に気づかれたんだ、全部ぶち込んで、炎の行きをいを増した――でも。
「ねえ、アリシアさん。この鉄やタングステンって、いつか消えるんだよね?」
「ですわ。この足元に置いてある鉄球が消えたら、10秒後ですわ・・・・消えたら一目散に左右に避けるんですわよ。奴の体当たりで残ったタングステン塊は吹き飛びますわ――恐らく、ヤツの本気の体当たりにはこのタングステン塊1つでは耐えられません――そして、体力を温存しておきたいので、これ以上の魔法の使用は避けたいです」
魔法を使うと、体力を消費する。
体力を消費するってことは、運動ができなくなるってこと。このまま洞窟を塞いでいても、いずれ鉄やタングステンの塊は維持できなくなる。
その時体を動かせないほど疲れていたら、何もできない。だから塊の維持はここまで。
「え・・・・この量の鉄塊が!?」
これは鉄じゃなくて、タングステンだけどね。
奴の体当たりがまた来た。私とメグは、意味があるのかわからない押し返しを続ける。
――と、足元の鉄球が消えた!
「10! 9! 8! ――3! 2! 1――躱しあさばし!」
焔爪と凍牙の本気の体当たりが、残るタングステン塊に炸裂、洞窟の外へ吹っ飛んだ。
あれに巻き込まれたら、私達じゃ即死だった。
「メグ、決着を付けますわよ!」
「う、うん!」
焔爪と凍牙と正面から対峙する私とメグ。
焔爪と凍牙も無傷じゃない。
一酸化炭素によるダメージは相当食らってるはずだし、ナトリウムによる爆発を内臓に受けたのも効いてるはずだ。
焔爪と凍牙が咳き込んだ、血を吐いている。
他のダイアハウンドの援軍は来ないようだ。恐らく一酸化炭素中毒で死ぬか、気絶したのだろう。
そして、まだ生きていても、意識を失ったなら放置すれば死ぬ。
私は、魔法で鉄の盾と鉄の剣を作る。
「わたくしが囮になります。メグは弓を射てくださいまし!」
「えっ、まって、囮はウチのほうが――!」
「わたくしはこいつの攻撃パターンを知ってるんですの! 早く!!」
「う、うん!!」
焔爪と凍牙なんて大層な名前が付いてるけど、相手はしょせん犬だ。
奴の攻撃は、左右にステップしてから、突進して焔爪かによるひっかきか、凍牙による噛みつき。
私は焔爪と凍牙の左右ステップに、完璧に盾を向けながらその時を待つ。
メグの矢はまるで焔爪と凍牙には通用せず、弾き返され続けている。
「ごめん、アリシアさん・・・ウチ役に立たない! ・・・・」
悔しいのか、申し訳ないと思っているのか、歯を食いしばって震えている。
涙まで流している。
「・・・・役に、立てないよぉ・・・」
大丈夫だよメグ、泣く必要なんてない。
(それにしても焔爪と凍牙が、なかなか攻撃してこないな)
相手の動きが読めてるから、完璧に左右ステップに対応してるからか。攻撃してこない。
どうしても側面を取ってから、襲いかかりたいんだな? ・・・・ならさせてやる。
私は焔爪と凍牙の動きに、ワンテンポ遅らせて振り向いた。
「来た!!」
焔爪と凍牙が前足を大きく振りかぶり、顎を開いて跳んできた。
ここだ!!
「〖金属生成〗――11、マグニルムル!!」
私は、奴の顔の通り道にマグネシウムの霧を創造。
そうしてマグネシウムと、奴の焔爪が振れた瞬間!
ド―――――――――ッ!!
大爆発が起きた!
「あ、アリシアさん、なにこれ・・・か、火薬!?」
「粉塵爆発ですわ! ――それもマグネシウムの粉塵爆発! 核爆弾の次に威力があるとされる、燃料気化爆弾にも使われる物質による爆発!」
「か、核爆弾の次・・・・」
とは言っても、核爆弾とは比べるべくもない威力だけど。
私の背後で、鉄塊が消滅したのを感じた。
焔爪と凍牙の片方の頭がグチャグチャになっている。さらにもう片方の頭も半分グチャグチャだ――ふらついている。
メグが矢を番えていた弓を下ろす。
私も、剣と盾を降ろしかけた。
「流石にもう」
でも――、奴は倒れなかった。
踏ん張ると、空に咆哮した。
「ドォォォオオオォォォオオオオオオン―――ッ!!」
前に遠くで聞いた時の遠吠えとは、桁違い。
音の塊が、私とメグの腹の底を揺らした。
「う、うそ・・・!」
メグの声が掠れている。
私の足も震えている。
だが、焔爪と凍牙は、警戒心をMAXにしたのか、私達の周りを回りだす。
低く唸っているけど、私が盾を相手に向け続ける限り、襲ってこなかった。
「ア、アリシアさん、どうしよう! ――ウチの矢もアリシアさんの背中から貰った矢も最後の一本だよ!! もう攻撃手段が・・・・! ウチが、役に立てなかったからぁ・・・!」
私は唇の端を釣り上げた。
「勝ちましたわ」
「え?」
焔爪と凍牙が、激しい咳を始める。
そうして、大量の血を吐いた。
「塩基Do―――発動ですわ」




