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ゼロから嗜む、文明作り!  作者: 毘沙門 子子


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16/42

決戦ですわ

 薪の爆ぜる音に、私は〝アリシアの最期〟から引き戻された。


「・・・・こんな気持だったのね、アリシア」


 目を覚ました私の胸に、アリシアの無念がわだかまっていた。

 私は星空を見上げ、静かに目を瞑った。


   ◆◇◆◇◆


 アリシアの記憶の夢を見て目が冴えてしまった私は、鍋で狼の皮を煮ながらゲームを思い出していた。


「焔爪と凍牙の棲家の構造は・・・・」


 その時、恐らく北西と思われる方角から、「ドォオオオオオオン」という雄叫びが聞こえた。

 ・・・とうとう気づいたか。

 メグが、飛び起きた。


「な、なにあの音!?」

「焔爪と凍牙の王が、仲間を殺した奴がいることに気付いたんですわ」

「え・・・!? あれ、オオカミの遠吠えなの!? あんなのもう、爆発じゃん!!」

「メグミ、明日、焔爪と凍牙の王を倒しに行きますわよ」

「ふぁ!? ――え、逃げ回って、にっちもさっちもいかなくなったら戦うんじゃないの!?」

「いえ、こちらから行きますわ――相手の棲家をこちらは把握してるんですの。ならそのアドバンテージを活かしますわ」




 次の日、満月の夜、メグと北西へ向かう。

 リームは拠点でお留守番だ。


 竹簡の地図に書き込みながら――ペンは赤いコンドルの羽から作った羽ペン、インクは炭と膠を混ぜた墨だ。


 さらに、まんまの炭を背負ったメグが首を傾げた。


「アリシアさん、炭をこんなにどうするの?」


 メグの背中と彼女が引くソリには大量のよく水気を飛ばした炭。

 さらに私の背中にも炭。


「これが、今回の戦いのキモですわ」

「こんなので戦うの?」

「ええ」


 ――やがてたどり着いたのは、白い崖の上。


「この白い崖の下にある洞窟が、焔爪と凍牙の王の棲家?」

「ですわ」


 私は指をさす。


「あれが入口ですの」

「じゃあ突入する?」

「なんでやねん」

「え? いやアリシアさんこそ、なんでやねん――焔爪と凍牙の王と戦うんでしょ?」

「いきなり正面から戦うなんてしませんわ。まずは毒ガス攻撃します」

「ど、毒!?」

「毒にも、色々ありますけれど」

「なんだっけ、前に言ってた塩水のやつ?」

「塩水がありませんわ」

「だよね。ウチ等毎日の塩も事欠く有様だもんね――じゃあ・・・なんだっけ温泉地によく湧いてる」

「硫化水素? 硫黄がないですわ」

「じゃあ、毒ガスなんて、作れないじゃん!」


 私は、メグの背負っている物を叩く。


「ここにあるじゃないですの。恐ろしい毒ガスを発生させる物体が」

「え・・・・炭!?」

「そう、毒ガス様々あれど、生物の命を奪うものは案外作りづらい。しかし一酸化炭素ほど簡単に発生して、生物の命を奪う毒ガスは、そうそうそうありませんわ」

「ただの焚き火で、毒ガス作るつもりなの? ・・・・ア、アリシアさん、怖すぎる」


 というわけで私は、まず天然の有刺鉄線を洞窟の入口からちょい奥まった場所に敷く。

 次に、タイマーとして小さな鉄球を作って、その後、分厚い鉄を生成して、洞窟の入口を塞いだ。

 今回はロケットストーブの逆だ、酸素供給を減らして不完全燃焼を起こしてもらう。

 入口を塞ぐ鉄に作っておいた窓から炭を投入。

 火を付けて暫く待つ。

 異変に気付いたダイアハウンドがやって来たりしたけど、火を恐れて引き返していった。


「にしても、この白い石は・・・・もしかして?」


 私は、この洞窟の地質をしばらく凝視していた。


「どうしたの? アリシアさん」

「メグ、恐らくここは絶対に必要な場所――やはりここは、制圧しないと駄目ですわね」

「え・・・?」


 しばらくして、また別の個体らしきダイアハウンドが、鉄に体当たりとかしたけど、そんなことで動くようなヤワな量の鉄じゃない。

 

 何度か新しい鉄塊を、前の鉄塊の前後に作ったりしていると・・・・来た!!


 焔爪と凍牙の王だ!!


 ・・・・焔爪と凍牙の王――その巨体は、他のダイアハウンドの2倍近い。


「うわ・・・・アリシアさん、なにあれ!? 犬じゃなくて象だよあんなのもう!」

「象・・・・たしかに言いえて妙かもしれませんわね」


 ヤツがこっちに全力で走ってくる。

 が、天然の有刺鉄線を前足で踏んで、わずかに顔を歪めた。

 しかし突進を止められたのも一瞬。

 ヤツの爪から炎が巻き起こり、トゲ植物を焼き尽くす。

 あれが焔爪と呼ばれるの理由。

 だけど、ああして、ちょっとでも酸素を消費してくれてるなら有難い。


 天然の有刺鉄線が灰になると、焔爪と凍牙が鉄に体当たりしてきた!


 私とメグで鉄を押し返したけど、なんてパワー!

 一酸化炭素でデバフが掛かってるはずなのに、なにこのパワー!


 私は更にタングステン塊を生成。

 莫大な質量で、焔爪と凍牙の突進に耐える。

 うっ、鉄と違って、元素番号が大きいタングステンを生み出すと結構体力を奪われる!


「メグ!!」


 私はメグにセシウムの矢じりを渡す。


「うん!」


 メグは私が鉄塊に作っておいた、矢襖から矢を焔爪と凍牙に放った。

 でも、その顔が、「サッ」と青くなる。


「だ、だめ! アイツの目どうなってるの!? 目にすら矢が通らない!!」

「なら、こっちを使ってくださいまし!!」


 私はナトリウムの矢じりを渡した。

 セシウムよりは少し硬い。


「う、うん!!」


 メグが再び矢を放つ。

 燃料投入口から見ていると、矢をその牙で砕いた。

 矢が凍っている。

 そして、「なんだこんな物」と飲み込んだ。

 これは・・・・!


「メグ、でかしましたわ!!」

「の・・・飲んじゃった」


 しばらく矢の氷が溶けなかったのだろう。

 焔爪と凍牙が鉄塊に何度か体当たりをした後、


 ドンッ


 奴の腹から、太鼓を叩いたみたいな音がした。

 一瞬、焔爪と凍牙が白目を剥いてふらついたけど、すぐに立ち直った。


「嘘でしょ・・・ナトリウムの爆発を内臓に食らって死なないとか・・・」

「ど・・・どうしようアリシアさん・・・!」


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