お食事ですわ
◆◇◆◇◆
メグがエンタメが欲しいというので、2人でラジオ番組ごっこしていた。
「メメメ、メグちゃん、メグちゃん、キューアンド・エー・コーナー!」
「では、最初の質問ですわ」
「はい!」
リームも、私の肩で相槌を「ピヨッ!」。
「ニューヨークにお住まいのルーズベルトさん。質問『ズボンがズレてくるんですが、なぜでしょう?』」
「ルーズなベルトをやめましょう!」
ふと、2人で現実を思い出す。
「なにかしら、これは?」
「なんだろね・・・?」
「とりあえず――せめて弓を作りましょう。メグも身を守れますし」
「そだね、まずは弓だね――銃かぁ」
「ん? 銃がそんなに気になりますの?」
「ウチ、異世界から来たって言ったじゃん」
「はい」
「そこにも銃があってね、競技があったの」
「そうなんですのね」
あるのは知ってるけど、クレー射撃しか知らないや。
「ウチがね、唯一役に立たなかったのが、その銃の競技――他のスポーツはどれも上手くできたんだけど・・・・唯一銃だけはウチの才能じゃ敵わなかった。あれ、筋肉や反射神経より、集中力なんだよ」
あー・・・何となくわかる。そんな感じする。
「助っ人で大会に出たら、ある娘に、フルボッコにされてね。それは気持ちいいほどにフルボッコ。・・・・だから、射撃部に入った」
え!? この子、スポーツ特待生でしょ!? 転部しちゃったら色々権利無くなるし、下手したら退学・・・・。
「まあ、掛け持ちって感じでね」
「な、なるほど」
「アリシアさん、人ってね、他人に憧れるんだ。自分に憧れるやつは頭おかしいでしょ?」
「そ、それはそうですね」
「だから憧れるってことは、自分に無いものなんだよ・・・・ウチは射撃に憧れた。あれはね、身体能力とか関係ない。ひたすら集中力の戦い――自分との戦いなんだ。スポーツ? って思うくらい、身体能力ではなく、集中力の戦い――心を乱さないことの戦い。多分おそらく、ウチに最も向いてないスポーツ。だから極めたくなった」
「どんなスポーツも簡単にこなせてしまうから、こなせないスポーツに憧れる――全く、これだから天才というのは」
「綺麗だったぁ、あの娘。――本当に、銃を構えると、静かな湖面みたいで――憧れた。だからウチは追いかけた。――一度も勝てなかったけどね」
「では、大丈夫ですわ」
「えっ?」
「勝てなかったから、大丈夫ですわ」
「なに言ってんの!? ウチ、一度も勝てなかったんだよ!?」
「天才は勝つ以外、知らないんですのよ。――天才っていうのは、鼻歌を歌っている間に、山の頂に立っている者ですわ。ですが、歯を食いしばって山を登った人間は、自分の通ったルートを忘れない。だから天才は突然スランプが来たら、役立たずになることがある。けれど努力家は常にその実力を発揮できる」
「そ、それは・・・」
「期待していますわよ? 貴女の憧れ――努力」
「それは、期待してて! 一杯頑張ったから」
「ええ!」
私はすこし凶暴な笑みで返した。おっと、
私は小屋の外の太陽を確認する。
「っと、そろそろ昼時ですわね。食事の時間にしましょう」
「うんうん! おなかぺこぺこー!」
「まずは水分補給ですわ」
「うんうん! 喉からからー!」
オオカミ肉、バナナを皮ごと、あとは水を入れた器を、火にくべる。
で、お湯が湧いたら、先に二人で白湯を飲む。海外のサバイバル動画に出てくるようなガチ・サバイバーでも、案外簡単に脱水症状になるし、なったら終わる。
「お肉もバナナも、そろそろ良いですわね」
昨日はお肉を食べなかったから、オオカミ肉は2人で初体験。
火から肉を上げて、皮をナイフで割く。
おお、いい感じに油がジューシー。
メグも、興味津々。
「オオカミなんて初めて食べるよー――」
「わたくしもですけれど、熊に近い種ですので、そこまで不味くないはずですわ」
私とメグは、バナナの葉っぱのお皿に置いた前足の肉に、手を合わせる。
私達を襲ったモンスターとはいえ、命に感謝を込めて、
「頂きます」
「いっただっきまーす!」
「ピヨッ!」
リームにはバナナをあげた。
私とメグは骨を持って「がぶり」。すると、じゅわっと溢れ出た肉汁が口いっぱいに広がる。
メグが唸った。
「確かに獣臭はあるけど、思ったほど臭くないね」
「ですわね。肉食獣なので、もっとアンモニア臭いのかと思いましたわ」
味は牛肉に近い。
油と赤身が程よくジューシー。
私は、「がぶり」じゅわ~。「ぞぶり」じゅわ~。を繰り返す。
「これなら、もう一本いけますわね」
「うんうん!」
私は外に出て斧を生成、木に吊るして血抜きをしていた狼の前足を追加でもう一本、叩き折――れない。
「メグ、頼みますわ」
「任せとけー! こういうのは、関節を狙ってやるんだよ!」
「そもそも、関節がどこかわからないですわ」
「他人に関節技を極めてたら、覚えられるって!」
――他人に関節技を極める機会ががなかったので・・・。
その後、メグと一緒にお腹いっぱいになって横になる。
「アリシアさん、寝ないの?」
「ちょっと考え事をしてますの」
「考え事?」
「磁石を作る方法ですわ」
私の上でリームもなにか難しい顔をしている。
「え・・・? 作れるの?」
「作るしか無いですわ」
「あれじゃないの? ――雷をビカーっと落として」
「雷はどこにあるんですの」
いや、ジャングルだからよく雨が降って雷も鳴ってるけど。
こんな巨木だらけの世界で、どこに落ちるかなんて予想もつかない。
それに近くにあるあの天を突く台地に、雷はほぼ持っていかれそう。
メグも一緒に考えてくれている。腕を組んで「うーん、雷、雷」と呻いている。なるほど知ってる知識で役に立とうとしてくれてるのか。
私は地面に様々な考えを書いていく。
ここでふとメグが顔を挙げた。
「そうだ! 凧!!」
「うん? 蛸?」
「アリシアさん! メグ思いついたよ!!」
「おおっ、どんな?」
メグだって、伊達に現代人じゃない。知識チートくらいできるだろう。
「凧に磁石の元となる鉄(?)を貼り付けて揚げてね、雲に近づけるの。そしたら凧に雷が落ちて磁石ができるんじゃないかな!」
「メグにしてはいい線行ってますね。確かにそれで磁石ができますわ。そして似た実験をした科学者は何人かいます」
「おおっ」
「そして何人か死んでます」
「ひゃい!?」
「というわけで却下ですわ」
そして、
「・・・・うーん、雷、雷」
メグは雷から離れない。私は寝っ転がる。
「寝よ」
「えーーー!?」
メグがどでかい声で、驚いた。
これでいいんだよ。




