アカシック・ダイブですわ
「いやいや、今まで必死に考えてたじゃん!! なんで急に!?」
「ドリーム・インキュベーションですわ」
「どり・・・なに? インキュって――なんか、悪夢見そう。あと白い害獣が詐欺みたいな契約迫ってきそう」
ほんと有名どころは押さえてるんだなぁ。
「わたくしも害獣はごめんですわね。――天才たちは口を揃えていうんですの」
「なにを・・・?」
「発明王トーマス・エジソン。彼の恐れた天才ニコラ・テスラ。インドの魔術師と言われた数学者シュリニヴァーサ・ラマヌジャン。あと、西尾 維新先生」
「うん?」
「皆口を揃えて言うんですのよ。寝たらアイデアが出る――または整理できる」
「そ、そうなの?」
「アイデアとは考えて考えて考え抜いて、あとは忘れる。すると、――これは、わたくし個人の感想ですけれど、頭が白くなるほど考えて、ふとした時、青に変わる。その時に、閃く」
「そ、そうなんだ?」
「ですわ。そしてこれは、繰り返せば繰り返すほど、頻度が高くなっていく――わたくしはこれに気づき、幼少期から何度も何度も繰り返してきましたわ。最初は月に1つしか出なかったアイデアが週に1つ、日に1つになり、やがては日になんども閃くようになる」
「ほ、ほんとに?」
「なります。そうしてさらに気づいたのです。考えて考えて、寝ると1番アイデアを思いつきやすい――答えが夢に出てきたり、起きた瞬間思いついたり――これがドリーム・インキュベーションですわ」
「へええ! ――すごいけど、絶妙にダサい名前だね」
「それなんですのよね。・・・・よし、これからはアカシック・ダイブと呼びますわ」
「今度はカッコ良すぎて尖ったね」
ちゅ、中二病で悪かったな。
カッコ良ければいいの!
「というわけで、寝ます。お休みなさい」
「う、うん。お休みなさいアリシアさん。お休みのちゅーはいる?」
「余計な雑念を与えないでくださいまし!」
「ひえっ」
気がそれるし、ドキドキして寝れなくなるじゃん!
かくして私は次の日の朝、飛び起きた。
「そうですわ! 自己励起!! そして、静電気とコンデンサー!!」
起床一発目の私の叫びに、メグとリームが飛び上がった。
「どどど、どうしたの!?」
「ピヨー!」
リームが、身を起こしたメグのお尻に隠れている。
「磁石を作る方法! 思いつきましたわよ!!」
「き、昨日の説明、マジだったんだ?」
というわけで、私とメグは目を皿にして地面を見ながら歩く。
大きな地殻変動をした地域だ、きっとある。
って、――本当にあった!!
私は、くすんだように光る四角い結晶が幾つも集合している石を見つけた。
「磁鉄鉱ですわ!!」
「じてっこう? 磁石なの?」
「磁石になれる&磁力に反応する鉄ですわ!」
「おー!!」
私は頭にリームを乗っけて、周囲を見回す。
リームも何かを探す顔。
「だとすると、スカルン鉱床も近くに有るかも知れませんわね」
「す、すかるんこーしょー? ああ、前にちょっと言ってた?」
メグが、目と口を丸くして納得する。この表情が可愛いんだよなぁ。それを上目遣いでやってくる。
ワザとやってんのかぁ!? お持ち帰りするぞこのヤロウ。
おっと、ヤバイ、堕とされるところだった。この人は危険だってば。
堕ちても、向こうは、こっちを相手にしない人なんだってば。
と、とにかくスカルン鉱床なら、銅も有るかもしれない。
「とりあえず磁石の元を拾えて一安心ですわ。さらにスカルン鉱床が見つかれば、色んな金属が手に入るかもしれませんわ。アレを見つけたら一気に文明の針が進みますわよ」
「おおお! 早く探しに行こう!!」
メグが拳を上げてジャンプをする。かわいいな。この元気っ娘め。
「ま、まだ駄目ですわ。この森で、武器も無しに動きまくるのは良くないですわ」
「あ・・・そ、そだね」
有ってよ? スカルン鉱床。あれがないと、文明のあれやこれが成り立たないはずだから、Loveナレクの世界は成り立たないんだからね。
自己励起――つまり、微量の磁力でも、電気を発生させて、その電気を発生した自身に流す・・・・ただ、これをやるにも銅と絶縁体がいる。
「あっ」
ここでまた、私は穴があることに気づく。
電気を生むには回転だよね? コイルを回転させるにしても、磁石を回転させるにしても・・・・両方に銅線が繋がってるから、銅線がどんどん捻れて行かない?
「まって、これどうすればいいの? ――半回転ごとに逆回転させる? 左右に動かす?」
できないことはないけど・・・・。
「ま、まあ、やり方はあとで考えよ――北と南に鉄芯を向けて、叩けば微量に磁力が宿るんだっけ? あれ? 熱するとどうなるんだっけか」
数日後、私はブツブツ言いながら、大量の磁鉄鉱を拾っておく。
で、次は食料の確保。
川で魚を探した、あと貝類やエビやらカニ。カニは「全てはカニになる」と謂われる程の進化の収斂先、絶対いるはず。
なぜ魚やカニか? 塩分をそろそろ補給しないとまずいから。
「いた! カニじゃないけど、ニジマスっぽい! ・・・――せいっ」
塩が手に入らない今、魚は大事なミネラル源。
ジャングルは、雨が塩分を洗いがなしてしまうから、塩を手に入れるのは本当に難しい。
ならば魚でミネラル補充だ。竹で作った銛で突き刺さ――逃げられた。
「穫れた! 穫れたよ、魚!!」
メグが銛にささったニジマスを掲げた。
メグの肩に乗ってるリームまでなぜか誇らしげに胸を張ってる。
さすがはスポーツ特待まで来る、健康優良児。
引きこもり、延々と動画や、科学の本ばっか読んでた人間とは違う。
メグは学校進学なんか引く手数多だから、受験勉強とか気にしたことないんだろうなぁ。
私なんか受験を気にしすぎて、高校1年の2学期までに3年生までの勉強を終わらせて受験勉強始めてたって言うのに・・・・羨ましい才能である。こっちは夏休みを返上したんだZO!
「や、やりますわね。――むう。これは、わたくしの運動神経じゃ難しいですわ。やはり狩りのためにも、早めに弓くらいは欲しいですわね・・・」
「ウチもアリシアさんに、ちょっとは役に立つところを見せたいんだよ~! にししっ」
相変わらず、夏の青空の入道雲みたいな笑顔。
「もう、色々助かってますわよ」
言いながら、私は水草のある場所へ歩いていく。
メグは「でへへ~。アリシアさんに褒められたぁ」とか言いながら、私の後を付いてくる。
うーん、かわいい。
よし、体を使った方法じゃ私に釣りは無理だ。頭を使おう。
私はさっき取りそこねた魚が逃げた方向に平たいナトリウム板を生成。
出現したナトリウム板は落下。
水と反応、大爆発。
爆音が辺りに鳴り響いた。
「ぎゃーーース!!」
「ピヨーーー!?」
メグが耳を押さえてうずくまりびっくり仰天。
リームも、耳のあたりを翼で押さえてた。




