表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ごり押せッ!袁紹ちゃん!  作者: 姫笠


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/20

第4話 袁紹ちゃん、虎牢関でごり押す。④

翌日。

虎牢関――城門前。

朝靄がわずかに残る中、両軍はすでに布陣を終えていた。

董卓軍は整然と並び、一糸乱れぬ隊列を保っている。

その最前。


 コツッ……コツ……


重い蹄の音が、静寂を打ち破った。

兵たちの視線が、一斉にそこへ向く。

やがて現れたのは――巨大な赤馬。

燃えるようなたてがみを揺らしながら、ゆっくりと前へ進む。

その上にまたがるのは――呂布。

漆黒の鎧。

手には、巨大な方天戟。

その姿は、まさに戦場の中心そのものだった。


呂布「連合には、雑魚しかおらん」

冷酷な断言。

そのまま、方天戟をゆっくりと持ち上げ――連合軍へと突きつける。

呂布「弱者どもを、叩き潰せッ!!」


 オオオオオオオ――ッ!!


董卓軍の鬨の声が、一斉に爆発する。

大地が震える。

空気が揺れる。


それに応じるように――連合軍もまた、構えを取る。

その先頭。

紹香が、馬をゆっくりと前へ進めた。

目の前には――無数の兵。

自分を見上げる、期待と信頼の目。

そのすべてが、自分に託されている。

紹香(私は……)

胸の奥で、鼓動が強くなる。

紹香(この世界で、生きてる)

はっきりとした実感。

ここは夢ではない。

逃げ場でもない。


紹香は、ふと空を見上げた。

澄んだ空。

戦場の喧騒とは対照的な、静かな青。

紹香(私の存在を、もっと世界に示したい――)

そのまま、視線を前へ戻す。

腰の剣に手をかける。


 シャキンッ


抜き放つ。

刃が、光を反射した。

紹香はそれをゆっくりと、迫りくる董卓軍へと向けた。


紹香「迎え撃てッ! 袁紹軍ッ!!」


 オオオオオオオオ――ッ!!


応えるように、鬨の声が爆発する。

一万五千の兵が、一斉に前進を開始した。

地面が揺れる。

土煙が舞い上がる。


両軍の距離が、みるみるうちに縮まっていく。

誰も止まらない。

誰も逸れない。

ただ――前へ。

そして。


 ドゴオオオオオオオンッ!!


地響きのような衝突。

二つの軍勢が、真正面から激突した。

怒号が飛び交う。

悲鳴が重なる。

鉄と鉄がぶつかり合い、その音が空気を震わせる。



最前線。


 ガキンッ!!

 ギィンッ!!


刃と刃がぶつかり、火花が散る。

鎧と鎧が激しくぶつかり、鈍い音が響く。

押し合い、せめぎ合う。

互いに、一歩も引かない。

力と力のぶつかり合い。

だが――その均衡は一瞬で、崩れた。


 ヒヒイイイイ――ンッ!!


けたたましい嘶き。

赤馬が、前へと突っ込む。

巨大な蹄が、連合兵をまとめて弾き飛ばす。


 ドオンッ!! ゴキッ!!


人が、宙を舞う。

地面へと叩きつけられる。

そして――


呂布「ハアッ!!」


方天戟が、振るわれた。


 ドゴオオオッ!!


凄まじい一撃。

衝撃だけで、周囲の兵が吹き飛ぶ。

悲鳴すら、上がらない。


連合兵「りょ……呂布だ……ッ」


震えた声。


連合兵「ひ……ひるむなッ……!」


叫びはする。

だが――足が動かない。

目の前にいるのは、人ではない。


“化け物”。


本能が、そう告げている。

誰もが、理解してしまった。

勝てない。

その瞬間。

一人が、後ずさる。

また一人。

やがて――


連合兵「う……うわあッ!!」

連合兵「ひいいッ!!」


恐怖が、爆発した。

せきを切ったように、兵たちが逃げ出す。

隊列が崩れる。

押し合い、ぶつかり合いながら、後退していく。

呂布を中心に――連合軍の一角が、音を立てて崩れ始めた。



袁紹軍――本陣。

戦場の喧騒が遠くから響き、空気が震えている。

兵たちの叫び、金属音、馬の嘶き――そのすべてが、ここにも重くのしかかっていた。


田豊は、険しい表情のまま戦場を見据えていた。

田豊「紹香様……」

わずかに息を呑む。

田豊「やはり呂布を討たない限り、我らの敗北は必至――」

その言葉は、重い現実だった。

いくら兵がいようと。

いくら勢いがあろうと。

あの一人が、すべてを覆してしまう。

紹香「うん、わかってる」

その目は、まっすぐ前を見据えている。

そして――ゆっくりと、後ろへ視線を移した。

そこに控えるのは――文醜。

紹香「文醜」

その名を呼ぶ。

文醜「よっしゃッ!!」

即座に、力強い返事。

文醜「先の戦いじゃ、油断しただけだ!」

声に、悔しさがにじむ。

文醜「今度こそ俺が――」

槍をぐっと握りしめる。

文醜「敵将を、ぶった斬ってやるよッ!!」

紹香は、その姿を見つめ――静かに言った。

紹香「あなたが頼りなの」

一瞬の間。

そして。

紹香「――お願い」

まっすぐな言葉。

文醜は、一瞬だけ目を見開き――やがて、にやりと笑った。

文醜「ヘヘッ……」

肩を鳴らす。

文醜「任せろッ!!」

そのまま、勢いよく馬にまたがる。


 ヒヒンッ!


馬がいななき、地を蹴る。

文醜は手綱を引き、一直線に前線へと駆け出した。


 ドドドドド……!!


土煙を巻き上げながら、突進する。

目指すはただ一つ。

――呂布。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ