ヘッセン王子登場
鏡の間ではいつものように女王と宰相、ドラキュラ夫妻が密談をしていた。少し落ち着いた後、外務大臣と陸軍の将軍が呼ばれた。
バード王国との折衝と、万が一軍事衝突になった場合にラプンツェルとその子どもたちがどのようなカードで使えるのかを多方面から協議するためだ。
ドラキュラ伯爵は、なぜ自分がこの場所にいるのか理解不能だが、ここまで首を突っ込んでしまったのならば仕方ないだろうと諦めた。
隣でカーミラはわくわくした顔をして話を聞いているし。
*
《あっ。》
皆が一斉に鏡の方へ向いた。
《ヘッセン王子が我が国の領土に入りました。しかも一人です。》
「宰相、来訪の知らせは来ておったか?」
「いいえ、陛下。なにも来ておりません。来ているとすれば白雪姫さまへの手紙ですが、姫が開封もせずに破り捨てております。」
「正式な文書がないとすれば不法入国ですね。」
「兵を出しますか。」
宰相と将軍の言葉にしばし女王は思案した。
「腐っても一国の王子。おおごとにはしたくはないが、我が国に不利益をもたらす恐れがある不穏分子であることは間違いない。捕まえろ。」
「はっ。」
将軍が嬉々として部下に命令し、部下は扉の向こうを護衛している騎士の方へ向かった。
*
そしてあっという間に縄でぐるぐる巻きにされた王子が城門横の小部屋に連れてこられた。
「なんと無礼な! 私はバード王国のヘッセン王子だぞ。縄を解け!」
王子が喚く中、門を警備する騎士団の団長が冷静に言った。
「正式な文書がない限り、本当にバード王国のヘッセン王子だという確証がありませんのでね。」
「本物だ! この紋章入りの指輪が証拠だ!」
「私にはわかりかねます。もうしばらくすると宰相が来るので、それまでお待ちください。」
そう言って小部屋から騎士団長が出ようとすると王子(自称)が叫んだ。
「待てっ! 一国の王子に対するこの侮辱! 戦になるぞ!」
騎士団長は口の端を上げて上から見下ろすように微笑み、黙って部屋から出て行った。
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その後、確認が取れたとしてヘッセン王子はぐるぐる巻きのまま女王の前に引っ立てられた。




