シンデレラ再び
「また来たのシンデレラ。っていうか、また不法入国したんじゃないでしょうね?」
「なによ、来ちゃいけないの?」
「結婚式の準備で忙しいんじゃないの?」
シンデレラは慣れた様子で白雪姫の私室に入ると、椅子に座った。
侍女たちがてきぱきとお茶の準備をする。
「結婚式は来年。その前にお妃教育だって。聞いてないわよ。」
「でもまあ、一国の王子の結婚式なんだから準備はかかるわよ。でもお妃教育がイヤになるのはわかるわ。」
シンデレラはもともと下級貴族の男爵家の出で、おまけに継母たちに虐げられて(?)いたこともあり、結婚相手探しの時以外、王宮での夜会にも出たことはない。城でマナーや国の歴史などを叩き込まれているのだろう。
(うっかり不法入国してかぼちゃを盗みに来るような子だし。)
そこで、白雪姫の頭にふと疑問が湧いた。
「一国の王子となれば政略結婚が普通でしょ。例えば他国との繋がりを強くするために外国の王女とか。あとは国内の政治の安定のために重臣の娘とか。なんでパーティーを開いて国中から女の子を集めたの?」
「そりゃ、王子がおばかさんだからよ。」
シンデレラがティーカップに口をつける。
「うん?」
「顔はいいけどちょっとねー、って人だからよ。」
「え、でも。」
シンデレラは、小さな焼き菓子をつまんで口に入れた。
「おいしいわね、これ。」
そして、ふうっとため息をついた。
「私だって知らなかったのよ、なぜうちみたいな男爵家まで招待状が送られてきたのか。王子ったら隣国の姫、宰相や大臣、名だたる高位貴族の娘に結婚を断られたの。それで、あの夜会は花嫁候補を探すために、国中の年頃の娘がいる貴族に招待状をばら撒いたのよ。」
「……なぜ断られたの?」
「おばかさんだからよ。」
「シンデレラはそれでいいの?」
「私が実権を握ればいいんでしょ?」
そう聞くと、やたら権力欲のあるヘッセン王子よりシンデレラの結婚相手の方がいいような気がしてくる。
「だからよかったわよ。男爵家の娘が王子妃候補になってもみんな優しかったもの。逆に励まされたぐらいよ。」
「……ねえシンデレラ。おばかさんとクズとどっちがいいと思う?」
「難しいわね、それ。でも強いて選ぶならおばかさんかな。」
シンデレラはマカロンを指でつまんだ。
「うん……。じゃあ結婚式は来年なのね。必ず参加するわね。」
「楽しみにしているわ。」




