白雪姫再び2
白雪姫は腰に手を当て、ふんぞりかえってラプンツェルを見た。
「あなたの子どもたちねえ、私がスモモを取ってあげたのにお礼も言わないんだけど? ちゃんとしつけしなさいよ。」
「あなたこそ初対面なのになんでそんなに偉そうなんですか?」
「偉いのよ。この国の王女なんだから。」
「……え。」
ラプンツェルの目が大きく開かれた。
「もしかして……、白雪姫さま?」
自らスモモを取って食べるような人が白雪姫?
「そうよ。」
白雪姫はさらにふんぞり返ったが、その瞬間ラプンツェルは「すみません!」と叫んで子どもたちの手を引いて逃げ出した。
「あっ、ちょっと待ちなさいよ!」
やばいやばいやばい。
白雪姫の気性の荒さは有名だ。機嫌を損ねたら、もしこの子たちがヘッセン王子の子どもだと知れたらこの城から追い出されるかもしれない。
お金持ちの男の人を見つけるまでは踏みとどまらなければならない。
なのに白雪姫が王女とは思えない速さで追いかけてくる。
「ひっ。」
*
《どうされますか?》
「ラプンツェルが無事に逃げ切れるよう魔法をかけよう。」
女王がぱちんと指を鳴らした。
*
「きいっ、なんで追いつかないのよ! てかどこに行ったのよっ!」
白雪姫がぜいぜいと膝に手をついて悪態をつく中、ラプンツェルと子どもたちはなんとか部屋に戻ることができた。
「こ、怖かった……。」
*
「白雪姫とラプンツェルが顔を合わせないよう注意してくれ。」
《んー、私ができるのは監視だけですよ?》
「……城内の騎士に白雪姫が変に動き回らぬよう通達しておこう。」
鏡の表面が揺れて黒くなった。
*
ラプンツェルの仕事場所に配慮するなどして、白雪姫と会わないように注意していたが、白雪姫と子どもは神出鬼没なものである。
城の裏手、スモモやリンゴのなる果樹園や畑の向こうには牧場があり、馬車を曳く馬をはじめとして牛や羊、鶏などを飼育している。
いわゆるローリングストック的な、有事の際に城内である程度の自給自足ができるように飼われているのだ。
ラプンツェルの子どもたちは、そこで動物を見るのが好きで母親が仕事をしている間そこで過ごしていた。
もちろん、勉強から逃げ出した白雪姫もよく訪れる場所である。
「これは姫さま。」
人の良さそうな老人が帽子を取り頭を下げた。元は腕のいい厩務員だったが、今は引退してゆったりと動物たちの世話をしている。
「あら、ラプンツェルの子どもたちじゃない。」
しゃがんで老人と一緒にウサギに餌をやっていた双子が顔を上げた。
(んー、やっぱり既視感があるわ。)
「スモモのお姫さま……。」
「あら、その呼び名は可愛いわね。気に入ったわ。家来にしてあげるから来なさい。そろそろブドウが食べ頃よ。」
子どもに「お姫さま」と呼ばれたことに気をよくした白雪姫は、子ども二人を悪の道に勧誘した。




