シンデレラ登場2
ちょうどそこへドラキュラ伯爵夫妻の到着を知らせる先触れが来た。
「通せ。」
女王は玉座に座り、宰相と重臣たちが横に控える。
「帰って早々悪いな。伯爵、カーミラ。」
「無事に帰国したことをご報告に参りました。女王陛下にはご健勝……ではないようですね。」
「お顔の色が優れませんわ、陛下。お疲れでは?」
女王が眉間に皺を寄せ、指をパチッと鳴らすと、鏡が白雪姫とシンデレラの様子を映した。
「あれはゼゾッラ王国の王子の妃に選ばれたシンデレラ嬢ではないですか? なぜここに?」
「白雪姫と友人だそうだ。」
伯爵夫妻は揃って「ああ……」と声を漏らした。
鏡の中から会話が聞こえる。
*
「ゼゾッラの王子、ぼんやりだからころっと騙されてくれて、私の継母と二人の義姉に罰を与えてくれたわ。」
「ぼんやりした人なんて、つまんないんじゃないのぉ? シンデレラ飽きるでしょ。」
「ぼんやりだから玉の輿に乗れたのよ。王妃になったらこっちのもんよ。」
*
二人の会話に戦慄する。
女王がまた指を鳴らすと鏡には波紋が浮き上がった。
「鏡よ、二人の会話を後で報告してくれ。」
《かしこまりました。》
*
女王と伯爵夫妻、重臣たちが頭を抱える中、庭ではまだ二人の姫の会話は続いていた。
「そういえばさ、シンデレラ。人魚姫の話知ってる?」
「あっ、知ってる。王子が人魚姫以外の女と結婚して、人魚姫は海の泡になったんでしょ? ありえなわい!」
ぷんぷん怒りながらカップを傾けるシンデレラに、白雪姫はずいっと体を寄せた。
「だからさ、仇を取りに行かない? 王子を誘惑して、結婚した女との仲を裂いたら面白いと思うのっ。」
白雪姫が目をキラキラさせながらうっとりする。
話している内容と表情が合っていない、と鏡は思う。側から見たら恋物語を夢見がちに語っているように見えるだろう。……間違ってはいないが。
「んー、でも私、玉の輿に乗ったばかりだからなあ。まだ結婚式も挙げてないし……不祥事はちょっとね。」
シンデレラが口を尖らせて片肘をついて顎を乗せ、もう一方の手に持った焼き菓子ををくりくりと回している。
「じゃあさ、私たち二人からってわからないように王子に手紙を書かない? そうね……、赤ずきんとかよくない?」
「ああ、オオカミを誘惑した挙句、だましてお腹に石詰めたサイコパスね。」
「そうそう。あの子、オオカミに飽きて、狩人を誘惑して石を詰めさせたらしいわよ。でも今付き合ってるのは狩人じゃないでしょ。あの子肉食で恋多き女って有名だから、王子が近づいたら絶対狙うわよ。ちょうど赤ずきんが住んでいるのは、あの国との国境地帯の森だし。」
「きゃっはっはっ、黒雪姫〜、腹黒〜。」
そして二人は侍女に紙とペンを持ってこさせて手紙の下書きを書き始めた。
「王子には赤ずきんが悪い奴に狙われているから助けを求めてるってしたらどうかしら?」
「それだと騎士団を派遣するだけになるかもしれないわ。同じ場所に王子と赤ずきんを誘導して鉢合わせみたいにしないと。運命の恋に落ちるような……。」
「ううーん、難しい! でも楽しい!」
とても楽しそうに。しかし、とても悪い顔でゲスい文章を書き続けている。
鏡は《アレを出す前に取り上げるように報告しないと……。》と留めておいた。




