ラプンツェル登場6
ラプンツェルは不満そうにじっとりと伯爵夫妻を見た。
「別に王子のことはいいんです。捨てられて未だ迎えにこないのですから、あちらは既にあたしのことは記憶にないでしょう。このペンダントのことも。あたしは安心して暮らしたいだけなんです。」
気持ちはわかるが、だからと言ってドラキュラ伯爵の愛人にするわけにはいかない。横に立っている妻が怖い。
「では今夜君のこれからのことを考えてみるよ。ただし、妻の意向を優先させてもらう。」
「あたしが伯爵さまに惹かれているのは本当ですよ? ヘッセン王子よりずっとお綺麗だし、お優しいし。」
にっこり笑って言うラプンツェルにカーミラは怒りを通り越して呆れたが、夫がずっと肩を優しく抱き寄せて『妻を優先する』と言ってくれたことは素直に嬉しい。
伯爵は側近に命じてラプンツェル親子の部屋を用意させ、自分たちも部屋に戻った。ぽすりと座った長椅子の前のテーブルには、ささっと赤ワインとホットチョコレートが用意された。
できる侍女、アンナである。
「とんでもないな……。」
「女王陛下に報告だけはしないといけないんじゃない?」
「ここはもう我が国の領土内だ。鏡から知らされているだろう。しかし連れ帰ってもいいものかどうか。」
「私はイヤだけれど。」
ぷんぷん怒るカーミラを見て伯爵は嬉しそうに微笑んで、美しい銀色の髪を撫でた。
「ヤキモチを焼く君は一段と可愛いね。」
あれから夫妻は落ち着いて話し合い、ラプンツェルをカラバ侯爵家にメイドとして紹介することにした。
これは、カーミラの意向を汲み、ラプンツェルの生んだ子どもたちが今後懸念の種とならないように囲い込むためでもある。
カラバ侯爵も「手伝う」と言ったのだし、断れないだろう。
そう決まって夫妻はやっと眠りにつくことができた。
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王都に着くとすぐに、難色を示すカラバ侯爵(の猫)にラプンツェルと子どもたちを押し付けた。猫がぎゃあぎゃあ言っていたが、知ったことではない。
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その翌日、王城に向かう頃、城の庭では賑やかなお茶会が開かれていた。




