ラプンツェル登場5
「一応、持っています。」
ラプンツェルは持っていた袋から一つのペンダントを取り出し、伯爵の手に乗せた。
「これはバード王家の紋章だ。見事な細工で、純金だな。」
「私がいた塔に通って来ていた時に贈られた物です。」
ラプンツェルは伯爵から再びペンダントを受け取って袋に収め、かばんに入れてにっこり笑った。
「でももうこんなものはもうどうだっていいんです。伯爵さまが庇護してくださいますから。」
「決定事項みたいにいわないでくれ。」
「やっぱり置いていきましょう。」
「奥さまって冷たい方ですわね、伯爵さま?」
ラプンツェルが媚びるような目でドラキュラ伯爵を見る。その目に伯爵は少し怯んだ。
「あたしのような者だけではなく、こんないたいけな子供までも見捨てようとするなんて。ね?」
ラプンツェルが二人の子供の背中をぽんぽんと叩くと子供たちはわざとらしく泣きマネをする。……よく躾けられている。
だがここは宿屋の前だ。カーミラの目はますます吊り上がるし、どうにも耳目を集めすぎていたたまれない。
一度血を吸ったのだから従順なはずだと、伯爵はラプンツェルの説得を試み始めた。
「でもね、ラプンツェル。私は君たちを連れて帰るわけにはいかないんだ。……あちらも色々あってね。いずれ子どもたちのことはヘッセン王子に知らせよう。だからここで待っていてくれないか。」
城には白雪姫がいる。ヘッセン王子の正統な婚約者であり、未来の王妃であり、癇癪持ちだ。
王子が自分と出会ったのと同じ頃に二股をかけ、しかも子どもをもうけていたと知ったらどんな修羅場になるか。
ただでさえ茨姫のことできりきりしているのに。
王妃となる白雪姫は婚姻まで純潔を守っているはずだから王子の火遊びと言えばそれまでであるが、さらに荒れるだろう。
もしかすると女王はこれ幸いに婚約破棄に持って行くかもしれない。
ハーメルンの笛吹き男のネズミを一匹、ラプンツェルに付けて離れたところで監視する方がいい。




