ラプンツェル登場3
「あの、ねえ。白雪姫って知ってる?』
「えと、ヴィルドゥゲン王国のお姫様ですよね? めちゃくちゃわがままな。」
この国にまであのわがままさが知られているのか。
「白雪姫がどうかされたんですか?」
白雪姫とヘッセン王子が婚約していることを知らないらしい。
もう何年も前のことだし、塔に閉じ込められていたのなら細かいことは知らないのかもしれない。
「……いいえ、忘れて。ヘッセン王子から慰謝料を貰えて新しい恋人ができることを祈っているわ。もう下がっていいわよ。」
カーミラがそう言うと、ラプンツェルが眉間に皺を寄せてむうっとした顔をした。
「あたしはドラキュラ伯爵さまについていきます。貴族というもの愛人の一人や二人、当たり前でしょう?」
「なんですって!?」
「ちょっと、二人とも……。」
「あなた、愛人の一人や二人って、まさか一人ぐらいいるとか!?」
「いるわけないだろう? なんでそんな話になるんだ?」
伯爵は扉の縁を掴んで離さないラプンツェルをなんとか部屋から追い出し、カーミラを抱きしめ頭を撫で、甘い言葉の雨を降らせてなんとか機嫌を直してもらった。
「明日はもう一緒に帰るんだよ。帰って女王陛下に報告したら休暇を貰って二人きりで別荘に行こうね。」
「本当ね? 約束よ。」
「そうだ、帰りの馬車も二人だけにしてもらおう。」
メイドと側近は『こっちもその方がいいわ』と冷めた目をして主人二人を眺めていた。
*
ヘッセン王子と茨姫のことについてこれ以上なにも情報を得ることはないと判断し、その後のことは本国に帰ってから指示を仰ぐことに決めた。
そしてバジーレ国王には茨姫の行方は明かさないこととした。明かしたところで、この国王ではどうすることもできないだろうし、余計なことに手を出してほしくない。
教会だってそのつもりで隠していると思われる。ただ、姫のことは心配しているので、そこらへんは教会に責任持って対応してもらおう。
なので今回の訪問では国同士の友好を強固なものにすることだけにとどめておいた。
もしバード王国がバジーレ王国に近づくことがあれば速やかに報告をするように求め、バジーレ王国との交渉には応じないこと。
ヴィルドゥゲン王国の特産である農産物と絹織物の輸入を増やすこと。
ヴィルドゥゲン王国とバジーレ王国間の人の交流を密にすること。
上記が守られなければ国王以下の権利をヴィルドゥゲン王国女王に委譲すること。
国民だってぼんやりとした国王に治められるよりはマシだろう。
国王以下大臣も半分寝ていたので、ヴィルドゥゲン王国にとって有利な条約を結ぶことができた。
教会が実権を握っているとはいえ、国王が存在している限り、国と国の契約は国王の印が必要なのだ。




