ラプンツェル登場2
「一週間前からこの城で働いていると言っていたが?」
「ヘッセン王子が茨姫を連れ帰ったと聞いたので、また現れるかと思ったんです。」
「なぜヘッセン王子が茨姫を連れ帰ったと知っているの?」
「この城に来る前は教会でお手伝いをして施しを受けていたんです。その時に小耳に挟みました。」
カーミラはやれやれと首を振った。
「よりを戻したいの?」
「いいえ、養育費が貰えればそれだけで。でもドラキュラ伯爵さまの方が素敵だしお金持ちそうだし乗り換えてもいいかなーっと思って。」
ラプンツェルはうふふと笑って伯爵に流し目を送る。
カーミラの目が吊り上がり、さらに伯爵の腕をぎゅっとして夫を睨んだ。
「あなた、二度吸ったの!?」
「そんな暇なかったよ、一度だけだよ。」
君がすぐに出てきたじゃないかと伯爵はぶんぶんと首を振り全力で否定した。
「愛人でもいいですよ? 子どもが二人いますけど。」
「なに言ってるの、愛人でもだめよ。」
ヘッセン王子の女癖も酷いが、どうやらラプンツェルは恋愛体質のようだ。
*
ラプンツェルの話では、ラプンツェルは赤ん坊の頃に魔女に攫われ、塔に閉じ込められて育った。
成長するとそこへせっせと通ってきたヘッセン王子と恋仲になったが、妊娠したのが魔女にバレて追い出された。
ラプンツェルとヘッセン王子は、いつか自由になったら砂漠の街に行きたいね、とよく話していた。本に載った挿絵がとても綺麗だったからだ。
どこまでも続く砂漠を夕陽が照らして金色に輝き、装飾を施したラクダのキャラバンがヤシの木に囲まれたオアシスへと向かう。
ラプンツェルはしばらく塔の下でヘッセン王子を待っていたが、いつまで待っても現れることはなかった。
もしかすると、塔に自分がいないとわかったら約束のオアシスの街に探しに来てくれるかもしれない。
ラプンツェルは子どもの安全も考えて、砂漠の中にあるオアシスの街へ向かった。
*
「それより子どもが二人もいるのに捨てたのか?」
「いえ、双子で生まれる前に捨てられました。たぶん、王子は子どものことは知りません。オアシスでずっと育てていて迎えにきてくれるのを待っていたんですけど。王子がいろんなところで問題を起こしていると噂を聞いて、もうお金が貰えたらいいやって。」
伯爵夫妻はまた顔を見合わせた。
カーミラが恐る恐る聞く。
「お子さんはなん才?」
「今年3才です。」
「……かぶってるな。」
「……かぶっているわ。」
「かぶ……?」
ラプンツェルはこてっと首を傾げた。
白雪姫を連れ帰ったのとラプンツェルと子どもを作った時期がかぶっている。




