ラプンツェル登場
そう言ってハーメルンの笛吹き男はまたひゅっと天井へと消えて行った。
「私たちは何をしに来たんだろうねえ。」
「でも現状を見ることは出来たわ。この城がこんな状況だなんて我が国には伝わってなかったもの。それにあなたとこんな遠くまで一緒に来たことがなかったから楽しいわ。」
「カーミラ……。」
ポジティブな可愛い妻といちゃいちゃしようとしていた時、突然ドアがバンっと開き大きな声が響いて伯爵夫妻はビクッと肩を揺らした。
「公爵さま! ひどいです!」
入り口にリアナが体を震わせて立っていた。
「奥さまがいらっしゃるのにあたしを誘惑するなんてっ。」
リアナはわんわんと大声で泣き叫んでいる。
伯爵夫妻は顔を見合わせた。
「……あなた、血を吸うのを許可するわ。黙らせて。ただし私が寝室に行っている間にね。」
「あ、はい。」
十分後。
なんとかリアナをなだめすかし、伯爵の目を見てぽうっとなっている間に素早く血を吸った。
そして戻ってきた機嫌の悪いカーミラは伯爵にべったりくっついて座り、ご機嫌なリアナは向かいの席に座ってうっとりと伯爵を見ている。
居心地の悪い伯爵は咳払いをしてリアナに質問を始めた。
「ええと、名前はリアナだったよね?」
「本当の名前はラプンツェルです。あなたはドラキュラ伯爵さまだったのですね。どおりでとても素敵です。うふっ。」
カーミラはこめかみをぴくぴくと引き攣らせながら聞いた。
「あなたラプンツェルっていう名前なの? リアナは偽名?」
「はい、王子に捨てられ今はシングルマザーやってるんで、偽名で仕事をしています。」
「ええっ。子どもがいるのに捨てられたの!?」
「ひどい王子もいるもんだね。……ってまさか……?」
「バード王国のヘッセン王子です。」
驚きのあまり固まった伯爵夫妻を前に、伯爵に血を吸われて従順になったラプンツェルはペラペラ喋る。
この世界に王子はヘッセン王子しかいないのか、それともアクティブすぎるのか、気軽に国境を越えて好き放題しすぎだ。
呆れる伯爵夫妻である。




