バジーレ国王夫妻登場2
そして夕食となったが、ホットチョコレート以外は食べられないカーミラは、疲労を理由に早めに休んだ。
伯爵は肉とワインのみに手をつけたが、ワインはビネガーのように酸っぱくなっていたため、結局自国から持ち込んだワインを開ける羽目になった。
肉は焼いて塩で調味した素朴な物だったが、焼きすぎだ。血の滴るようなレアでなければ。
ゆっくり時間をかけて焼いたのだろう。水分も抜けてジャーキーのようになっている。
伯爵は食事もそこそこに眉間に皺を寄せてナプキンで口元を拭いた。
ワインを楽しんでいると、寝室に引っ込んだはずの妻が血相を変えてやってきた。
「あなたっ。」
「どうした?」
「ベッドがっ。」
「埃だらけか?」
「触っただけでシーツがバラバラになるんだけどっ。」
どうやらベッドの上の埃を払っただけで、生地が劣化しているらしい。触れるとバラバラと繊維のチリになる。
「どこで寝たらいいのよっ。」
伯爵はため息をつき、従者に馬車からブランケットなどあるだけの布を持って来させベッドに敷き、カーミラをベッドに寝かせた。そして自分の大切なマントをカーミラにかけた。
「これでいいかな? 奥さん。」と優しくカーミラの頭を撫でる。
愛する夫に優しくされてご満悦なカーミラは機嫌を直して眠りについた。
(で、私はどこで寝ようかな。)
ぐるりと部屋を見渡して、ソファの上をぽんぽんとはたいて埃を払い転がった。
(あー、なんだかもうすでに疲れたなぁ。)
女王に魔法をかけられたことによって、すっかり昼型人間になってしまったドラキュラ伯爵であった。
*
翌日、昼前に起きたカーミラと国王夫妻との謁見に向けて準備をし、呼ばれるのを待った。
「謁見は午後からって言っていたわよね? なんだかもう、全てが緩慢なのよ。」
「うーん、この時間を無駄にしたくはないが、待つしかないねえ。」
「ただ待つのって疲れるわ。」
ようやく呼ばれ、玉座の置かれた広間に案内される。
カーミラは扇で鼻から下を隠している。
そうやっても舞い上がる埃を防ぐことはできないのだが。
伯爵夫妻がバジーレ国王夫妻の前で優雅にお辞儀をし、顔を上げるが、目の前の光景にぎょっとする。
色褪せたタペストリー、すすけた壁。シャンデリアからは蜘蛛の巣が垂れ下がっている。謁見の間でも掃除が行き届いていない。
国王夫妻はその中の玉座に背筋を伸ばすのもだるいといった風情で肘掛けにしなだれかかり、ぼんやりしている。
「……よくおいでいただいた。ドラーレ公爵。」
まったりと話す国王を前に、ドラーレ公爵(仮)が気を取り直し、一歩前に進んで書状を掲げた。




