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幻想世界レスエンティア  作者: 三之月卯兎
二章続き
59/62

獣達の夜

「ナナシはしたくないの?」


突然のお誘い。

いつものことと言えばいつものことではあるが、現在、自分らは監視下にある。


「お誘いは嬉しいですがねメイムさん。現状を勘案しまととたくさんの目がある中でするのは些か問題があるかと・・・」


「・・・興奮するでしょ?」


ベットの上で半裸で身体をくねらせるメイム。

大きく開き肩口から落ちかけている上着。

その白い肌とは対照的な黒の長手袋と長靴下。

上気し赤らめた顔はるややかで、零れ出る吐息は艶めかしい。

自分になる前の自分であったなら理性など放り出して襲っていただろう。

しかし、現在の自分は紳士であることを心掛けている。

欲望のままに襲うなど以ての外だと思うが当人からのお誘いである。

断るのは失礼であろう。 

この街に来てから数日、ナナシはこちらの件に関しては自制していた。

自分の種族的なものが一般的にどのように見られているかは予想通りで、こちらでも変わらないらしい。


「だいぶ放出したと思ったんですが、あれだけ暴れても足りませんでしたか?」


「ちょっと足りなかったみたい。ここ暫くしてなかったから」


「誤解されませんかね?」


「誤解じゃないし、もうそう思われてるでしょ。アタシがアンタと部屋を一緒にしてと言った時点で向こうも察してるだろうし」


「確かに」


今、2人がいる部屋は冒険ギルドにある客室のひとつだ。

当初、ナナシとメイムの部屋は別々に宛がわれた。

しかし、メイムが一つでいいと断ったのだ。


「オークですもんね」


「それを好む淫乱だと思われてるわね、ワタシ」


ククッと可笑しそうに笑うメイム。

なにせオークとエルフの組み合わせだ。

勘ぐらない方がおかしいかもしれない。

ナナシはメイムに歩み寄りその身体を抱きしめる。

華奢な身体である。

暫く抱きしめ合い互いの温もりを確かめる。

ナナシは鼻で息を吸い甘い彼女の匂いに興奮する。

思わず力を籠めそうになるがこれ以上は強く抱きしめるのはまずい。

ナナシの力は強すぎるのだ。

彼女をナナシが思い切り抱きしめてしまうと簡単にへし折れてしまうだろう。

メイムの普段の獲物はその身の丈もある大剣だが、それは重力制御によるものであって筋力によるものではない。


「淫乱な貴方に興奮しますよ」


「こら、人を勝手に淫乱扱いすんな」


メイムはナナシを殴る。

じゃれあいのようなものだ。


「だって、見られてるじゃないですか」


「アンタが我慢できないからアタシがさせてあげるの。そこを間違えないように」


「そういうことにしておきましょうか」


「そういうこと」


抱きしめあいながら肩越しに囁きあう。


「開示はどこまで?」


「人形扱いは嫌かな」


「わかりました」


これから行うことにはちょっとした理由がある。

欲望のままにというのは本音ではあるが、少しくらい建前は語ろう。

メイムの身体的欠陥によるものだ。

彼女は、他者と比べると異常な魔力をその体内に有する。

そして、その魔力は枯渇することをしらない。

彼女がエルフだからという理由ではなく、とある理由により後天的に与えられたモノであり、制御法をナナシは知らない。

自分の身体ではないのだ、知りようもない。

そして、メイム自身も湧き出る魔力の根源を止めることができないでいる。

問題なのは器だ。

蛇口とコップがあるとする。

蛇口を捻りを閉めることができないでおくとコップから水は溢れ零れ落ちるだろう。

コップであればマシだ。

溢れようと壊れることはないのだから。

しかし、人の身体というのはコップではなくビニール袋だ。

蛇口に縛り付けたビニール袋に水を注ぎ続けた場合、どのような結果が訪れるかは説明する必要が無いだろう。

そう、破裂する。

破裂を回避する為に彼女は魔力を消費し続けている。

変換効率が非常に悪いとされる重力系の術をメイムが主として使うのはそれが理由だ。

同じ真似を一般の魔術師がやれば数秒と持つまい。

だが困ったことにそれでもメイムは持て余してしまう。

そんなときナナシの出番だ。

行為の一環で魔力の一部をメイムから譲渡する。

快楽は得られるし、魔力は得られるしとナナシにとっていい事尽くめだ。

魔力生成の乏しいナナシが術師として強力なものが使うことができるのはこの行為があってこそのモノだ。

慣れぬ当初は受け取った時点で全身の穴から血を吹き出すという事故もあったが、自分が魔術を扱えるという欲もあって乗り越えてきた。

おかげで今では術式関連の知識はメイムよりナナシの方が上だ。

メイムもある程度は使うことができるのだが、一回の放出量が桁違いの為、同じ術式でも彼女が使うととんでもない被害が出たりする。

近頃は魔力消費の低いものを覚えるのは拒否している。


「フュンフィーさんの件は、魔力消費の一環ですかね?」


「こら、人を抱くときに他の女の名前を出すな」


抓られた。

教えてはくれないらしい。

力を抜き身体を引き離すと懐から上目遣いに自分を見上げてくるメイム。


「期待してもいいのかな?」


その目には不安が宿っている。

同志ハイドラット件だろう。

一度、確実に殺してしまったはずなのだが、その夜には何事もなかったように復活してた彼。

メイムの興味は彼に移っている。

それは彼女のもう一つの欠陥に由来するものだろう。

所有能力者はいたが個人の特性であり、種族的なものだった。

しかし、この地では存在しているようだ。


「期待しないでおきましょう。ワタシは今のメイムさんでも好きですよ。それにしても靴下は我々が猿ではなく文明人である象徴ですね、滾ります。『服は脱がせても靴下は脱がせるな』素晴らしい格言です」


「アタシが・・・」


言葉を遮り、口づけをする。

言わせない。

軽くではなく、貪りあうように激しくキスを交わし、彼女の味を堪能する。

唇を離すと糸が引いた。

互いに見つめ合う。

これ以上の我慢は必要ないだろう。

ナナシはメイムの脱げかけた衣服を剥がすとベットに押し倒した。


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