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幻想世界レスエンティア  作者: 三之月卯兎
二章続き
54/62

スライム遭遇(2回目)

「スライムを触媒にですか、それは素晴らしいですね」


デュフフと笑いながら身の丈もあるスライムを避けるナナシ。

戦闘をしないのはルラを頭の上に乗せているからだろう。

ハイドラットはメイムの後ろに回り込む。


「ちょっと、人を盾にするって何考えてんの!」


「お前の方が強いんだから弱い奴の盾になるのは当たり前だろ」


「あんたそれでも男なの!?」


「ドブネズミさんは逃げ隠れすることが基本なんだよ」


「最低ね」


「俺としちゃ、それは誉め言葉だな」


「メイムさん、服は溶解されるので触ると大変ですよ」


「それって、アタシはスライムに触ったらアウトじゃん!!この」


「ぐえええーーーーーーーーーーー、コノヤロウ!!」


メイムは身近にいたハイドラットの首根っこを掴むと襲い掛かるスライムに投げつけた。


「投げるんだったらそこの精霊だろうが!!」


「ぼ、僕ですか!?」


スライムに取り込まれても生きている間は溶かされいとはいえ、窒息してしまえばあっという間に喰われる。

スライムに取り込まれてしまった場合、粘着質のある身体から脱出するのは容易ではない。

その上で、逃がすまいと引き込む力が加わる。

非力な者にとっては脅威だ。

非力なハイドラットを助けてくれる存在は・・・。


幼女ルラ。無理だな。

オーク、ナナシ。さっき喰われてた。

役立たずフュンフ。

メイム。今の状況に陥れた張本人。


いないと悟った。

自分の身は自分で守るしかない。

ハイドラットは懐から爆薬を取り出す。

常備している道具の一つだ。

この間、壁を崩すのに使っていたのとは違い小型のもの。

火をつける必要が無く栓を引き抜けば爆発する優れものだ。

スライムに取り込まれた。

生温い液体が全身を包み込む。

呼吸ができない。

目を開けると薄っすらと青みがかった向こうに、自分を投げ込んだ元凶が見える。

だが、探すのはそれではない。

スライムは液体生物であるが全てが液体ではない。

この粘土の高い液体を操る核が存在するのだ。

自力脱出ができない以上、倒す以外に生還する方法はない。

上下左右をかき回す。

想定していたより自分を取り込んだスライムがでかい。

ハイドラットを中心に1m以上の厚みがあるのではないだろうか。

引きずり込む力が働くのは表面近くで中はそこまで強くはない。

身体と透度の似通った核だが魔力の塊だ。

並の冒険者では発見できないかもしれないが、こちらは、感知に優れたハイドラット様だ。

見つけられないわけがない。

服の袖が崩れる。

溶解液により生命反応の無いものは瞬く間に溶かされてゆく。

爆薬の表面も融解が始まっている。

早くしなければ脱出手段そのものが失われる。

目を閉じ魔力の高いところを探す。

前方にかなり高いものを感じるが遠すぎる。

これじゃない。

スライムの外に核は存在しない。

前方から感じる魔力が高く、スライムの核が放つ魔力を探すのを妨害している。まずい。

そのとき液体の中を流れるように浮遊する核を見つけた。僥倖。

核に爆薬を突込み素早く栓を抜き点火する。

スライムの核が内部から飛び散り飛散する。

これでスライム身体を維持する思念が途絶えただの液体に戻る。

あとは脱出するだけ。

呼吸も限界だ。

表層へと急いで泳ぐ。

服は既にボロボロで懐に入れておいた道具が開いた穴から零れ落ちてゆくが、最早気にしない。

まずは脱出が最優先だ。

しかし、表層に手を伸ばそうとした瞬間、再び中心へと引き込まれそうになる。

スライムの核は潰したのに何故?

混濁し始めた意識の中、もう一つの魔力の塊が液体の中を彷徨っていることに気が付いた。

つまり、スライムは2匹いたのだ。

それが一つになって襲い掛かってきた。

核が常に一つだと思っていた思い込み。

それがこの失態だ。

外からの魔力が感知を妨害しでもう一つの核をを見逃した。

くそったれが・・・。

もう抜け出すには意識が持たないし、道具もない。

死ぬにしても、もう少しまともな死に方があったろう。

バカ女に足引っ張られて死ぬとか間抜けにも程がある。

同じ相手に二度も殺されるとは・・・。


ハイドラットが意識を失いかけたとき、目の前に何かが飛び込んできた。

見覚えのある全身鎧だ。

その鎧がこちらを向く。

少年の顔だ。

彼はこちらを見て笑った。

そして、彼の全身が光ったかとおもうと中身が溶けて消えた。


それが、ハイドラットが意識を失う前に見たフュンフの最後だった。

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