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幻想世界レスエンティア  作者: 三之月卯兎
二章続き
52/62

二人は似ている?

「で、スライムがどうやって有用なんだよ?」


「そりゃ、あんなことやこんなことは勿論、ムフフなことだって」


「これは厄介ね・・・」


気を失っているフュンフを膝に抱えたままメイムは溜息をつく。


「それは治療が必要ということか?」


フュンフは大量のゴブリン相手に一人で相手にさせられたり先程のスライムの戦闘でも役に立っていない。

というか、迷宮に入って以来まともな活躍をしていないのだが・・・。


「置いてくか」


「ロクでなしの発想ね」


「迷宮だって弱肉強食だからな。生きて帰れないヤツなんて毎回出るさ。幸いあのスライムもいるし死体捨てても証拠が残らない。完璧だろ」


「迷宮だけに迷宮入りした事件も多そうね、ここ・・・。ナナシはどうおもう?」


「捨てるなら有効活用したいですね。確認ですけど彼は男ですよね?」


「アンタ、男には容赦ないのね」


「同志と女性以外には興味ありませんね」


「その言い方だと俺の身体が狙われてる気がするんだが・・・」


「大丈夫ですよ、同志。私の興味は常に女性であり、あとは趣味を同じくする者には広い心で対応します」


いったい同志は何の話なんだろうな?

心当たりのないハイドラットだった。


「アタシんのだから却下。それにこの子、男でも女でもないわよ」


「それは興味がありますね、両方あるってことでしょうか?」


ナナシの言葉にメイムはフュンフの股座を(まさぐ)る。


「どちらもないって感じかしら」


「それはこれからどちらにでもなれるということですかね?」

グフフと笑うナナシ。


「何をやってるんだ、お前ら・・・」


「「ナニの確認」」


躊躇いが無い。


「で、お前のって話だがマクシミアの子飼いじゃないのか?アイツの子飼いなら戻るぞ?」


「あー、大丈夫大丈夫。入る前に言ったけど、この子死んでも死なないしアタシが責任持つから」


「死んでも死なないってどういうことだ?」


「本体が別なのよね。身体は仮初で本体が壊れない限り死なないってこと」


「それは便利ですね。息をしていても死なないってことでしょうか?」


「ナナシの案は却下ね」


「どういうことだ?」


「こいつのことだから死なないなら適当に装備ごとスライムに放り込んでどこまで溶けるか試したいんでしょ」


「鬼畜だな、おい」


「豚ですから」


「却下ってことは、喰われる可能性があるってことか。そいつは生物なのか?」


「メイムさん、私というものがありながら他の子に浮気ですか?」


「うっざ。この子はね、精霊ってやつよ」


「精霊?」


「そう、自然の中に現れるスピリット的存在」


「なんじゃそりゃ?」


「ソウルってやつですね。人でいう魂。それの自然版だと思えばいいのではないんでしょうか」


「それって見えないんじゃないのか?」


「アタシには見えたのよ。ギルドの天井にくっついてたから捕まえたの」


「それだけ聞くと家に沸いたあの蟲みたいですね」


「なんの精霊かわからないけどとりあえずアタシの力で具現化させてみた」


「は?」


「魔力で霊核を構築してね、あとは適当な媒介に突っ込めば完成よ。簡単でしょ?」


「・・・」


「メイムさん、それ簡単じゃないですよ」


「うむ、霊体具現化は人からすれば高等技術じゃの」


「だってアタシ、エルフだし」


「むう」


「で、その子の具現化に使った触媒っての何なんですか?」


「ギルドに飾ってあった鎧ね」


「ああ、どおりで見たことあると思った。ギルマスのじゃねーか」


「飾ってあるなら使わないでしょ」


「そういう問題ではないような・・・」


「鎧、縮んでねーか?ギルマスそんなにちっこくねーぞ」


「触媒に使ったんだから変質するに決まってんでしょ。中身に合わせて変わるわよ」


「マジか」


「メイムさん、なんで触媒を鎧にしたんですかね?」


「だって、霊核壊されたら終わりじゃない。どうせなら外からに強い方が良いでしょ」


「そりゃ、そうだな」


「まあ、そうですね」


「じゃが、そやつと鎧の相性はあまり良くないらしいの」


「ルラちゃん、わかるの?」


「うむ。ワシは今、見ることに特化しておるからの。それによると、そやつの本質は流動性の高いものの方が媒介として適してる様じゃな」


「えー、じゃあ、あんまり役に立たなかったのって」


「うむ、適性が低いからじゃの」


「盾しか持たせてねーからじゃねーのか」


「同志、盾だからといって攻撃できないとは限らないですよ。剣で防御することがあるでしょう。盾で攻撃するのはおかしいですか」


「おかしいだろ、おい」


「自分の認識に囚われていては足元を救われますよ」


「俺がおかしいのか?」


「はいはい、アンタがおかしいでいいでしょ」


「良くねーよ。そもそも、そいつ必要なのか?」


「アタシら4人だった場合、戦闘できるのアタシとナナシだけじゃない」


「ルラさんは戦えませんし、同志はその保護ですからね」


「ナナシ、オブラートに言わなくてもいいわよ。ラット君は弱くて役立たずだもんね」


「あん?なめてんのか?」


「あんた、アタシに負けてんだからホントのことでしょ」


「メイムさん、煽らないでください」


「納得がいかないなってなら、また相手してあげてもいいわよ」


「上等だ、コラッ!!やるわけねぇだろ!」


「威勢があるのにどっちなのよ・・・」


「勝てない相手に無策で突っ込むのは馬鹿だからな」


「うわぁ、小物感が溢れてるわ」


「おぬしらしいの」


「俺がお前に挑むとき、それはお前が負けるときだ」


「はいはい、その日が来るのを祈ってあげるわ」


「メイムさん、初見殺しのとこありますからね」


「対策とられてもコイツに負ける気がしないけど」



「なぁ」


「なんじゃ?おぬし」


「お前、さっき見ることに特化してるって言ってたよな?アイツのこと何かわからないか?」


ハイドラットはメイムを指さして訊ねる。


「うむ。じゃが『今』と言うたじゃろ」


「できないのか?」


「できないわけではないがの自分でやった方が高い精度じゃと思うて」


「できねーよ」


「おぬしなら、できる」


「根拠は、あるのか?」


「ワシがゆうとるのが根拠じゃな」


「当てになるのか?」


「当てにするがよい。主様」


釈然とはしないが、迷宮で出会った不思議幼女だ。

ハイドラットには理解できない根拠があってもおかしくはない。


「わかった。当てにしてやるよ」


そう言って、ハイドラットはメイムを凝視する。

身長は、低め。

ハイドラットより顔ひとつは低い。

耳はエルフという種族を象徴する尖った長耳。

髪は珍しい青。色としては空色と表現するべきか。

長さは肩口ぐらいまでだが、後ろ髪二箇所を縛っておりその部分だけ、腰の辺りまで伸ばしている。

肌もここらの人より白い。

服は袖丈が無く、下は短パン。

特徴的なのは肩口近くから伸びる肌に張り付くような薄さの黒の長手袋、同じくパンツ下から足を覆うサイハイソックス。

年齢は不明。

少女のような外見だがエルフは長命と聞く。

此度出会うまでは、見たことすらなかったので判断には情報が足りない。

造形は整っていて美しいかもしれないが、身長と性格を考慮すると、美人という表現からは遠い。


「なに凝視してんのよ」


「お前が残念な娘ってことがわかった」


「っ!」


メイムが無言で殴りかかる。

当然ながら、ハイドラットはそれをかわす。

が、腹部に重い痛みが走る。

右の拳はかわしたが左拳が腹部に突き刺さっていた。


「卑怯だろ」


「あら、避けられないヤツが悪いのよ」


ハイドラットは、二撃目に気づかなかったわけではない。

ただ避けられなかったのだ。

メイムが最初の踏み込みでハイドラットの足を踏みつけ、その場に釘付けにしたのだった。


「なんと言いますか・・・」


「似た者同士じゃの」


それを傍観していた二人が呟いた。


「体重、重すぎんだよ」


痛みに身体を折り耐えるハイドラットの苦し紛れの一言。

それにメイムは笑顔で答えると無慈悲の三撃目をハイドラットの顔に撃ち下ろすのだった。

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