ー推察ー
「失礼するよ」
「や~あ、マジョリーナ。ひ~さしぶりだ~ね」
「アンタが呼んだんだろ?」
とある部屋の一室。
二人の人物が対面している。
「き~みは、知ってるとおも~うけどね、凄いのがき~たんだ」
「ああ、知ってるよ。あれだけデカいのが来たんだ。気づかないでいるってのが無理な話っさね」
一人は眼鏡をかけた胡散臭い男。
もう一人は背の低い老婆。
「か~の女については~、ど~のくらい知ってるか~な?」
「ちょいと待ちな。アンタの喋り方は相変わらずだね。えらく時間が経つってのに慣れないのかい?」
「ぼ~くは、ぼ~くだからね~。こ~れも今とな~ては、ぼ~くらしさの~ひと~つさ」
溜め息をつく老婆。
「聞いてる方が疲れるんだよ。年食ったら寛大になるんじゃないんだよ。逆さね。老い先がわからないから時間が惜しくなるんだよ。あたしゃ、せっかちでね」
「お~、そ~れはざ~ん念」
老婆の言葉を聞き大げさにリアクションする男。
「はぁ、あたしの方があんたに合わせてやる。アンタも合わせな」
そう言うと老婆はそれまで喋っていたのとは違う言語で話し始めた。
「で、あの正体はアンタ知ってるのかい?」
「知っ~てるとも、か~の女から・・・」
「アンタ、この場でぶっ殺してやろうかね」
老婆の殺気に男の方もふざけるのを止めて老婆と同じ言語で話し始める。
「冗談だよ。怖い怖い」
「あんたは変わんないね。あたしゃ、こんなんだよ」
「変わるというのは中々に難しいものでね。正直に言えば君が羨ましいね、マジョリーナ」
「はっ、ババアを羨むなんてどうかしてんね。それは置いといてだ『彼女』って言ったね?あれは、人なのかい?」
「ああ。おそらくは西の廃棄品だね」
「西のね・・・」
「本来だったら生産過程で己という自意識を取り除くんだがね、どういうわけか、完全に自我を持って行動してるようだね」
「聞いたことがあるさね。西の魔術文明を支えるには強大な魔素の塊が必要でそれを可能とする核を作ってるって。アンタのその言い方だと・・・」
「察しのとおり。だが重要なのはそれが今、私の手元にあるということだ。これを見てくれ」
男が紙束を差し出す。
老婆はそれを受け取るとパラパラと捲り内容を確認していく。
「これは?」
「この街の遺跡から算出された魔力結晶石と遺跡内の魔物の活動レベルと強さの統計だね」
「当初に比べると、だいぶ減ってるね。探索者共が駆逐した成果じゃないのかい?」
「それを踏まえたうえでこれを見て欲しい」
そう言って男は老婆に2つ目の紙束を渡す。
「こいつは?」
「私の独自の技術で収集した遺跡内の地図だね」
「はっ、こいつがあれば王都の連中も喜ぶだろうさ。連中には渡さないのかい?」
「彼らが欲しいのは、結果であって過程には意味ないだろうさ。」
「そうかい」
「収集したのは環境を整えてからの8年だがね、半年毎にまとめてある」
老婆は地図を見比べていく。
「あたしの見間違いじゃなけりゃ、当初と最近じゃ地図が狭くなってる気がするんだが気のせいでもないんだろうね?でなきゃ、半年ごとに地図を分ける必要ないからね」
「理解が早くて助かるね。遺跡は徐々に縮小している」
「そりゃまた突飛な話さね。崩落したとかじゃないのかい?」
「それがが逆なんだね。私が意図的に崩落させた通路が半年後には使えるようになってたりする」
「探索者共が直したんじゃないのかい?それか、魔物共」
「私がそれができるような手温い事をするとでも?実験したのは数十箇所だがね。いずれも現在では通れるようになっている」
「なんだい?独りでに直ったとでも言うつもりかい?」
「そうだと言ったら?」
「普通の遺跡だったらアンタの妄想っだって言い切れんるんだがね。ここはおかしなとこだからね。で、どうしようって言うんだい?」
老婆の問いかけに男は微笑む。その微笑には邪悪さが含まれている。
「結論を言う。遺跡は魔素量によって変化をする可能性がある。せっかく強大な電池が手元にあるんだ。試さない手はないだろう?不測の事態になるかもしれない」
「調査がアンタの仕事なのにわざわざ困難にするのかい?」
「可能性を試すのは今しかない。手元にあるといえ、アレを束縛するのは無理だろうからね。それに彼女が遺跡に興味を持っている」
「やれやれ、面倒なことになりそうだね」
「ジョリースター・マジョリーナ、君のところの力を貸して欲しい」
そう言って、男は老婆の手を取る。
「かかかっ!ババアになった今じゃキツい呼び名だね。久方ぶりに聞いたよ」
愉快に笑う老婆。
「まあ、いいさね。長々と蓄えてきた知識だ。最後に試してみるのも悪くない」
「ありがとう。・・・それにね、私はこう思っている」
少し間を空けてから男は言った。
「おそらく、深部には困難無しには辿り着けない」




