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幻想世界レスエンティア  作者: 三之月卯兎
二章
43/62

感知

問題発生。

大問題だ。

異様に魔物が多い。


現在チームで迷宮内の大広間にて対応中。

俺がなにをしているかって?

傍観者ですとも。やることが無い。

というか援護できない。

隠れる&逃げることは得意だ今は四方八方囲まれていてそんなことはできない。

周りの連中が戦っているのを見ているがコイツら強すぎませんかね?

普通に考えたら絶望的な状況のはずなんだが、そんな気が全くしない不思議。

俺の危機感能力大丈夫かな?と我ながらに疑いたくなる。


「後方通路から増援10。速さ的に犬だな」

「便利な能力ですね、さながらレーダーって感じですかね」


指示した方向に火球魔術をぶち込むナナシ。

あれだ。小鬼魔術師が使っていたカーナと同じヤツだ。

それを難無く扱ってみるオークのナナシ。

使用したのは既に5発目。

戦闘開始当初は、範囲魔術を連発していたというのに疲労の色も無い。


「レーダーって?」

「自分が知るのは電波を使って距離を計る索敵能力ですね。それに良く似た能力に見えます」


言われてみれば、そんな感じかもしれない。

電波は知らんが、頭の中になんとなく付近の地形と相手のいる位置がわかる。

俺が探索において一番頼りにしている自身特有の感覚。

他の連中には真似出来ないらしい。


「どのくらいの距離まで把握できるんですか?」

「半径でいうなら200~300mってとこだな」

「壁の向こうもですか?」

「ああ。あってるかは知らないけどな。それに普通だったらここまで索敵範囲広がらねーよ」


大変な状況なのだが、俺に焦りは無い。

というか、魔物の群れに囲まれているのに胡坐をかいて座っているのだから俺自身驚きだ。

こんな状況一人で遭遇すれば今の10分の1くらいの20~30mの範囲を感知するのが限度だろう。

今はそれだけ集中できる状態ってことだ。

感知している範囲に暴風が一つ暴れまわっている。

魔物が密集しているというのにその一点の周りだけ魔物がいない。

というか、次々と消滅している。


「あははは、死ね死ね死ね!!!」


身の丈を超える大剣片手に先程から魔物を蹂躙しているのはエルフの狂戦士バーサーカーメイムだ。

狂戦士。

彼女を表すのはこの言葉がしっくり来るような気がする。

どう見たってエルフとは思えない戦いっぷりだ。

物騒な発言をし、笑いながら魔物共を黒い霧に変えていく。


「まさにダンジョンって感じですね。死体も残らないなんて」

「ここがおかしいだけだと思っていたんだが他にも同じ迷宮があるのか?」

「いえ、なんとなくですよ。にしても生臭くならないのはいいですね。お昼にしますか?」


この状況で飯にしようというナナシ。

コイツはコイツでおかしいと思うのだが・・・。

ナナシは背負っていたリュックを下ろすと包みを取り出した。


「今日は、なんなのじゃ?」

「卵を使ったサンドイッチですね。それなりに用意してきましたよ」


我先にと強請ねだるルラ。ガッチリ胃袋を掴まれてんな。

ナナシの作る料理は美味い。

最初はオークの作る料理と侮っていたが見た目も味も一級品だ。

酒場の飯にメイムが文句を言ってたのもこいつの料理を食っていたら理解できなくも無い。

二人にとってこのあたりは懐かしい料理に似たものが多く、食材も似たものばかりで再現が可能なのだとか。オークとエルフって似たもの食ってんの?


「ナナシ!そろそろ飛んでんのがウザい、落として!」


メイムの叫びにナナシが対応する。

今度は水魔術だ。

別系統の魔術って習得が難しいって聞いたような・・・

勢い良く発射っされた水がメイムの上空を飛んでいる蜂や蝙蝠を次々と叩き落してゆく。

さながらホースを摘んだときのアレだ。


「前方から小鬼6だな」

「メイムさんで大丈夫でしょう」


俺だったらそれだけでも手一杯な自信があるんだが。

漆黒の少年フュンフは、盾を構えて頑張っている。

メイムを護ることを実行しようとしているようなのだが、ハッキリ言えばメイムの攻撃範囲に入り邪魔になっている。

動きは悪くないんだが、それ以上にメイムがおかしいのだ。

どう見ても護る必要ない。

普通なら彼が壁となって魔物を押さえ、メイムが機を窺って仕掛けるものだ。

だが、メイムが突出して群れに突っ込んで行ってしまうので彼が追いかける形となっている。

憐れ・・・。

この面子なら彼は盾以外の方が良いのではないだろうか?


メイムの基本攻撃は大剣による面攻撃だ。

武器の形状上、一番空気抵抗を受け、振り回すのが難しい横薙ぎ。

風切音を響かせながら暴風が舞う。

直撃を受けた魔物は数十m先の壁まで飛んでいき赤い花を咲かせる。

地面を転がっているのも天然の下ろし金に鑢られて赤く染める。

死んだ魔物も飛び散った血も直に黒い霧となり元に戻る。

それがこの迷宮の魔物の特徴。

そんなにお目にかかれない小さな稀少品レアドロップの魔力結晶石が大量に転がっている。

集めればそれなりの金額になるだろうが・・・


「あいつ、大剣に拘りあんの?」


サンドイッチを摘みながらナナシに質問してみる。

大問題もあっという間に数を当初の4分の1に減らしている。


「曰く、カッコいいからだそうですよ」

「だからって、迷宮内に大剣はないだろ」


そもそも、こんなに大量に魔物に遭遇しているにもかかわらず大広間に陣取っているのはメイムが大剣をブン回すためである。

彼女の大剣を扱うに通路は狭すぎる。

故にこうしてここにいるわけだ。


「通路に陣取って挟撃されるよりはマシじゃないですかね?」

「完全包囲されるより挟撃のマシだと思うがな・・・」


ナナシは俺らが飯を食っている間、次々近寄ってくる魔物を投擲で射殺している。

昼飯を提案したのはナナシだし、元々俺も戦力外扱いなのでお言葉に甘え休憩中。

感知は継続中だ。

ナナシが何を投げてるかって?

さっきの稀少品レアドロップだよ!

石の変わりとでも言うように投げてますがな・・・。勿体ね~。

勢いよく飛んだ稀少石は魔物を貫き地面にぶつかり粉々になる。

まあ、とっておいても生き残れなかったら意味無いか。

魔術師自称してるけど、ナナシはオーク。

人の魔術師と比べて圧倒的に筋力が違う。

常人は投擲で肉体貫通とか無理だから。


「通路で遭遇したらどうすんだ?」

「武器を変えるんで大丈夫ですよ」


メイムは、大剣以外にも武器を持っているらしい。

感知を続けていて気がついたことがある。


「アイツってさ、誘蛾灯かなんか?」

「誘蛾灯って・・・。どういうことです?」

「どうも、魔物共が狙っているのアイツぽいんだよ。俺らを襲ってくるのはついでって感じだ」


この数相手にナナシだけで俺とルラを護り余裕があるのは、メイムが率先して倒しまくっているのもあるが、それ以上に彼女向かって魔物共が集まっているおかげである。

フュンフはそんな渦中に飛び込んでいっているのだから大変だ。


「メイムさんがそれだけ魅力的ってことですね」

「語弊があるな。魔物共を惹きつける何かがあるんじゃないか?独特の匂いとか?」


そこに空気を切り裂いて何かが飛んできた。

顔の横を通り過ぎたそれは衝撃を撒き散らしながらを地面に突き刺さった。


「レディーを掴まえて臭うとか言うな!!」


向こうでメイムが叫んでいる。

飛んできたそれはメイムの大剣だった。

って、殺す気か!!

・・・1回殺されてるがな。


おい、アイツ武器捨てたぞ・・・。

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