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幻想世界レスエンティア  作者: 三之月卯兎
二章
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疑念

「頭部半壊だと?」


ハイドラットは驚きの声を上げる。

本当に驚いた。

だって頭部半壊って死んでるだろ?

即死レベルだろ?


「ああ、だから俺たちもお前さんが本当に生きているのか不思議でな」

「あんた、生きてんだよな?」


確認されてしまった。

むしろ、確認したいのはこちらのほうなんだが・・・。


「お主、食い物はどこに行けば良いのじゃ?」


先を歩いていたルラは行く場所がわからなくなってハイドラットの元に戻ってくると服の裾を掴み催促する。

ハイドラットは、しゃがんでルラに目線の高さを合わせると


「ちょっと待ってなー」


ムカついたので両頬を掴むと左右に引っ張る。


「にゃにをひゅるぅ」


こいつはちょっと、空気を読んで欲しいものだ。

マクシミアの言っていた周りが教えてくれるということはこういうことか?

いや、待て。

この二人が仕込みの可能せいもある。

容易に信じれば、マクシミアの思う壺だ。

抵抗するルラの顔をいいように弄びながら考える。

服装に元の容姿も相まってどこぞの令嬢のようにも見えるのに立ち振る舞いが残念な幼女。

教育もされていないのだから当たり前といえば当たり前だ。

この服をルラ着せたヤツは、何を思って着せたのだろうか?

(そういやこいつも当事者だったな)

思い返せば、此度の騒動の原因はこいつにある。


「お前さ、広場で俺がどうなったか覚えてるか?」


ルラはヒリヒリとする頬をさすりながら、


「そんなことよりおぬし、食い物じゃ~」


と、涙目でせがんできた。

俺の知りたいことは幼女にとっては、食い物以下の出来事だったらしい。

だが、確認しておく必要がある。


「っ、質問に・・・」

「お前さん」


ルラに問い詰めようとしたところに二人の冒険者の片割れから声がかかった。


「子供にあの光景を思い出させるのは酷じゃないか」


その言葉にもう片割れも強く頷く。

なるほど、一理ある。だが、


「俺はあんたらが言っていることを疑っているわけだ。

こいつは当事者だから見てると思うんだがな。

それにな、頭が壊れたら死ぬだろ。

ならなんで俺は生きてるんだ?」

「それはこちらが知りたいもんだ。

あれだけの怪我したお前さんがこの短時間でピンピンしてる理由が分からねぇと怖くて眠れねえよ・・・」

「短時間?あれからどのくらい経った?」

「3時間くらいだな」


思わぬところで時間が判明した。

いつもより人が少ないので遅い時間かと思っていたが、あの騒ぎが夕方だったから季節を考えれば日が沈んでからそうは経っていないことになる。


「そんな短時間で治癒できる方法なんて聞いたことないぞ?」


それが本当であればマクシミアが使ったという竜薬はとてつもない代物だ。

魔術にも治療術はあるが扱いが非常に難しい。

活性化の術の一部で複雑な術式と膨大な魔力消費。

そして、それらを維持するための高度な集中力が求められる。

部位破損などすれば治療は長期に渡る。

それがものの数時間で完治したというのだ。

本当であれば、ヤツが請求した金額でも安いのではないだろうか?


治療術を使うには、リスクがある。

危険の多い冒険者業であればぜひとも覚えておきたい術だ。

魔術適正が冒険者であれば望むものは多いだろう。

だが、それは適わない。

理由は単純、教会によって秘匿されているのだ。

治癒術は他の魔術と違い金になる。

手足を失ったり、不治の病にかったとき治せると言われれば、いくらでも人は金を積むだろう。

術を独占することにより教会は莫大な利益と国における権力を有している。

教会に属さない者が治癒術を使えることが発覚するとどうなうかは容易であろう。

術者を密告すれば、かなりの報奨金が貰える。

さて、もし術に代わる薬があると教会に知らせればどういう事態になるのか?


マクシミアがハイドラットに口止めしなかったのは信頼してなのか、それとも別な何かか?

考えても分からない。


「なぁ、お前らが言っていることは本当なのか?」


改めてハイドラットは、目の前の二人に問う。

二人は困った顔をしながら見合うと二手に分かれて道を開けた。

そして、そろってギルドの奥を指差した。


「お前をヤッたエルフがこの先にいる」

「本当かどうかは本人に確かめてくれ」


彼らが指差した先にあるのは・・・


これから行くつもりだった、ギルドの酒場だった。

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