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幻想世界レスエンティア  作者: 三之月卯兎
二章
33/62

気がつけば

世界が暗い、真っ暗だ。

なせ自分がこのような世界にいるかわからない。

四方、八方と見渡すが何もない。

ただ、先の見えぬ暗闇だけが延々と続いている。

どちらへ行くべきだろうか?

止まることもできる。

だが、なんとなくそれは間違いのような気がした。

何もない闇の中だからこそ歩き続かなくては何処かへ辿り着くこともできない。

そうおもった。いや、そう確信している。

見えない先で何に呼ばれている気がした。

行かねば。

その何かがある気がする方へ歩き出そうとした。


「待って」


誰かに呼ばれ、俺は立ち止まる。

…俺?俺とは誰か?

僕でもなく、私でもなく、俺。

俺は………思い出した。

ハイドラット・アルフォニカ。

それが自身の名前。

自分を構成していたものの一部を思い出したことにより、そこから芋づる式に記憶が補完されて行く。

由来、願望、信念、憤怒、憎悪………。

空っぽの器に自分という中身が注がれる。

自分というものが明確になり目に移る世界が変わった。

世界は暗いままだ。

だが、先程までと違い行くべきだとは思わなかった。

呼ばれている気はする。

自分が曖昧だったときは、それに向かうことは当然だと思った

だが、今は逆だ。

行ってしまえば戻れない気がする。

自分を失ってしまう、そんな予感がある。

それは嫌だ。

失ってしまうのは仕方のないことかもしれない。

自分が何処にいるのかわかった気がした。

この先に行くには支払うべき対価なのであろうが、自分はまだ何も成していないのだ。

自分を構成するものを手放すにしても、それにはまだ納得していない。

悔しさに膝を着く。


「君は強いんだね」


囁く声がして背後から抱きつかれた。

不思議と不快にはならなかった。

強い?誰が?


「そうだね、君自身はそう思っているよね」


優しく諭すような声。


「でも、君はここで手助けもなく自分を思い出した。

それは君の強さの証明だよ」


わからない。

自分に抱きしめている人物は何を言っているのだろうか?


「戻れるよ。君はこの先を拒否し、ここにいることを拒絶した。

きっと、その強さに私は惹かれたのだから…」


その言葉とともに、世界がだんだんと薄くなる。

何を言っている?

そもそも、お前は誰だ。

声の主を確かめようとハイドラットは振り返ろうとした。



---



ハイドラットが目を覚ますと化け物の顔がそこにあった。


「ぎゃぁぁぁあああああああああっ!!」


「落ち着いてください同志、悪い夢でも見たんですか!」

「お前だよ!!」


寝起きに豚頭が目の前にあって驚かない人がいるのであれば教えて欲しいものである。

強烈なインパクトに先ほどまで自分がどんな夢を見ていたのかも吹き飛んでしまった。


「ここは…」


ハイドラットが上半身を起こし、自分の置かれている状況を確認しようとすると、目の前のオークが手をかざし待ったをかける。


「同志、慌ててはいけません。

天使が寝ておられるのです。至福の時間を濫りに乱すものではありません」


天使?聴きなれない言葉を耳にしながらハイドラットは首を起こし周囲を見やる。

どうやら、自分はどこかの一室のベットの上に寝かされているようだ。

そのベットの中腹、自身のわき腹あたりに蹲って寝ているのが一人。

幼女、ルラである。

記憶にある彼女は全裸で袋詰めにされていたはずである。

それが今は、見慣れないヒラヒラした服を身に纏いハイドラットに抱きつくように寝ていた。


「……俺は、どうなったんだ?」


記憶では、広場でこの謎のオークとエルフの少女を相手に逃げる算段をつけていたはずなのだが、なぜ自分はここにいるのだろうか?


「先に謝っておきます。同志、申し訳ない」


オークが地面に膝を着き床の上に両の親指と人差し指で三角形の形を作るとそこ目掛けて深々と頭を下げた。

いわゆる、土下座ってヤツである。

オークが土下座…。

このようなオークの姿を見たことのある人はこの世界に何人いるのだろうか?

珍妙な構図が出来上がっていた。


「何を言ってんのか、わからないんだけど?」


そもそもだ、記憶に無いが自分はコイツらから逃げたはずである。

逃げたはずなのにその相手が目の前にいて自分に謝っているということはどういうことだ?


「えっとですね、メイムさんが軽くボコる程度だと思っていたんですがね、完全に読み違いまして、まさかあんなことになるとは・・・」

「あんなことって?」

「あれ、覚えてないんですか?」


見つめ合う二人。

互いに自分の置かれた状況を思案し沈黙が流れる。


「覚えてないんだったら大丈夫です」

「いや、凄い気になるんだが?」

「世の中には知らないままの方が良いこともありますよ。

私、同志が起きたことを皆さんに伝えてきますので失礼しますよ」


そういい残し、オークは逃げるように部屋を出て行った。


「俺にいったい何があったんだ?」


オークの態度に自身に何があったのかハイドラットは不安になった。

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