エルフの少女
いったいどういうことだろうか?
説明して欲しいのはこっちである。
オークからルラの奪取に成功し、全てが上手くいったはずなのに謎の少女の登場である。
しかも、その少女はあのオークと繋がりがあるようである。
少女は、特徴的な耳の形をしており、ハイドラットの記憶が確かであればエルフという種族のはずである。
エルフは、王国の北部に隣接した森を中心とした国家を持っており、閉鎖的な種族だ。
弓術、魔術、魔法を得意とする。
また、特徴としては、その美貌と長命な寿命があげられる。
長命ゆえ、繁殖力には乏しく、その美貌ゆえ多種族すら虜にする。
虜というのは従えるわけではない。
エルフという種族は長命で死ぬ直前まで人でいうところの青年期を維持する。
若くて美しいゆえに多くの多種族に襲われるのだ。
その中でも、暴力的で嗜虐的、かつ性欲魔獣と云われるオークとの関係は最悪であったはずだ。
そんな、二つの種族が仲間のように振舞う光景はいったいどういうことであろうか?
ハイドラットだけではない、観衆も戸惑いながら目の前の光景を傍観している。
エルフの少女はルラをレイナに預けるとオークとやりとりを始めた。
「とりあえず、アンタが街の中にいる理由だけ説明しなさい」
オークの背中に登り首を絞めつつエルフの少女が言う。
「街の外にいたらですね。そこの少女を連れ去ろうとした輩に出会いまして、取っちめたのですがね。
話を聞けば少女は全裸で街中を歩いていたそうです」
「はぁ?」
「本人にも確認したのですが、ハイドラットという方にあの格好で連れて来られ放置されたそうです」
「とんだ変態ね、アレ?」
エルフは、こちらを指さしゴミを見るかのような目でみている。
肯定するオーク。
とんだ誤解である。
言葉は間違っていないが、放置したのは街の中であっても自身の部屋である。
そこから勝手に出たのはルラ自身であって、こちらに非はない。
周りの連中が俺を見る目が痛い。
ルラの存在は、現状で公にしたくはなかったがこれ以上この二人に喋らせるのは不味い。
「勝手なことを言ってんじゃねぇ。俺が放置したのは俺の部屋でだ」
ザワっと周りがざわつく。
おかしなことを言ったか?
「うわっ、全裸で放置したことを認めたわよ、アイツ…」
「鬼畜ですね…」
オークに鬼畜扱いされるとはおもわなかった。
かなりショックである。
「で、そんな格好で外に出たって事は鬼畜の部屋から逃げ出したって事かしら?」
「いえ、他に頼れる人も居らず、そこのハイドラットという方を捜していたそうです」
「全裸放置されて、それでも頼れるのがあの変態だけってどんな関係よ?」
「それはきっと主じゅ…」
こいつにこのまま喋らせておくとこちらの風評に問題がでる。
そう判断し、オークの言葉を遮る様に。
「妹だ!!」
と、つい先程決めた設定を公言する。
「妹に首輪をして全裸で放置ですか!!なんてうらや、けしからん人なんですか!!」
おい、なんか言いかけてたぞ。
その向こうでレイナがルラをギュッと抱きしめながら、こちらを白目でみつめている。
いや、レイナだけではない、周りのいたるところから冷たい視線を感じる。
なんてことを言ってくれたのだろうかこのオークは…。
「ちょっと待て、オーク。おまえ、レイナとやり合っているときに俺の名誉の為とか言ってたよな。
この状況どうしてくれんの?」
「自業自得ですね。私もここまで鬼畜な方とは思っていませんでしたし、
隠すべきことが公然の周知となってしまった以上、もう隠す必要もないでしょう」
開き直りやがった…。
「そうねナナシ、こんなクズに慈悲はいらないわ
アタシが引導を渡してあげる」
冷え切った声でエルフの少女が言う。
「ナナシ、アタシの剣」
オークはレイナと対峙したときに捨てた馬鹿デカい剣を拾うとそれを少女に投げる。
それを少女は片手で受け取るとハイドラットに向けると両手で構える。
その剣、お前のかよ…。
落下音からしても超重量ありそうだった大剣を片手でとか、この少女はいったいどんな筋力をしているのだろうか?
エルフだよな?
膨れ上がる殺気。
「皆、いいかしら!罪人ハイドラットの公開処刑を始めるわよ。
執行人はこのアタシ、メイム・ネムレス」
沸き立つ歓声。
このエルフ、観衆を味方につけやがった…。
周りは、敵だらけで逃げ場なし。
「さぁ、覚悟はいいかしら?」
なんで、こうなったんだろうな?
俺の罪って何?
理不尽な戦いが幕を開ける。




