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幻想世界レスエンティア  作者: 三之月卯兎
二章
25/62

呼び出し

外からの聞こえた叫びに声に反応してレイラが店から飛びだした。

ハイドラットは当然のごとく悲鳴を無視した。

ルブラスカで昨夜のような内からの襲撃ならともかく、外からの襲撃など日々ここで生活していれば、たまにある日常のひとつだ。

ここの連中の大半が冒険者であり戦いの心得を持っているし、街を守るために騎士団だって巡回しているのだ。

自分がやらなくても誰かがやるし、そもそもハイドラットは戦うつもりがない。

護身用にナイフは持ってはいるが、他の装備は自分の部屋に置いてきてある。

そんな状態で何を好んで戦わなければいけないのか?

ということで、服を作るための布選びを再開する。

棚にに並んでいる生地を物色しようと辺りを見渡して一つの問題に気がついた。


「店員がいねー…」


あのお人好しの女は、人助けのために飛び出していってしまった。

店をほったらかして。


「おいおい、客がきたらどうすんだ?というか客をほったらかしだぞ」


とりあえず、ぼやいておく。

どうしたものかと考えていると。


「ハイドラット、あんたなにしてんの?!」


飛び出していったはずのレイラが血相を変えて戻ってきた。


「誤解すんな。俺は客だ。

何も盗っちゃいないし、金はきちんと払う」


顔色を変えるほどに慌て戻ってこなくてもいいだろう。

盗みを働くと思われていたなら心外である。

しかし、彼女の次の言葉は、ハイドラットの予想を遥かに超えたものであった。


「オークがあんたを指名よ!!」

「はああああああああああああああ!!?」


予想外の出来事に驚きの声をあげてしまった。


「オークが俺を!?」


これまで様々な人生経験を積んできたわけだが、ハイドラットの記憶の中にオークの知り合いなど一人もいない。

そもそもだ、オークというのは忌み嫌われた種族であり、好んで近づくものなど誰もいない。

知能が低く、性欲が強く、食欲旺盛。

いうならば、本能だけで生きているような種族だ。

顔は豚面で醜く、雌がいない。

彼らが繁殖するためには、他種の雌が必要であり、そのために集落を襲っては女を攫っていく。

攫われた女の末路は、語らなくてもわかろう。

そんな種族がハイドラットを指名?

ありえない…。

悪寒が背筋を走る。

そもそもだ、人語を発するオークなんていうのは初耳である。


「他の冒険者とか憲兵とか、居たんだろ。なにしてんだ?」

「二、三人伸されて転がってるんだけどね、一応無事みたい。

 言葉が通じるし、要求があんだだから様子を見ようって話。

 今のところ大人しいから対応に困ってるみたい」

「おいおい、俺にオークの知り合いはいないぞ。俺にその相手をしろと。

 俺が逃げるとは思わなかったのか?」

「逃げてもいいけど、一度会ってみたら。それから逃げても問題ないでしょ?」


確かに、相手がこちらの名前を知っているということは、自分と何かしらの繋がりがあるということだ。

それを調べておくのは悪い手ではない。

一番の脅威は知らないということだ。

知ってさえいれば、対応策はとれる。

とりあえず、戦いになった場合の対応策は準備しておきたい。


「相手のオーク達は見たんだな?」

「達じゃないわ、相手は一人よ」

「一人!?」


オークが攻めてきたというわりに大騒ぎになっていないのはそのせいか。

周りの連中は最悪、どうにでもできると踏んでいるのだろう。

そんなとこにたった一人でやってきたオーク。

興味が沸いてきた。


「特徴を教えてくれ」

「身長が2mくらいで背中に同じくらいの長さの大剣背負ってるわ」


大剣使いのオーク?

ますます、聞いたことがない。

本来、オークは本能のままに武器を振るう。

身の丈ほどある大剣など重心に振り回されてまともに扱うことなどできるはずがない。

だが、話ができるほどの知性を持っているというのならその技術も持っているのかもしれない。

気をつけなければならない。


「他には?」

「口から牙が見えいて、身体はたぶんかなりの筋肉質よ。

見たことないような鎧を着ていて…」


レイラの挙げるオークの特徴は、完全な近接戦闘のタイプだ。

相手の機動力がどれほどのものかわからないが、間合いにさえ入らなければどうにかなるはずである。


「…それから、銀髪の子供を抱えているわ」


…自分が指名された繋がりが解かった気がした。

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