責任者
「そうそう、君が連れてきたゴーレムについて詳しく聞いてもいいかな~?」
「あんたの個人的趣味なら別の日にしてもらいたいんだが?」
長くなりそうな気がしたので断りを入れておく。
「いや~、ボクぁ~、一応、この迷宮探査についての責任者だからね~。
昨夜あんな騒動になったからには、調書の一つくらい作っておかないとね~、上からどやされるだよ~。
あとで、面倒事にならないように知っていることを教えてくれると助かるな~」
確かに、ここで変に隠してあらぬ疑いをかけられるのであれば、この際知っていることを全て話してしまった方が賢明だろう。
「わかった、何でも聞いてくれ。できれば手短にな」
そう言ってハイドラットは近くに置いてある椅子に座った。
問題ない、ゴーレムの事だけに関しては。
マクシミアの質問としてはどんな形状でどんなゴーレムだったかだ。
本体さえ残っていれば、文献と照らし合わせて作成に使われている技術を得ることができたかも知れないが、既に完全消滅済み。
迷宮で発見された初のゴーレムで、遺産としては非常に価値の高いものだったらしい。
神々の技術によって作られていたのであれば更にとのこと。
聞くほどに頭が痛くなる。
普通に止めて王都に回収させれば一財産築けたのではないだろうか?
いや、ルラにはきっとそれ以上の価値が…。
どうだろう?
ゴーレムが消滅したことによって、肝心な起動については触れることはなかった。
おかげで、ルラの存在を隠すことができたが、考えればそれはトリトリトリのファインプレーによるものである。
あれが、「自分がやりました」と言わなければ、今頃は魔法使い探しになっていたかもしれない。
そう意味では、トリトリトリに救われたといえる。
あれが恩人…。
…腹立つな。
彼が今後、地獄を見ることを祈らずにはいられない。
「ふ~む。こんなところかな~。
ハイドく~ん、協力ありがとう」
それなりに時間が経ち質問が終わったようだ。
色や形状、大きさから動作などマクシミアの質問に一通りに答えたはずだ。
なぜ、襲われたかってとこは、小鬼魔術師の魔法攻撃を受け起動したことにしておく。
アレの所有権限を持っていたことは伏せておく、当然だ。
「じゃあ、俺は帰るぜ」
椅子から立ち上がり両腕を組んで伸びをする。
固まっていた関節がパキポキと鳴って気持ちがいい。
日は傾き夕方に前くらいだろうか。
今季節は初夏。
一年で最も日が長い時期だ。
今からでも十分間に合うはずだ。
ただ、これからのことを考えると少し憂鬱になる。
いろいろなに問題に直面しようと積極的に動くことに躊躇うことはなかった。
しかし、これからすることには消極的だ。
代わりを立てるとしても説明が必要。
いつものように逃げればいいかといえばそうでもない。
こればかりは逃げてはいけない気がする。
そう考えながら部屋の戸を開け出て行こうする。
「ハイドく~ん、忘れもんだよ~」
声に振返ると飛んできたのはタグプレートだ。
片手でしっかりとキャッチする。
「いつもどお~り、精霊は、 ボクのとこで休まさせてもらうよ~。
迷宮の新層にに潜るときはまた尋ねてきてね~」
マクシミアそう言ってこちらに手を振る。
「ああ、わかった。」
精霊は、迷宮の道を記録するのに必要な存在だ。
探索を専門とする冒険者には賞金のために必須である。
だが、それには結構な精霊力を消費するらしく、探索が終わったあとは精霊魔術師であるマクミシアの元で休ませなければならないらしい。
貸し出しの道具みたいなものだと冒険者たちは認識している。
扉が閉まりハイドラットが出て行った。
それを確認したマクシミアは立ち上がり扉まで歩いてゆく。
そして、鍵をかけ振返る。
「顕れよ、ツヴァイ」
その言葉に反応し青い光の玉が現れる。
それを確認するととマクシミアは笑いこう言った。
「教えておくれツヴァイ。彼が此度の探索で何を見たのかを」
青い光は輝きを増し、そこに現れたのは一人の少女だった。




