同属嫌悪
「待てよ、王都には、天剣十一本っていうここいらで最強の騎士達がいるんだろ?
そんなとこをわざわざ攻める国があるのか?」
ハイドラットは、マクシミアに問いかける。
「確かに~、王国軍は強い。
でも~、絶対じゃないんだ~。勝つ方法なんかいくらでもあるんだよ~」
諭すかのようにマクシミアは変わらぬ態度だ。
「例えば~、ハイドくん。君ならどう攻める?」
「王都をか?」
唐突の無茶振りだ。一介の冒険者でしかない自分にこの男は何を求めているのだろうか?
「戦うわけないだろ。
そもそもな、俺のここでの二つ名は逃げのハイドラットだ。
戦闘において戦うという選択は滅多にないんだよ」
「ふ~ん、非力な君らしいね~。
だがもし戦ったとして、相手の脅威を断つにはどうする」
「相手が多数なら分散させる。
一人で複数を相手にしても勝ち目がないからな。
一気に距離をとり一番早く追いついてきたヤツを見せしめに派手に殺す」
自分がよく使う手段だ。
昨日の小鬼戦でも使っている。
「恐怖に飲まれれば動きが遅くなる。そこをついて離脱する」
「非力な君でも殺すときは殺すんだね~」
「当たり前だろ?俺は慈善家じゃない。
生きるために必要であれば殺すことは仕方ない」
「それだよ~。ハイドくん」
「は?」
何を肯定されたのかわからなかったが、話の流れを辿って考える。
つまりこのマクシミアの言いたいことは
「生きるために無謀であろうと戦争を仕掛けるとこがあるってことか?」
「そういうことさ~、それに敗戦するとわかっていれば回りを少しでも道連れにするだろうからね。
万全を期すためにも才ある人物が必要なのさ~」
言っていることは分かる。
だが、この際トリトリトリの実力はどうでもいいとして、あれがそれに応じるのだろうか?
ヤツが居なくなるのは問題ない。
寧ろ、騒動を起こす問題児だ。
迷宮を燃やして竈に変え出禁にされ、魔獣退治に赴けば森ごと燃やす。
商隊護衛の仕事を請ければ積荷ごと燃やす。
燃やしてばっかりだな…。
とにかく迷惑極まりない存在が居なくなるのはギルドにとっても街にとってもありがたい話だ。
ハイドラット自身も幾度と被害にあっている。
「アイツが必要ね…」
「う~ん。彼のことだから断るとは思わないけど~、駄目だったら~別の名目で王都に連れて行くことになってるから~大丈夫だよ~」
どちらに話が転ぼうとあれ居なくなることが確定したのは喜ばしいことだ。
マクシミアから見えない位置で拳を強く握りガッツポーズをする。
だがその喜びは次の会話で打ち消された。
「それにね~、ぼくぁ~彼に才があるとおもうよ~」
「アイツに?」
「行動には問題あるけどね~。
情熱やヤル気は素晴らしい~。
周りになんと言われようとへこたれない。
そういう意味では君と同類だ」
そう言ってウインクしてみせるマクシミア。
あれと同類…。その言葉に怖気が走る。
間違っても同類に扱っては欲しくないものだ。
周りに迷惑をかけようと気にせず、自己中心で利己的。
自分が納得できれば手段をすら選ばないようなヤツと…。
そこまで考えて自己嫌悪に落ちる。
全部自分に当てはまるうえに、その行動をそのまま昨夜行っている。
だからと言って、このまま同類でまとめられるのは納得いかない。
「経緯はどうにせよ~、彼は王都の目に留まったんだよ~」
マクシミアは「素晴らしいことだ」と頷いているが、それは誤りだ。
ハイドラットだけが知っている事実。
トリアス・トリスタン・トリニティは、賞賛されるような魔法使いではない。
正門を襲ったゴーレムをクード級魔法で倒したとされているが、夜を昼に変えたあの超常魔法はハイドラットの連れていた幼女ルラによるものだ。
トリアスにクード級は扱えない。
その現場を直接目にしている。
行使できたとしてもイーダ級がせいぜいであろう。
鍍金が剥がれたらどうするつもりなのだろうか?
彼がリスクを背負ってまで得た今回の話。
これから先どうなるのか興味はある。
まぁ、バレたら自己責任だ。
連れて行かれた先で地獄を見ればいい。
どちらに転んでもハイドラットにとって影響はない。
ここは後押しをしてやるとしよう。
「それは素晴らしいですね。
彼の魔法を目の前で見ましたけど、並みの魔法では、傷すらできなかったゴーレムを一撃で消滅。
あれほどすごい魔法を僕は見たことがない。
彼は間違いなくこの街最強の魔法使いですよ。
ぜひ、王都に認められて欲しいですね。
そんな偉大な人物が自分と同類だなんてとてもとても。
彼は僕と違いますよ。
彼には王都で活躍してもらいたいものですね」
自分とトリトリトリが同類ではないことを主張するもを忘れない。
口調がおかしくなったが相手はマクシミアだ、問題はないだろう。
自分が格下になるが構わない。
どうせいくらでもひっくり返せる。
同類にされなければ問題ないのだ。
そんなハイドラットのちっぽけな葛藤を察し、マクシミアは苦笑するのであった。




