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幻想世界レスエンティア  作者: 三之月卯兎
二章
20/62

昼下がり

ハイドラットは力尽きて寝ていた。

それもそのはず、昨日は半日駆け回っていたからだ。

日頃、どれだけ鍛えていようと、限界を超えて使い続ければ身体に影響は出る。

下半身が悲鳴を上げていた。

ベットから起き上がろうと膝を立てようとするが太腿と脹脛の痛みに断念する。

ぼーっと天井を見つめ、何かを掴もうと両腕を伸ばし、パフパフと何度か開閉させる。

当然、何かを掴めるはずもなく、またその行為に

(なにやってんだ?)

と自分で呆れ両腕を伸ばし組む。

両手を天井に向けてノビをしたあと、頭の上でノビをして組んだ手を離した。

今日これからのことを考える。


迷宮都市ルブラスカには、新区画と旧区画の2つがある。

新区画は遺跡であったルブラスカを調査するために設営された拠点が発展してできた区画だ。

元々は調査のために王国騎士団などが寝泊りするだけの場所であったが、調査が長引き物資が足りなくなった。

そこに目をつけたのが商人たちだ。

彼らは、物資を王都から運びこの拠点で売り捌くようになった。

当時は、迷宮内に巣食う魔物も多く怪我人も絶えず、治療をするには王都は遠かった。

怪我人を収容するにはテントより宿舎があったほうが良いし、調査は長期化すると結論が出され、季節の変化に対応するためにも宿舎が作られた。

やがて、調査が冒険ギルドに委託され多くの冒険者が集まるようになった。

宿が増え、物資の流通が頻繁になり、武具や衣類などを扱う店も建ち並ぶようになった。

そして、それらを守るために外壁が造られている。

ハイドラットが居るのは、新区画の一番街だ。

ここは、調査初期に作られた住居が建ち並ぶ居住区だ。

初期に作られたので造りは簡素であるが住むには安い。

設備は現在では、旧区画を模倣し以前より快適なものとなっている。


旧区画とは神々がまだ居たころに使われていたという街だ。

中央に神殿区があり、現在では円形の城壁によって囲まれている。

旧区画は星形の城壁が街を囲んでおり、中央の正五角形の場所には、神殿と塔以外何も建っていない。

旧区画城壁には東・南・西と門が3箇所あり、門の外が東から順番に新区画の一番区~五番区となっている。

東の一番区が旧居住区

南東二番区が新居住区

南の三番区が商業区

南西四番区が観光区

西の五番区が王都騎士団関連

という風に分かれている。



これから、行かなくてはならないのが冒険者ギルドだ。

旧区画の南東にあるギルドで帰還の報告をしなければならない。

報告は重要だ。

今回、幼女の件は伏せるつもりだが、それでも多くの未到達エリアをまわっている。

競合する者が出る前に報告して、ある程度の賞金は確保したいところだ。

金銭的には問題はないのだがこれから先を考えるとあるに越したことはない。

ルラを連れて帰ってきたもののハイドラットは新たな問題にぶち当たっている最中だ。


「はぁ、なんでこうなったかな…」


自分の行動を冷静になって振り返ればおかしな点はいくつかあがる。

新たなことに対する期待や興奮があったもののじっくりと考えてみれば、あそこまで無茶をして幼女を自分の手元に置く必要があったのだろうか?

結果としてみれば、連れて帰るのには成功ではあるものの、あちらこちらに火種を巻いた感じは否めない。

なぜ、この幼女にあそこまで必死になったのか自分でもわからないのだ。

ベットの下で毛布に包まって寝ている幼女を見つめる。

彼女をここに連れてきたことは自分の人生を間違えなく変えてしまうだろう。

その確信はある。

第一に彼女を連れて迷宮に潜るにしても、一人では厳しくなる。

迷宮上層であれば他の冒険者に魔物を押し付けることができるが、ハイドラットが目指すは迷宮の深遠。

未開の地に脅威を押し付けられる冒険者がいることは期待できない。


「となると、チームを組むべきか…」


チームを組む。

言葉にしても、実感が沸かない。

チームというのは信用できる相手でなければ駄目だ。

信用を得る自信はある。

だが、ハイドラット自信が相手を信用できるかはわからない。

今まで、単独で行動していたのも、一人の方が身軽という理由もあるが、それ以上に仲間というものを信用できなかったからだ。

冒険者を始めた頃は、チームを組んだこともあった。

しかし、碌な奴がいなかった。

道を探るのはハイドラットの仕事。

探査能力に優れている自分がやることに不思議はなかった。

が、魔物に会えば囮をやらされ、勝ち目がなければ捨て駒にされた。

報酬が出れば、若輩だから、戦闘能力がとさまざまな理由で撥ねられた。

単独でそれなりの稼ぎができると知ってからは、チームに入ることもなくなった。

以上のことによって、人を信用できないというのはあるが、もしかしたらそれだけではないのかもしれない。

ハイドラットには、記憶が不鮮明な時期が存在する。

自分がどこの出自でどう育ったかは覚えている。

ただ、冒険者になる前の数年が曖昧なのだ。

もしかしたら、そこに答えがあるのかもしれない。


覚えていない過去を今更掘り返したところで、何かが見つかるわけでもない。

考えることをやめてベットから起き上がる。

日が暮れる前に片付けておくことがある。

ハイドラットは毛布に包まったまま寝ている幼女をベットに移すと書置きを残して昼過ぎの街へと繰り出すのだった。

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