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幻想世界レスエンティア  作者: 三之月卯兎
一章
12/62

進呈

逃げる、逃げる、逃げる。

ひたすらに。

その姿は無様。

だから、どうした?

死んでしまえば元も子もない。

死んでいるものが敗者であるのならば、どんなに無様であろうと生き残れば勝者だ。

勝者は敗者を笑ってやればいい。

勝つためには何でもする。

だから、ハイドラットは逃げるのだ。

持ち前の足の速さを生かし逃げ続ける。

それを追うのは、3mはあろう全身鎧。

両手には、その巨体に合わせたような盾と斧。

ハイドラットは、遭遇する魔物達の間をすり抜け駆ける。

魔物達は、ハイドラットを追おうとするが、その背後から迫る異様なものに気づき、警戒体勢をとる。

逃げるものとしてはありがたい話だ。

自分と鎧の間に勝手に障害が増える。

残念なのは、この障害が壁ではなく紙にしかならないこと。

鎧に向かって行った魔物は、数瞬後には、塵となって消える。


鎧が自分を殺そうと向かってきたとき、ハイドラットは、命令を上書きするために止まるように命じた。

しかし、その言葉は無視された。

命令が無視されたのは、先の命令が完遂されていないからか、それとも暴走か、はたまた別の要因か?

いずれにしてもこの鎧、ゴーレムではなく、模造人形(フィギュア)というらしい。

ハイドラットのゴーレムに関する知識は、模造人形(フィギュア)には当てはまらないのかもしれない。

襲われることを認識し、当初、隠れることにしたが、簡単に見つかってしまった。

自身の気配を完全に絶っていたにもかかわらずだ。

模造人形(フィギュア)は、気配ではない別の何かでハイドラットを察知できるのだと頭を切り替える。

生物には生物の、人形には人形の認識の仕方がある。

そう受け入れることで生存率をあげる。

違和感を無視せずに最大限に疑う。

それがハイドラットの逃げの極意である。


心臓が激しく鼓動を刻む。

逃げるに置いてひとつ問題があった。

それは背中に背負っている幼女ルラの存在である。

この揺れの中、いまだ起きる気配がない。

意識の無い彼女の存在は、ハイドラットの動きを大きく制限している。

こんなときに使うアクロバティックな動作は、今の状態の彼女にどのような負荷をかけるかわからない。

下手をすれば致命傷を与えかねない。

そのくらいに無意識は無防備なのだ。

故に、今はひたすら走る。

ハイドラットはルラを支える手に力を込める。

追われて危機的な状態にあるというのに不思議と不安は無い。

むしろ、この存在を護らねばと、一人で逃げ回っていたときには感じることの無かった感覚を楽しんでいた。

落ちぬようにルラの尻をしっかりと掴み感触を確かめる。

背中に感じる存在がハイドラットの心を奮い立たせた。




逃げ回り、二階層へと辿り着いたときハイドラットは、近くにいくつかの気配があることに気がついた。

魔物ではない。

今日、何度か感じた気配だ。

前方に見えた十字路を右に曲がり、それらと遭遇する。

いたのは人だ。


「よう、お前ら生きてたか?」


ハイドラットは息を整えながら、そこにいる面子に軽く挨拶をする。


「てめぇ、ハイドラット!!」

「おい、お前!!」


そこにいたのは

ダストン・フォーゲルと

ディアなんとかなんとかと

なんとかなんとか

まあ、よくは知らない男が二人。そして、


「あんた、あたしたちの前によく顔出せるわね?」


女が一人。

この迷宮探索においてギルドで上位とされるダストングループの面々だ。

登録されているチーム名は確かホワイトファングとかいったか?


「ん、何の話だ?」

「とぼけたってことは自覚してんでしょ。今日、四階層で魔物けしかけたのあんたでしょ?」


彼女の名は、レイナ・バルカス。

ダストンのチームで魔法使いをやっている。

少し賢くて面倒な奴だ。


「やっぱり、てめぇの仕業か!今日は、襲い掛かってくる数が多いと思ったんだ」

「今日だけじゃねぇ。アンタ毎回ウチらに振ってませんかね?」

「勘弁してくださいよ」


男共が一斉に喚き立てる。

残念ながら、今は、まともに相手をしている暇はない。


「まぁまぁ、落ちつけよ」


ハイドラットは、手を前にかざし、連中を(なだ)めつつ、通路の端を口々に飛んでくる文句を流しつつ移動した。


「俺は魔物なんて(けしか)けてなんかいない」

「そう、じゃあ全て偶然だったっていうのね?」


レイナが睨みを利かせながら言う。その背後には、先程曲がってきた十字路。


「ああ、俺はただ逃げてるだけだからな!!」


ハイドラットは、逃走を開始した。

その直後、模造人形(フィギュア)が十字路に姿を現した。


「お前ら死ぬなよ!!」

「あんたが言うなーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」


後方に響く剣戟と爆風。そして、悲鳴。

あんな連中ではあるが、探索者の中では実力者揃いの経験豊富なチームだ。

負けはしても死人は出るまい。

そもそも模造人形(フィギュア)に掛かっている命令はあの大広間に居た輩の殲滅。

目的はハイドラットたちであり、あの大広間に居なかった連中を振り払いはしても止めまで刺したりはしないだろう。

少し足止めになれば問題ない。

こうして、本日3度目の魔物進呈(ギフト)をかまし、ハイドラットは地上を目指して進んだ。

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