ep 60 Against The Clock⑤
現在過去のepを加筆修正中です。
ep 4 まで進んでいますが、その後も修正予定です。
完成次第報告いたします。
追記:2026年5月4日の更新ができなくなりました。
来週中には更新しますので、よろしくお願いします。
申し訳ありません。
私はメッセージが既読になるのを待たずに携帯をジーンズのポケットにしまった。
キャップを取り額を拭ってみたが汗はもう乾いていた。しかし濡れた服が風で冷やされて、夏であるにもかかわらず少しだけ寒さを感じる。私は自分の体を抱くようにさすった。
__そしてふと、送ったメッセージのことが頭に過った。
(…ちょっと待て。今私は”なんて送った”んだ?)
得体の知れない、だがとても悪いことは確かで、そんな感覚がゾワゾワと背中を伝う。瞬きができない。呼吸が荒くなるのがわかる。体が動かないが、抱いていた腕が力無く落ちたことは辛うじて自覚できた。
何分経ったか、はっと気を取り戻し、私はすぐさま携帯を取り出した。メッセージアプリを開き、町中に送ったメッセージを確認する。
『お疲れ様です。私は朝熊山の調査を終えたところです。ターゲットは確認できず。私は北に向かうので町中さんは一旦神宮に戻って彼の様子を見てきてください』
メッセージを何度か黙読して、私は息をゆっくり吐いた。これは間違いなく私が送った文章だ。どこにもおかしな点はない。
(だが…この違和感はなんだ…?)
私は暫くメッセージを見つめていたが、違和感の正体は掴めなかった。メッセージの内容自体は極々ありふれた報告と指示だ。やはりおかしな点はない。
一応町中からのメッセージも確認してみた。
『伊勢神宮の西から南へ移動しながら言葉を拾ってみたが、力を感じるものはなかった。君は今東にいるのか?』
これも私のメッセージと同様の類の、ただの報告だ。私が目を通したもので間違いない…と思う。…形容し難い不安が思考の邪魔をする。
__気になる。
どうしても気になる。何故私は自分のメッセージに疑問を抱いた?先ほどの感覚は何だ?この問題を放っておくことは私の魔法使いとしての危機察知能力が許さない。私は頭をフル回転させて自分のありとあらゆる行動、そして取り巻く状況を整理した。
そして、今まで気にも留めていなかったある事実が浮かんだ。
(私は…町中さんについて殆ど知らないな)
私が知っているのは町中が師匠の友人であること__ただそれだけだ。出会った時何故神宮にいたのかも、私の仕事に協力する理由も、何も知らない。いや__。
(町中さんは儀式について知っていた…!)
町中は『この聖域で行われた儀式』と確かに言っていた。あの時は敵ではないという確信を得たことで小さな引っ掛かりをすっかり忘れていたが、異変を感じた今、たとえ小さな引っ掛かりだとしても致命的になり得る。
町中は言霊使いだ。場に残された言葉の記憶を読むことができる。だがその場にいないと言葉の記憶は読めないはずだ。ならばなぜ神宮まで辿り着いた?偶然か?__いや、偶然とは考えにくい。町中は自宅警備員だ。持ち場から離れるとしたら主人に命じられるくらいしかない。
(主人に命じられた…か?)
そうだとしても主人はどこで儀式の情報を得た?…それを考えるには情報が足りない。町中の言動に思考を絞ろう。
町中はああだこうだ言いつつも私に協力的だ。しかし私が誘ったにしても、町中が協力する流れがスムーズすぎた気がする。それに何のために”儀式”について調べようとしていたのかも判然としない。語ろうともしない。町中とのやりとりを振り返ってみても、町中なら語ってくれそうではある。ならば語ってくれない理由は…。
ふと神宮に残してきた彼のことを思い出した。彼は話したくても話せない状況だった。
(町中さんも語りたくても語れなかった…のだとしたら?)
あり得る。だが神宮に残してきた彼と決定的に違うのは、初めから私を攻撃するつもりがなかった点だ。神宮の彼とは違い、人質をとられているわけではなさそうだ。敵に操られているわけでもなく、それでも語れない理由は__。
ひとつの仮説が浮かぶ。
(町中さんは語るだけの知識を持ち合わせていなかった…)
それならば説明がつく。パズルのピースがひとつ嵌まるのがわかった。
気になるのは私に”儀式”という的を射たようなワードを口にしたことだ。”儀式”が行われた事実を知っていながら、その実情を知らずに話しかけてきた理由__。
(調べていたのは”儀式”のことではなく、”儀式”について調べていたこの”周防楓”のことなんじゃないか…?)
いったい町中は何なんだ。
…敵か?
読んでくださりありがとうございます。
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