場律
春は自室の机に伏して考えていた。父には答えを貰ったのだがそれはあまりにも微微たるもので春が納得できるようなものではなかった。納得できるどころか興味が増してしまった、おあずけをくらった子供のように興味は、好奇心は膨れていく。春は考える、革命軍についてもっと知りたい。そのためには見聞を広める必要がある、でも外には出られない。どうすればいいんだろうか、さっきまで考えたけど特に結論は出なかった。
「うーん...」
春は特に理由もなく椅子を回す。視界が廻って周りの場景が目に入る。整理されていて特別散らかっているわけではなく、目を惹かれるものも特にない。散らかっていても何も感じない。本でも読もうか、その辺の本を手に取る。美しい筆記体の英単語が目に入る。あ、これ文先生の本だ。ん?文先生?春の頭に文の名前が浮かぶ、お父さんは警察、法に関わる側からの話を聞いた。警察組織にはもっとこれに関する沢山のデータや真実があるだろうがお父さんの知っていることはあれだけ、これ以上聞いても無駄だろう。でもこの人は法に関わってはいない職業、小説家。取材という名目でもしかしたら革命軍の人間と関わっているかもしれない。そう信じたい、確かこの人連絡先この本に書いてた、春は本の後ろを見る。連絡先、通信魔法の...番号?アルファベットと数字を組み合わせた十二文字の文がある。確かここにはLIEと書かれていたはず。
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「何に使うんだろうこれ」
春は文字に触れる。文字が一瞬青白く光って消えた。それに対して反応する間もなく次の変化が現れる。
Just one moment... Now Connecting.
「ん?文字が変わった?」
少し待って下さい、今接続しています。誰に?文先生だといいけど。
Conneting is success!
「はい、何かな?」
文先生が出る。正確には文先生の文字が出る。チャットのようなものだろうか、本の下に青いキーボードが現れる。
「文先生、私です」
「君は確か、あの時最後にサインした子だね」
「はい、一つ聞きたいことがありまして...」
「先生」
革命軍...ご存知ですか?
しばしの沈黙、
「すまない、君と直に会って話したい」
「でも...抜け出せそうに...」
「任せておけ」
通信が切れた、何とかするとは一体...?
「春...大丈夫かな」
統は椅子に座っていた。そろそろ冬が起きてくる、交代の時間だ。春はここ最近何かに襲われ続けている、大会の時といい、電車、刑務所といい何かにつけて。にしても何故春は大会に参加しようなどと言ったのだろうか、個人的には嬉しいのだがそんなことを言い出す子だっただろうか。ウタカタに行って何があるのだろうか、夏目に会いに行こうとしたのか?それでも何で大会なんかに...春、やっぱり君は
「ん?何だ?」
電話が鳴る、統は電話に出る。向こう側からは聞き慣れた声が聞こえる。上司だ、真藤鷹好。一応理由は伝えているが怒っているかもしれない。
「鏡崎君、すまないねこんな非常事態に、用事だ」
「無断...欠勤に数えてるんですよね」
「ハハ...君には敵わないな。安心したまえ、君のような優秀な人材は首を切らない。今回はそんなんじゃない」
「どのような要件でしょうか」
「何というかその...捜査とか”鼠狩り”とかそんなんじゃないけど...かなり特殊なタイプでな...俺も初めてだ」
「要件は何でしょうか」
「ああ済まない。取材だ、取材。君に取材の依頼が舞い込んでるんだ」
「取材...誰からでしょうか」
「宙某文とかいう最近巷を賑わせている小説家からだ」
「お断りします」
統は電話を切った。
「あの~すいませーん」
間抜けな声が聞こえる。統は外を見る。スーツを着た男が立っていた。扉を少しだけ開ける。少し体が小さい、小柄な男性だ。
「どちら様でしょうか」
「え、あれ?伝わってないんですか?」
統は冷たく尋ね、文は驚いた様子で喋る。
「あ、文です。宙某文。上司さんから聞いてませんか?あの取材の依頼の...」
文がおどおどとして言う。統は文をまっすぐと見据える。
「お引き取り下さい」
統は冷たく言い放ち、扉を素早く閉めた。
だが、扉が閉まらない。扉の隙間に文が左足を差し込んでドアの動きを阻害していた。
「ま...待って下さいよ...」
少し顔をしかめた顔をした文が言う。統は扉にかける力を変えずに文を見る。
「実は取材だけをするために来たんじゃないんです、お話をしに来たんです」




