"目覚め"
目覚めを決めるのは”先生”である
「意識が戻る見込みはあるのか?」
瀬登が病室で医者に尋ねる。無機質な灰色の壁の隣に獄長は眠っている。瀬登が確認しに行ったときに見たのは血塗れで横たわっている獄長。急いで医務室に運んだが意識が戻らない、獄長、千道漸丞は今も眠ったままだ。説教もありがたい教えも今は聞けない。
「外傷や内臓へのダメージはほとんど回復したのですが...どうやら呪詛魔法。それもたちの悪いものでして、解除ができないんです」
「ここ以外の医者とかには聞いたのか?」
「ええ、ですがどれも不可能と...」
「そうか、すまない」
瀬登は小さな声で言った。ヤブ医者という言葉が口から出そうになるが堪えた。瀬登は病室を出ることにした、今日はこれ以上弱弱しい獄長を見たくない。ドアを開け、足を外に踏み出す。医者がこちらを向く。
「獄長にかかってる魔法の件なのですが、一切前例のないものでして...何か心当たりのようなものはありますか」
「俺じゃなく獄長に聞け、そんなの」
「そうですか、呼び止めてすいませんでした」
「いやいや、どうせ今日はずっとここに居るから」
「お父さん、はぐらかさないで質問に答えて」
「春、忙しいんだ後にしなさい」
何度尋ねても統は話をはぐらかす。答えてくれない、瀬登はあの時「鏡崎さん」と言った、私の事を心配していたとも考えられるけどあの人を煽るような口調は私に向けられたものじゃないだろう。春の心に怒りが浮かんでくる。何故この人はこんなにも私の事を守ろうとするのだろうか、それも過剰に。
「答えろ!統!」
春はいつの間にか統の胸倉を掴んでいた。喉に食ってかからんとする獣のように。統は哀しい目をしていた、その眼がその目が本当に気に入らない。
「春...離してくれないか」
春は手を離す。統は
「最初に言っておくけど俺もあまり知らないんだ、春が中三の時に聞かされた。夏目が革命軍側の人間だってことを」
「そもそも革命軍って一体何なの?」
「簡単に言うと
カルト集団、歪んだこの世界を変えたいらしい。でもそれ以上は分からない。分かるのは一部の幹部連中くらい、夏目も幹部らしい」
「分かった、その...荒っぽいことしてごめん」
「いや、いいんだ。多分春が聞かないと俺は一生言わなかったと思うから」
「そろそろ冬が返ってくるね、春」
「たまには一緒にご飯を作らないか?」
「うん...」
「ん...?」
灰色の壁に囲まれた場所で新沢は目覚めた。あの時、玲さんが現れて...それで...そこで意識が途絶えて、新沢は上体を起こす。辺りを見回すが一切見覚えが無い。向こう側で白衣の男性が何かを書いていた。両腕と上半身に管のようなものが繋がっている。そこから何かよく分からない緑色の液体が身体に注入されている。
「目が覚めましたか」
医者が話しかける、何かを書きながら。
「体は動かせそうですか?」
「なんとか...ね」
新沢はベッドから降りる。少しストレッチをして、体の感覚を確認する。全然大丈夫そうだ。
「あ、玻璃川って人から渡せって言われてたお手紙が...失礼」
医者は肩から触手のようなものを出し、それに手紙を持たせて新沢の元に運ぶ。新沢は受け取る。触手はするすると戻っていく。新沢は手紙を開く、そこには自分の望むものが書かれていた。
単位と闘ってきます




