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分岐点

「春、しばらく家に居なさい。俺も居るから」

朝起きると、統が居て、告げられた。眼の下には深いクマが出来ていた。寝ずに見ててくれたことはすぐにわかった、春は外に出る気にはなれなかった。まだ冬休みは続いていて、学校もない。行くイベントもなくずっと家に居るつもりだった。

「うん」

春は頷いて、布団の中に入った。



「こいつを何処か別の場所に移さなきゃいけないな...」

玲は呟く。

「ああ、しかし...」

「まだ奴らに力が残っていたとは...」

医者、白海黒汰(しらうみくろた)は言った。



「冬、許可はとれたか?」

統は冬に電話をかけていた、春はその内容を耳に入れることなく布団の中で本を読んでいた。文字の世界に入る。私に訪れる平穏、本を読んでいるとき私は独立し、何にも束縛されない。翡翠のせいで嫌な思い出を思い出してしまった。それから逃れたい。

「ん?ああ、すまんな」

「春、出るぞ」

統が春の布団をめくり上げる、冷たい風が春を襲う。春は統を見上げる。

「ここより安全なところだ」

春は立ち上がってついて行く、そして外に出た。見慣れない高級車が停めてあった、統がいつも乗っている車ではなく、スポーツカーのようなもの。その中に見慣れない男性が座っている。白スーツに少し老けた顔。

「準備は出来たか?お二人さん」

昔生ける災厄として討伐指令が下された男、崩災寺時雨。その人物が今車の運転席に座っている。春は車に乗った。統はその隣に座る。

「行先はアンノウンだな」

時雨は呟いて車を発進させた。アンノウン...知らないな...。でも、英単語としての意味は知っている。春は流れていく街の風景をぼんやりと見つめながらそんなことを思った。何だか疲れちゃったな、音が視覚が遠くなっていった。そして眠った。


「着いたぞ」

時雨が車を止める。春は目を覚ました。今居るのは地下駐車場のようなところ、周りには高級車やワゴン車、軽トラなどが停まっている。入口も警備員が入るようなものしかない。見た人も入口に居た警備員だけだ。時雨は車を発進させる。そのうち最下層にたどり着く、目の前になぜか立体駐車場が見えてきた。空間魔法で繋げられたのだろうか。その中に入る、車がガッチリと固定され、そのまま移動させられる。それが何度も続いた。立体駐車場の幻想的なブルーな光が春の顔を照らした。ブルーの光が途切れ、薄暗い灰色の道路が見える。車が発進する、目の前には大量の人間たちが銃を構えて待っていた。全員の体が重たそうなアーマーを纏っている、その真ん中に白髪の老人が一人、立っている。目力が強く、圧倒されそうな雰囲気を持っている。老人の目が鋭くなる。威圧感がびりびりと伝わってくる。統は車から降り、警察手帳を取り出す。老人はそれを見て無言で後ろを向いた、威圧感が嘘のようになくなる。

「ふむ...よく来たな、大丈夫だ銃を降ろせ」

老人が小さな声で言った、兵士たちは銃を降ろした。

「春、降りろ」

言われて春は車から降りた。そして統に付いて行く。

「崩災寺、お前はさっさと帰れ」

老人は言った、崩災寺は車をバックさせて立体駐車場に入って消えていった。エンジン音が反響した。


「確かにここは世界で一、二を争うほど安全な場所だ。だがここがどういう場所か理解しているのか?」

老人が階段を下りながら話す、春と統はそれに付いて行く。兵士達の数がどんどん増えていく、ここは何なのだろうか。

「いえ、分かりません」

「正直でよろしい、ただ分からないと決めつけ何も考えないということは感心せんな。重要なのはそこから考えることだ」

春は言われて考えてみた、こんなに重装備の人間が大量にいる場所。国の重要な施設だろう。重装備であることが前提で隠された入り口...春は考える。考えているうちに通路の端が見える。エレベーターがあり、二人の重装備の人間が敬礼していた。こんなに装備が濃い場所、まさか

「刑務所?」

春は躊躇いがちに言った。背を向けた老人の表情は見えない。

「正解だ」

老人はそう言った、そして開いたエレベーターに入った。二人も後に続いた。


「この少女が申した通り、ここは刑務所、それも魔法犯罪を取り締まるものだ」

「魔法が普及し始めたとされる、2016年。もうすでにその時から魔法は犯罪の温床となっていた」

「当初は大混乱、魔力が入ってきたせいで治安は一気に悪くなった。おまけに刑務所に入れてもすぐ檻を壊して出てくる」

「それを見かねた”上”が作ったのが今の政治、法律、倫理のシステムだ。ここは極秘裏に最初に作られた魔法犯罪者更生施設、まあ小難しい名前だが結局のところ刑務所だ。その後、今の魔法警察、英霊隊、蓮千亭が作られていった。治安はそれらによってまた落ち着きを取り戻した」

「ここは”上”以外誰にも認知されずに作られた、だからアンノウンってあだ名がついてる」

エレベータが開く、廊下が見える。刑務所の名の通り牢屋がある。牢屋の中には囚人が居た。外を見ていたり、寝ていたりとしていて脱獄しようとする者は居なかった。春達はそんな牢屋を通り過ぎた。

「ここに寝泊まりしてくれ」

老人は牢獄を指さした。え?春は目が点になる、指さされた先は牢獄だ。冷たく無機質なしかも何か先住民の方いらっしゃるし。先住民の方の老人は横になって眠っていた。

「ん?分からないという顔をしているな。そもそも刑務所に人を匿うというのがおかしな話だ。まあ、居心地は悪くないと思うぞ、もしどうしてもというのなら”VIPルーム”に泊まってもらってもいいぞ」

「ただし、異常者共が巣食う魔境だがな、さっさと入れ」

春はおとなしく牢屋に入った。先住民の方はまだ眠っていた。



「夢美、秀の容態はどうだ?」

「かなり安定した、あと数日で目覚めるでしょう」

「そうか、準備が出来たらアンノウンに転送しておけ」

投稿を忘れていました、申し訳ございません。

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