創世記の匂いはお好き?
それは懐かしくも儚く
「こっぴどくやられたな」
玲が背を向けて話す。新沢は何も答えられなかった、血が流れすぎたのか。やばそう、玲は思った。
「あんた強そうだな」
仮面男が喋る。
「まあな、で、どうする?」
玲も返す。
「俺としてはそれをこrrrrrrrrr」
「して」
「おきたい」
仮面男が襲いかかる。そして剣で斬りつけてくる。玲はしゃがんで眼鏡をかける動作と同時に回避する。仮面男は着地し、チーターのように四足歩行で素早く玲に近づく。すぐさま剣が振り下ろされる。
そこで仮面男は気付く。
「...?剣が動かない...」
玲の口元が歪む。体が動かな....
「名技 名古屋SHOT」
仮面男の胸に衝撃が襲いかかる。弾は見えていたが体が動かず回避できなかった。衝撃で体がぐらつくと同時に体が自由に動くようになる。こいつの魔法か、仮面男は体制を立て直す。
「水晶のワルツ」
地面から巨大な水晶の棘が突き出る、玲は走って回避する。範囲が広い、秀に当たるな。仕方ない。
「名機 8bitの宇宙船」
玲は立方体だけで形成された浪漫あふれる船のようなものに新沢を回収させる。怪我人は邪魔だ、
気を取られた、仮面男が迫ってくる。
「蒼星の慈愛」
仮面男に深い藍色の棘が生えてくる。玲は一足遅れてそちらを見る。まあ、気を取られたと思いたいだろうな小僧。あいにくずっとお前にしか意識を置いてないよ。
「名技...いや、いいか」
「慈愛 射出」
深い藍色の棘を飛ばしながら仮面男が跳びかかってくる。そして螺旋状に回る。玲はそれを無視してポケットから何か取り出す。ゲーム機だ。そしてそのままシューティングゲームを起動する。
「少しはまじめに戦ったらどうだ?」
仮面男が少し怒って玲に言う。玲は飛んでくる棘を最小限の障壁で止めるだけで一切攻撃しようとはしない。その障壁も棘の勢いに押されて亀裂が入っている。破られるのも時間の問題だろう。
「まじめ?俺はずっとまじめだぞ」
障壁が割れる。玲が棘を一気に放ち体当たりする。玲はサイドステップで避ける。ゲームはいつの間にかしまっていた。仮面男は玲の方を向く、
そして両手に藍の剣を纏う。
「そうか、すまない言葉を訂正しよう」
「糞真面目な大馬鹿者と」
仮面男が左手を振り上げる、その瞬間耳障りな音と共に新沢の真下に真紅の針山が形成される。玲の目が見開かれた。
「あの春って子そろそろ解放して」
「了解しました、ですがよろしいのですか?」
「ええ、もともとこういう算段だったから」
「な...ぜ...」
仮面男が苦悶の声を漏らす、両手の剣がパラパラと崩れ落ちる。意味が分からない。何故新沢に放った棘が自分に突き刺さっているのか、空間操作の魔法だろうがそんな魔力は感じ取れなかった。ならどうやって、こいつの魔法か?いやそんなそぶりは見られなかった。
「分かんないって顔してるな、夢美おいで」
横のドアが歪む、いや立方体になって崩れる。そして古ぼけた扉が出てくる。扉が開く、中から女性が出てきた。髪は白いが、靴、ケープマント、リボン、手袋全てが紅い。それを見た瞬間仮面男は納得した。こいつまさか、ずっと
「ずっと夢美の魔力を隠していた、もしもの時に必要になると思ってな」
玲は言った。その表情は真剣そのものだった。夢美と呼ばれた女性は少し笑っていた。
「ふん...お前やっぱり大馬鹿者だな」
仮面男は返した。そして
「これからは瀕死の敵にも油断しないようにしろ」
仮面男がそう言い、右手で床を二回叩く。その音は弱弱しく、音が出たのか不思議なところだった。その瞬間煙幕がはられる、二人はすぐに魔法の準備をする。そのすぐ後に何かが入ってくる。二人はそれを感知する、煙幕が晴れる。辺りには何も居なくなっていた。攻撃を放つ前に消えた、相当の実力者だろう。二人は思う。
「逃げられたか」
「秀を回収して帰りましょう」
夢美はそう言い新沢の方に歩き始めた。新沢は血塗れだが生きている。玲もそちらの方に歩いていく。その足取りは疲労からか重いものだった。夢美が新沢を背負う、玲はそれに付いていく。これから何をしようか、玲はのんきに思った。蒼い月が空に輝いていた。




