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冬休み Ⅱ

ありふれた?日常

「なかなかだったよ」

冬はそう言い、家に入った。二人は疲れ果てた、食後の運動に付き合わされるとは。新沢はどこかに去っていった。春は一息つく。風が吹いて運動した後の汗に心地よく当たる。

「見つけましたよ」

有栖が後ろに居た。何故か一瞬顔が強張った気がした。怒ってるのかな?待ち合わせすっぽかしていたんだ、有栖さんは怒りやすい人?いや、そんな人には見えない...、でもとりあえず悪いことをしたのは事実、

「あ、ごめんなさい」

「さっさと行って終わらせますよ」

有栖は背を向けて言った。



「次はそこの家です」

有栖に言われて煙突の中にプレゼントを入れる。本物の煙突ではなく魔法の煙突に。春は鏡の上に座って移動する。そして有栖が魔法でサポートをする。ほとんどの家には警備魔法がかかっている。一応クリスマスということで少し弱まってはいるが最低限の機能は維持されている。そんな中に入れば警報が鳴り響いて近隣の方々の迷惑になってしまう。そこで魔法を一時的に止めることができる人物が要る。その役目を果たすのが有栖だ。今も有栖は魔法を唱えている。魔法が普及して今はとても便利になっている。環境問題もある程度解決してきた。それに、こういう洒落たこともできる。

「できましたよ!入れてきてください!」

有栖が小さな声で言った。私はそれを聞いてまた家の天井に登り、煙突にプレゼントを入れた。冷たい風が頬を撫でる。少し寒いな...



「次の家で最後ですね...」

有栖がぼそりと呟く。

「有栖さん、変な冗談は止めて下さいよ」

私は返した、その理由は目の前の建物についてだ。ファンシーな郵便受けに筆記体のアルファベットで書かれた表札、そして二階の窓が開けっ放しになっている。これは私の家だ。子供なんて私と行方不明の兄さんしか居ない。兄も私もサンタのプレゼントを貰う年齢じゃない。あの家でそんな幼い子供なんて居たっけ?私は疑問に思う、その様子を見て有栖が口を開く。口から出てきた言葉は私の疑問に対する答えだった。

「渡す人は、貴女の母上さんですよ」

「へ?」

戸惑いが漏れた。



「ただいま、おっさん」

「おかえり、クソガキ」

新沢はソファーに座る。ソファーの後ろで先程「ただいま」を返した人間が寝そべってゲームをしていた。男の周りにゲームのカセットが綺麗に積み上げられていて、箱が乱雑に置かれている。ゲーム画面を見ると最近買ったシューティングゲームをしていた。顔が真剣になっているあたり今は大事な場面なのだろう。主人公機がせわしなく動き回っている、インベーダーゲームのようだった。

「今日は何処行ってた?」

男、(れい)が尋ねてくる。ゲーム機は閉じられていて、ゲーム機が置かれている辺りをゲーム機の青いランプが照らしていた。眼の下にクマができている、この人徹夜したな。

「まぁ...’友達’の家で遊んでただけ」

新沢はそっけなく答えて自分の部屋に戻った。バタンとドアの音が寂しく響いた。

「てか、飯だからさっさとでてこいよ」

ドアが素早く開いた。

「食いしん坊小僧」

「ゲーム馬鹿」

いつもの問答をして食卓につく。だが机の上にはコンビニ弁当が置かれていた。今日は手作り料理の日のはずだが...

「おっさん、今日はおばさんの料理の日じゃないの?」

「ん?ああ、今日は忙しくて帰れないから食っとけだと、あとおばさん言うな。俺の嫁はまだまだ若いぞ」

「へー」



「有栖さん、確かに母はちょっと子供っぽいし見た目もかなり若いけど...それでも実年齢はそこそこいってますからね?」

春は有栖に言った。だが、有栖は双眼鏡で家を見ていて聞いていないようであった。呼吸の数が少なくなっている、集中しているのだろう。何を集中する要素があるのやら。有栖の眉がピクリと動いた。私はそれを見逃さなかった。

「どうしたんですか?」

「いや、何でもないです(あの人寝るとき服着ないのかな...?何で冬場に下着で寝てるんだろ)」

「変なこと考えたりしてないでしょうね」

「いいえ、全然。さっさと行ってさっさと終わらせて下さいね、サンタの服は明日貰うんで今日はこの辺で、お疲れ様でした」

有栖はそう言って歩いて去っていった。春は家に向かって歩き出した。そして家のドアを開け、中に入る。やはり暖房の効果が切れていて冷たい。お父さんは出張で今家に居ない。そーっと母の部屋の扉を開ける。お母さんは寝相が悪い上にすぐ起きる。少しだけ扉の軋む音がしたがそんなことは気にしない。そして冬にそっと近寄る。冬は布団を跳ね飛ばして下着姿で眠っていた。寝相の形は見事な大の字になっていて、豊満な胸がさらに強調されていた。それも呼吸のリズムに合わせて上下...いや躍動していた。自分の胸に眼をやる、小さい...少し羨ましい。遺伝子は同じだし、でかくなると思うよ。うん。はあ、何考えてんだろ私。とりあえず枕元にプレゼントを置く。

「おやすみ、お母さん」

春は小さく呟いて冬の部屋を出る。

「うにゃぁ...おやすみ...明日のご飯何かな~」

冬が無邪気な寝言を言った。春は立ち止まってそれを聞く、そして振り返る。本当に寝言のようだ。寝室に入る。お母さん可愛いなあ、春は少し微笑んだ。カーテンが風に吹かれてなびいていた。そこから寒風が入ってきている。寒いなぁ、窓を閉めてカーテンも閉めておく。ベッドの上に座る、とりあえず疲れた。かなりの家を回った。最近激しい運動してなかったからなぁ...。夜も遅いし寝よう。明日は魔法について調べよう、そう思い胸を見る。お母さんと比較すると小さい。周りの人よりも小さいし...、大きくしたい。でもやり方が分からない。いやいやいや、何を考えてるんだ私は。さっさと寝よう。でも、

「ものは試し...よね」

お母さんみたいに下着姿で寝てみよう、もしかしたら服が胸を圧迫することによって健全なる胸の発育が妨害されているのかもしれない。確証は無いが。春は服を脱いだ、ちょっと可愛い縞模様の下着が目に入る、うぅ寒い。春は布団を抱きしめる、服を着てないので布団のぬくもりが直に肌に伝わってくる。その感触が心地よい。そしてそのままベッドの上で眠った。そとでは美しい三日月が輝いていた。

冬の胸の大きさはご想像にお任せします。冬休み編はまだ続きます

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