冬休みⅠ
日々に戻って
「子供に配るんですけど、姿を絶対に子供に見られちゃ駄目ですよ」
有栖はそう言った。春は頷いた、そして通信を切る。旧世代では携帯電話
というものを使っていたらしいが今は魔法で事足りる。旧世代の西暦2019
年に起こった隕石衝突事件。大きさは月と同じくらいのものが。人類は滅亡すると誰もが確信した。だが、一人
の青年が不思議な力を使い隕石を消滅させたのだ。それから魔法を使える者が生まれ始めた。
そして今だ。春はサンタの服を見ようとする、だが...
「お~す~、ただいまだよ~」
冬が声を上げる、春はすぐに下に行った、冬は椅子に座っていた。両手に箸を握って机を叩いていた、春を急かして
いるようであった。春はエプロンをつけて料理を始める。冬はニヤニヤ笑いながら本を机の上に出した。それは小学
二年生相当の漢字ドリルだ。なぜ冬がこれを出したかと言うと冬は一般教育を受けていないからである、冬は全帝国
中央天霊学院、今のウタカタで学んでいた。教科書は無い、講義に次ぐ講義、そして実技ただそれだけしか無い。そ
れ故冬は漢字が読めない。統曰く、出会ったときは漢字は数えられる程しか知らず、ひらがなも危うかったらしい。
春は料理にある程度の見切りをつけて冬のドリルを見た、字が汚い、メソポタミア文明のくさび型文字を彷彿とさせ
る文字である。冬はニコニコしながら春とドリルを見ていた。まるで子供だ、
「お母さん...字の練習しようね」
春は採点を終えて言う、冬の笑みが少し止んだが、また笑みが浮かんだ。冬はドリルを見る、100点中78点。冬はバンザイをして
やった、やったと喜びながら走り回る。そして通信魔法をつける、かけた先は統だ。だが、すぐに通話が切れる。統に限らず多く
の社会人や学生は通信魔法がかからないようにジャミングを張っている、勉強中や勤務中などにかかってくると集中が切れるから
ただ単に鬱陶しいなど理由はさまざまだ、だがうちの母は...
「すーべん!ハンバーガー買ってきて!」
そう、ジャミングを無効化するのである。通話の向こう側の父の、はいはいという声が聞こえた。冬は通話を切る。春は料理を始
めた、冬は目を輝かせながらフライパンを見ていた。まったくどっちが親か分からない。まあこういうのが親子なのかな、春は思った。
「こんちゃーす」
間抜けな声が聞こえた、この声は...最悪...あいつだ。あいつとは...そう...新沢である。新沢が入ってくる。そして春のエプロン
姿を見てニヤリと笑った。何しに来たんだこいつは、春は考えるが直ぐに結論が出た。飯たかりに来やがったな、春は悟った。ま、
いいわ百足のときの借りもあるし。あの時有栖さんが倒した百足の死骸は一瞬で消え失せた。本当に一瞬だった、約4秒といった
っところか。負傷したクラスメイトは先生や医務班の尽力のかいあって全員軽傷程度で済んだ。魔法の進歩はすごいものだ。
春はそう思った、料理もいい感じにできた。春は机の上の皿に料理を盛り付ける。そして椅子に座った今日の料理はオムレツ、冬曰く、卵がわっしょい
らしい。冬は机の上のお茶を注ぎ始める、水が勢いよくコップに流れる。注いだのは春のコップと新沢のコップである。自分のコップ
は――――――ああ、前買ったオレンジジュースか。冬はそれを勢いよくコップに入れる。ジュースは滝のようにコップに流れる。前
地理の授業で習ったナイアガラの滝のようであった。そしてコップの淵ぎりぎりで止める。冬はニヤリと笑う。オレンジジュースは少し
こぼれていた。冬は見逃さずにそれを舐めとった。コップの水滴に冬の涎が混ざった。新沢はオムレツをフォークでつついていた。オムレツはぷるぷるである。
その感触が気に入ったのか新沢はずっとつっつき回していた。
「母さん、太るよ」
春は冷たく言う。冬は慌てた様子を見せたがすぐに平静を装う。あ、気にしてんのか悪いことしたな。
「運動するもん!あ、そうだ二人ともこの後私と闘ってみる?二人とも強くなりたそうな眼してるし」
冬はそう言う、そういえばお母さんの魔法一度も見たことないな。魔法の基礎を教えてくれたのはお父さんだ。お母さんは何も口出ししなかった。春は誘いに乗った、新沢ものること
にした。それに二人とも強くなりたがっていた、春は父の悲しい顔を見ないようにしたい、新沢は...
なんでだろ。ともかく二人は頷いた。
「んじゃ食べたら公園きてね、んじゃいただきまーす」
冬はそう言って食べ始めた。二人も食べた、有機質なフォークの音が部屋に響いて消える。それは何度か繰り返された。
「来たかね、若者たち」
冬は家の裏の公園で言う、公園は人がほとんど通らないため音は冬の声しかない。春は体操着を着ている、新沢は普段着のままである。だが冬は―――――なぜかメイド服を着ている。
フリルがひらひらと風に舞う、おまけに胸のところにハート型の穴が空いていて谷間が強調されている。新沢はずっと谷間を見ていた。冬はポカンとしていた。口がぱかりと空いている。ちらりと春を見た。
春のぺったんこな胸が目に入る。新沢はそれを見て即座に視線を冬に戻した。貧乳で悪かったな、春は心の中で毒づいた。冬は次の瞬間恐ろしい速度で動き、公園の砂場に立った。
「こざかしいルールは一切なし!私はあんたら殺さないから、安心しなさい!終わるとき終わるから」
冬はそう言い魔力をためる、魔力が冬にまとわりつく。スカートが風に舞う、二人は戦闘態勢をとる。木の葉が風に舞い吹き飛んでいく。
久しぶりの更新です、結構雑




