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新武将・芋粥秀政  作者: 得生
第三章 城代編(足軽大将格)

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第四十三話 戦場の獣

芋粥本隊。


馬上の秀政の傍には徒歩かちの村瀬が、

そして大声足軽の与太が控えている。


芋粥本隊の四百に比べて、

伊勢衆は千である。


野戦で倍以上の敵と正面からぶつかる。


「村瀬、頼むぞ。

 俺の命はお前に懸かっている」


「お任せあれ」


「与太、お前には使いどころがある。

 死なぬようについてこい。

 成功すれば、敵を討たなくても、

 褒美をやる。」


「へい!」


秀政は安物のなまくら打ち刀を抜いた。


「芋粥隊、首は要らんからな、

 斬って走り抜けよ!」


なまくら刀を勢いよく振りかざした。


「突撃ぃ!!」


足軽たちが勢いよく駆け出した。

それに合わせて敵兵も走り出す。


だが、勢いそのものが違った。

士気の高い元気な芋粥隊は、

緩慢な動きの伊勢衆に襲いかかった。


「二十二の伍、梅太郎!」


「十三の伍、弥次郎!」


各所で敵兵を討ち取った者の、

名乗りが上がる。


弥平がその度に目を凝らし、

本当に討ち取った場合は、

右手を上げる。


それを合図に市助が、

帳票に伍番と名前を記録した。


梅太郎や弥次郎は、すぐに次の敵に襲いかかった。

討ち取った首を無視して……。


首取り中の油断を突こうとした敵兵は、

首を無視して襲い掛かる芋粥兵に驚きながらも

討たれる。


「二十二の伍、梅太郎!」


このように、芋粥隊は首を取らずに、

片っ端から敵を切り捨てて、走り抜けた。


士気と疲れに大きな差がある伊勢衆は、

なすすべなく斬り伏せられていく。


兵差を活かして取り囲もうにも、

動き回る芋粥隊に、

対処ができない。


斬った首は捨て置けばよい。

弱った敵を斬れば斬るだけ、

褒美に繋がる。


芋粥隊は、まさに狂戦士と化した。


伊勢衆は恐れから一歩が踏み出せない。

そうして斬られていく。


芋粥隊は秀政を中心にして、

駆け抜けた。


まるで小魚の群れを、

喰い進む大魚のように、

敵の中心を突っ切って、

一人の犠牲も出すことなく、

背後まで抜けきっていた。


伊勢衆は既に百は討ち取られている。


秀政は与太に命じた。


「与太、こう叫べ。

 『大手勢は敵本隊を放っておいて、

  まずは左翼の百を討ち取れ!』

 とな」


与太は意味が分からなかったが、

自慢の喉で戦場に轟くほどの声を発した。


「大手勢は本隊を放っておいて、

 まずは左翼の百を討ち取れ!」


それを聞いた大手勢九百は、

疲れに加えて、

芋粥隊の勢いに混乱しており、

まともな判断が出来なくなっていた。


背後に秀政の四百がいるにも関わらず、

あろうことか、

我先にと芋粥隊左翼に向けて走り出した。


敵将が何やら叫ぶが一度動き出した兵は

歯止めがすぐには効かない。


間髪入れずに秀政が叫ぶ。


「芋粥隊、敵の背後を突け!

 斬りまくれ!」


回頭した芋粥本隊は、こちらに背を向けた

伊勢衆に向けて突撃を開始した。


まさに敗走する敵を斬るが如く。


兵力が倍の敵兵が、背中から寡兵に斬られる構図。


被害は大きく広がった。


敵将たちによって、

ようやく収拾がついた頃には、

この突撃で二百ほどの伊勢衆が、

さらに討たれていた。


「よし、与太、次はこう叫べ!

 『敵総大将、

  千草三郎左衛門、

  討ち取ったりぃ!!』」


与太は胸いっぱいに、

空気を吸い込むと

戦場に響き渡る声で叫んだ。


「敵総大将、

 千草三郎左衛門、

 討ち取ったりぃ!!」


あからさまに伊勢衆が浮足立つ。


この隙に芋粥隊が、伊勢衆に襲いかかった。


もはや、「混乱」という言葉では

説明できないほど、敵は乱れていた。


さらに伊勢衆の被害が増える。


だが、伊勢衆からも旗が掲げられて、

大声が発せられた。


「落ち着けぇ!!

 千種三郎左衛門、

 ここにありぃ!

 健在なるぞ!」


にやりと笑った秀政が、その方向に刀を突きつけた


「敵総大将はあそこじゃ!

 討ち取った者には

 五貫文の美濃刀を褒美にくれてやるぞ!」


芋粥隊が千種三郎左衛門の旗のもとに

獣のような勢いで突撃していった。


秀政がにやりと笑った。


「総大将を討ち取るのも、

 時間の問題じゃな。」


そんな時に敵の一団が、

秀政に向けて駆けつけてきた。


羽津衆田原弥五郎の部隊だ。


「おのれ!

 これ以上好き勝手させんぞ!」


「あの派手な鎧が総大将じゃあ!」


口々に叫びながら敵兵が走り寄る。


(くっ!来たか!?)


「いや、待て!

 あやつは影武者の百姓じゃあ!

 どこぞに大将がまぎれておるぞ!」


敵兵の一人が叫んだ。


(霧隼の噂が効いてる!?)


間髪いれずに村瀬が叫んだ。


「はーはっは!

 よくぞ見抜いたな、雑兵ども!

 わしこそが、

 総大将 芋粥備前守秀政じゃあ!」


(村瀬……ナイスタイミングだが……。

 備前守?!

 勝手に格付けアップか!?)


「遠からん者もよぉ聞け!

 秀政に挑まんとするものあらば、

 この関孫六兼元の刀の錆にしてくれん!」


村瀬がそこまで叫んで、兼元を宙にかざした。


「おぉ!あれこそは孫六兼元!

 奴が総大将じゃあ!」


勢いよく襲い掛かる敵兵を、

村瀬は軽くかわして、剣先で頸動脈を斬り裂いた。


その後も、敵兵を最少動作で、

腋、目、首――

鎧の隙間をついて、斬り裂いていく。


その剣先は、まるで見えなかった。


瞬く間に五人が討ち取られた。


恐れをなした敵兵に、なおも踏み込み、切り裂いていく。


「鬼神じゃぁ、鬼神がおるぞ!!」


羽津衆が逃げ腰になった。


「どうじゃ!

 芋粥の名、“鬼備前”として、

 しかと心に刻め!」


最後に村瀬が大声で、

戦場全体に聞こえるほどの啖呵を切った。


「織田の芋粥鬼備前……

 こやつは鬼神じゃあ!!」


羽津衆が叫びながら逃げ出した。


(おいおい、村瀬。

 調子に乗りすぎだ。


 俺は武力低い系だぞ。

 鬼備前はやめてくれ……。


 俺は“謀玄”なんだ。

 風評被害だ。


 武力三十台の鬼って……

 列伝がシュールすぎるだろうが!)


そんな時に遠くで大声があがる。


「敵総大将、千草殿、

 十二の伍の勘八郎が討ち取ったぁ!!」


(おぉ?

 まじでやりやがった。

 戦場では人は獣になるもんだな……)


「芋粥隊、勝鬨をあげよ!

 殲滅戦だ!!」


大声をあげた芋粥隊は、

凶暴さをこれまでにも増して

敵兵に襲いかかった。


実際には、今でもほぼ互角程度の兵力だ。


だが、もはや圧倒的勝者が、

弱者を蹂躙する構図が出来上がった。


「討て!討て!

 ここで伊勢衆を壊滅させよ!」


芋粥本隊の戦いはあっさりと片が付こうとしていた。


まさに、備え九分に、刃一分。


秀政の名を刻む戦場となった。


謀玄ではなく、猛将 鬼備前として。

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― 新着の感想 ―
未来でゲーム化したとかに困る設定じゃん 芋粥複数人説出るやつ
いつの間にか芋粥殿が新陰流を修めているとか、師匠は村瀬だとか噂が流れそうな予感……w そして噂を現実のものとするために芋粥殿は道場でしごかれ、その姿を見て門下生が増える。 つまり全て! 道場を盛り立て…
備前の将にこだわってるようだから、後世、宇喜多直家の事績と混同されるかも? 歴史小説でないので、主人公がイレギュラーとして、未来が分岐するかも… 例えば、小一郎秀長が登場する前に、金ヶ崎の殿戦で木下藤…
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