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新武将・芋粥秀政  作者: 得生
第三章 城代編(足軽大将格)

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第四十一話 豪胆者の夜

秀政は解散直前に、伍長たちに声をかけた。


「そうだ、大事なことを言い忘れる所だった」


伍長たちが再び真剣な眼差しで注目する。


「今より伍に戻って、

 先ほどの指示を伝えたら、

 今日は――


 もう寝ろ」


清隆を含め、伍長たちが目を丸くする。


「かがり火も必要最低限残して消せ。

 その方がよく眠れる。

 とはいえ、卯の刻には起こすぞ」


「よ、よろしいので?

 敵の目の前で……」


清隆が念のために確認した。


「あぁ、今夜は絶対に敵はこない。

 その理由も説明する。


 今夜丑三つ時以降、夜襲をすると

 敵には偽情報を流してある。


 地の利に詳しい敵は、事前に夜襲を

 察知しておれば、いくらでも待ち受けて

 有利に迎え撃てる。

 その状況で敢えて、わざわざ危険を

 冒して夜襲をかけると思うか?」


「な、なるほど……」


「それにかがり火を消せば、

 こちらが夜襲に動いたと考えるのが筋だ。

 いつ襲い来るか、

 気を張って待ち受けているだろう。


 かがり火を消して暗い陣内は、

 あちらからでは中が見えないだろう。

 こちらは高いびきをかいて、

 体を休めているとは知らずにな」


「ここで寝て休んだ我らと、一晩中、

 気を張りつめていた奴らとでは、

 明日の戦で大いに差がでますな」


「その通りだ。

 だから皆も安心して寝ろ。

 生涯無敗の俺が言うのだ。

 信じろ。

 ここで寝るくらい、豪胆でなければ

 芋粥の猛者を名乗れぬぞ」


「「は、はい」」


あまりに堂々とした秀政の態度に、

安心感を得た伍長たちは自分たちの

伍へ戻っていった。


「市助、

 明日、直接の戦をしないお前は、

 申し訳ないが、寝ずの番だ。

 敵の物見だけは始末せねばならん。

 常に警戒して、怪しい奴は斬れ」


「は!」


「それと寝過ごすわけにもいかん。

 卯の刻前に皆を叩き起こせ」


「承知しました」


そんな中、霧隼が戻って来た。


「霧隼、早かったな。

 向こうの様子はどうだ?」


「は、馬を飛ばしてまいりました。

 佐久間久六には、地図を渡し、

 滝川様からの情報として、

 伏兵の位置を伝えました。


 おそらく渡河を見送りそうです。


 あちらはあちらで、川を挟んで

 にらみ合うことになるでしょう。


 時間稼ぎにはなりそうです」


「上出来だ、休んでいいぞ」


「いえ、褒美を頂きました上は、

 もう少し働きまする。


 私は名無しの霧隼と呼ばれる

 人として存在しておらぬ者。

 褒美を頂いたのは初めてでござる」


「そうか?

 お前の働きは褒美に値するぞ」


「ならば、さらに褒美を頂けるよう

 もうひと働きします。


 この夜中、私は物見に化けて、

 敵に偽りの情報を流し続けます。


 一晩中、敵を右往左往させて

 体力すらも奪ってやります」


「それは助かる。

 それならば、もっと安心して眠れそうだ。

 明日の戦いが楽になるしな」


「お任せください。

 なお、敵勢の情報も入手しました。


 敵は烏合の衆ゆえ、

 隊名に符牒を使っているようです。


 本隊は“大手勢”、

 右翼渡河隊は“川手勢”です」



大手勢 一千兵

 総大将  千草三郎左衛門 三百

 羽津城  田原弥五郎   二百

 茂福城  南部新左衛門  百五十

 大矢知城 大矢知源太夫  百五十

 伊坂城  春日部小太郎  二百


川手勢 五百兵

 采女城  後藤采女正   二百

 小向城  小向六郎    百五十

 市場城  市場又兵衛   百五十


「でかした!霧隼。


 しかし、俺が当たる大手勢が千か。

 こちらの倍以上だな。

 囲まれないように動き続け、

 敵の疲れを突くしか手がない」


清隆も深く考えた後に静かに答えた。


「そうですな。

 ですが、勝てなくはない戦いです」


「左翼が当たる川手勢は五百。

 これくらいなら耐えられそうだ。


 清隆、お前に左翼を任せる。

 川手勢は任せるぞ」


「は!」


「では、行ってまいります」


秀政と清隆のやりとりを、

確認し終えた霧隼は、

再び闇に向かって走り出した。


「清隆、お前も今日は寝ておけ」


「その方が良さそうですな。


 通常ならば勝てぬ兵力差です。

 これも殿の策略があればこそ

 勝機が存在する……。


 ならば万全の状態で当たるのみ。


 では失礼いたす」


先ほどから黙って軍議を聞いていた、

村瀬の元へ向かう。


「村瀬、お前も寝ろ。

 いや、待て」


「ん?」


「これを与える。

 俺はなまくらで十分だ」


そういうと腰に差していた打ち刀を

村瀬に渡した。


村瀬が刀身を見て、あからさまに驚く。


「こ、これは……。

 独特な三本杉の刃文……

 関の孫六兼元ですか?!」


「そうだ。お悠が持たせてくれた贈答用の品だ。

 だが俺には不相応だ。

 お前が持てば、その刀は相当働くだろう」


「こ、これほどの名刀――

 使ったことがござらぬ」


「前にも言ったが、これで俺を守れ。

 俺は三貫文の軍用品で十分だ」


「は!殿には羽虫一匹近づけさせませぬ!」


「心強いな、よし俺は寝る!

 お前も寝ろ。明日は頼むぞ」


「は!」



遂に倍以上の敵との野戦が明日――

始まる


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― 新着の感想 ―
うわぁ、事実を勘違いさせるように言わせてるけどその信頼は言葉だけでなくて想定が的確なだけに当たると思うよ。これは
次は可哀想な伊勢側ストーリーかなあ。百姓さん逃げる相談に愚痴かい。徹夜で殺し合いはやってらんないなあ
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