言い訳「醜かったから」――紫の供述
私が欲しかったのは、本当は何だったのか、今でも判りかねている。
体だったのか、心だったのか、今はオルカに勝るのならばどちらも欲しい。
白薔薇――クリスティーナの言葉を聞いてから、オルカの国へ訪れる。
久しぶりに訪れた深淵の国は、どこか潔癖なオルカの一面が窺えて少し面白い。
簡素な調度品の量。その割には、調度品は一つ一つが最高級品だ。
悪趣味じゃ無い金持ち――といえば、イメージが湧くだろうか?
少なくとも、オルカに対して悪いイメージを持った奴が、思いつかない。
死の国という付属品はそれだけ、厄介なのだ。
「アレクス!」
後ろから聞こえる美しい声は、――ゆっくりと振り返って会釈する。
「エミリ様、お久しゅう御座います」
見目だけは本当に、クリスティーナよりも美しく可憐な少女だ。
内心嘲り、赤薔薇に対し、礼儀を払う。赤薔薇はそんな礼儀でさえ当たり前。
可愛くない女。
「本当に久しぶり! 嗚呼、オルカの言葉は嘘じゃ無かったのね……怒鳴ってしまったわ、私」
「怒鳴る? はて、オルカが何かしましたか?」
「――……皆が来ないから、嘘吐きって」
……オルカは嘘は吐かない。皆が約束したのは本当。
ただ約束した全員が二枚舌だっただけのこと。
オルカを責めるのはお門違い――だとしても、それを言うわけにはいかず。
「オルカは誠実な男ですよ、我々も公務が忙しく――中々、ね」
「だとしても、少し遅いわ!」
笑いながら我が儘を貫くこの女の厚かましさ――オルカ、お前知っているか?
知りながらも、この女がいいのか?
嗚呼、可哀想なクリスティーナ。何もかも劣るこの女に、お前が負けるというのか。
エミリのドレスは、黒いバッスルドレス――すっかりオルカの色に染まっているということか。
あんなに赤が好きだった姫君らしくもない。
だけど、この女のことだからきっと……。
「エミリ様――久しぶりにお会いしてこんなことを言うのも、何ですが……」
「なぁに?」
流し目で見つめてやれば、期待の籠もった目。
熱を孕んで今か今かと待ち望む、猫の瞳。
他愛も無い。
「貴方に、この城を案内してほしい――」
オルカやクリスティーナへ、罪がいかないように。
この罪は、お前と私だけで飲み干そう。
さぁ、喜劇もあと半分。
卑怯で臆病な薔薇の懺悔はどこまでか――?
聞いてくれて有難う、それでは君はクリスティーナを気に掛けてやってくれないか?
あの子を一人にしたら、大変だ……。




