表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

57/61

第57話 たすくの正体(1)

「ふーん。ルーファスにも言わないわけか。それだけ重要人物なのか。大事な人間、ということなのか……」


ディオンの推理に、ルーファスはピクッと眉を動かした。


「必死に訴えているようだったしなぁ。《たすく》という者も、あの状況でイザベルを身を挺して守ろうとしたわけだろう? 相当な思いがあると見て良いな」


ディオンがチラッと見ると、今度はルーファスの口元が引きつっていた。


(ずいぶん分かりやすい反応をするようになったな……)


ディオンは執務室から外を眺めながら、推理を口にした。


「ロザリンの力に対抗できるほどの魔力を持っているんだ。しかも姿も消すことができる。相当訓練された魔導士か……。それにしても、今までも姿を消してずっとロザリンの傍にいたってことか。その男は――。部屋だって用意していないんだろう? ということは寝るときも一緒にいるってことか……」


「そろそろ怒り出すか?」と思いながら振り返った瞬間、レンナルトに「ディオン、もういい加減にしてやれよ……」と窘められた。感情を露わにするルーファスを見られるかと挑発していたが、今回はどうやらやり過ぎたらしい。ソファに座るルーファスは、魂が抜けたような顔で俯きながら、何ごとかをブツブツと呟いていた。


「――え!?」

「……やりすぎなんだよ……」

「イザベルが他の男とずっと一緒にいる? 寝るときも? 俺だって寝顔も見ていないのに、《たすく》には見せているってことなのか? 本当は《たすく》の方が好きってことか?」


明らかに負のオーラを放ちながら、ブツブツブツブツと続けるルーファスに、さすがにディオンも揶揄いが過ぎたことが分かった。レンナルトは頭を掻きながら「どうするんだよ」と目で責めた。ディオンはこんなことになったことがない幼馴染の扱いに戸惑いながら、横に座ってルーファスの肩を叩いた。


「いや、ルーファス? 冗談だよ、冗談!」

「――冗談?」

「そうそう。そんなわけないだろう。ルーファスだって言っていただろう。イザベル嬢がそんな女性ではないことを、お前だってよく分かっているだろう?」


ディオンのその言葉に、消えかかっていた理性を少し取り戻したようだった。


「……それは……そうだが、俺はイザベルにとっては結局親が無理矢理決めた相手に過ぎない」

「いや、それはルーファスだってそうだっただろう?」

「……――」

「でも、いまはそう思っていないから、そんなことになっているんじゃないのか?」

「……最初から……」

「え?」

「最初から、彼女に親切な態度で接していれば……――」


今度はまた婚約式のときのことを思い出したのか、更に沈んでいった。


(やり過ぎたか――……)


「慣れない異国に来た彼女にあんな態度を取って……。あのときも、《たすく》が彼女の心の支えになっていたのかもしれない……」


どんどん勝手な妄想で、ルーファスはネガティブになっていった。


「いや、そういう相手とは決まってないだろう?」


ディオンの慰めに、ルーファスはジトッとした目で見返して来た。


(なっ……なんだ。一体……)


「彼女がそういったのか? 《たすく》が愛する相手だとか」

「……言ってはいない……」

「だったら――……」

「でも――……俺のことも……別に……」

「あー、もう。これから彼女も来るんだから、聞けばいいんだろ。《たすく》が誰か」

「……教えてくれない」

「俺は王太子だぞ。話してもらわなくては困る」

「殿下、お客様が到着しました」


執事の声に「ほら、もう来たんじゃないか?」と、ルーファスに言うと、さっきの落ち込みはなんだったのかと思うほど、キリッとした顔に変わった。


「やあ、殿下! ……と、その取り巻きの皆さん。昨日ぶりだね」


失礼な挨拶をしながら入って来たのはハンスだった。

肩透かしを食らったルーファスは表情には出さなかったが、がっかりしているのが分かった。


ハンスは使用人が用意したお茶を飲みながら、王太子執務室でも“いつもの調子”を崩さなかった。


「それで、あのお姫様はどうしている?」

「キャリントン家には事情は話しているから、しばらくは家で謹慎だ。処置は追って」

「ふうん。“救国の聖女”に、処罰とかできるのか」


ハンスは挑戦的な視線をディオンに向けた。


(全く――好戦的な男だな……)


「それは……国王と相談だな。幸い今回は君たちのおかげで、学園内で収束できた。まあ、処罰が重くなるかは、ロザリンの今後の状況にも関わってくるだろうな」

「ふうん」

「納得いかない部分はあるかもしれないが――」

「別に。正直、あのお姫様のことはどうでもいい。それより」


ハンスはルーファスをチラッと見て、ニィッと笑った。


「言った通りだったろう? 俺の予想通りだった」

「予想通りって」

「だから、いただろう? 彼女の――」


――コン、コン、コン。


「殿下、エリーアス・シュトライヒ侯爵が――」

「通せ」


エリーアスが揃い、あとはイザベルを待つだけとなった。


「昨日はアンガスをありがとうございました」

「いえ。私も力になれて良かったです。それにしても――……昨日の様子を見ると、ロザリンとイザベルは、何か私たちには分からないものを共有しているようでしたね」


エリーアスの言葉に、その場のみんなが同意した。

ロザリンの日ごろの謎の言動は、救国の聖女特有のものか、彼女の個性だと思って受け流していたが、彼女の謎の言動をイザベルも理解しているようだった。


(《たすく》のこともあるが、イザベルには聞かなければならないことが……――)


そうイザベルのことを考えたとき、執事がイザベルを部屋へと案内した。

扉を開けて入って来たイザベルは、いつもの姿ではなかった。


「イザベル! 髪を切ったのかい?」


エリーアスがすぐに反応してイザベルに声をかけた。

イザベルのトレードマークのような縦ロールも、厚化粧も消えていた。

部屋を訪れたイザベルの髪は、肩くらいで切りそろえられていた。

右頬はガーゼで覆われていたが、化粧はうっすらとしか施されていない。


(以前教室でも見たが、やっぱり彼女はこの方が美しいな……)


エリーアスはすかさず「よく似合う。可愛いね」と、ハンスも「いつもの化粧よりいいな。なんであんな化粧していたんだ?」と声をかけていた。チラッとディオンがルーファスを見ると、彼女の美しさに見とれて出遅れたのか、エリーアスやハンスを、呪いをかけんばかりに見ていた。


「ルーファス」


「早くエスコートしろ」と言う前に、ルーファスはイザベルの方へ向かっていた。

そして、彼女をエスコートしようとするエリーアスの前に立ちはだかると、威圧感のある笑みを浮かべるとイザベルの手を取った。


「イザベル、こちらへ」

お読みいただきありがとうございました!

「面白い」と思っていただけましたら、ぜひ「ブクマの追加」や「リアクション」、「感想」、下の☆☆☆☆☆を★★★★★に変えて応援いただけますと嬉しいです!

皆さんの応援で執筆のモチベーションがアップします!!!

どうぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただき、ありがとうございます! 「面白い」と思っていただけましたら ぜひ「ブクマの追加」や「ご評価」(下の☆☆☆☆☆を★★★★★に変更いただけると嬉しいです)リアクション、ご感想などをいただけますと、嬉しくて執筆のモチベーションが上がります! どうぞ宜しくお願い致します。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ