表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/48

第33話 声の主

「ロザリン、いるなら返事を……」


垣根の影から、陽光に照らされて光る薄茶の髪が見えた。


(――ルーファス様だ)


薔薇のアーチの下にいるロザリンに向かってカーターが駆けていたが、垣根の影から現れたルーファスの方が彼女には近かった。


(ルーファス様が現れたということは、今後ルーファスルートになる可能性が高いということ……? このまま彼女のもとにルーファスが駆けて行ったら、ロザリンへの好感度は上がるのだろうか? 一途だというルーファスのことだ。そのときには、私を公爵邸へなんて提案はなかったことになるのかもしれない……)


イザベルは、垣根から現れたルーファスから思わず目を逸らした。

そのとき、イザベルの少し前を歩くイリーナも、ルーファスの存在に気が付いた。


「お兄さま!」


イリーナの声に反応して、ルーファスは薔薇のアーチの下で待つロザリンではなく、イザベルの方を向いた。


「イザベル!」


呼んだのはイリーナなのに、ルーファスはイリーナの後ろを歩くイザベルに目を細めた。


(ロザリンではなくて……私を、見た?)


「お兄さまったら、声をかけたのは私なのに」

「悪かった。ロザリンを見なかったか? 急に姿を消してしまって」

「アーチのところにいるわよ」


イリーナは生垣から影になっていたアーチを指した。

薔薇のアーチの下に、ピンクベージュの髪の少女がたたずんでいた。


「ああ、あんなところにいたのか。みんな心配しているというのに」


ロザリンのもとへは、護衛のカーターが一番に辿り着いた。


「カーターがいるなら心配ないな」


ルーファスはイザベルと一緒にロザリンのもとへ向かった。

イザベルは平静を装っていたが、内心は不安だった。


(このままルーファスがロザリンのもとへ行ったら、やっぱりルーファスの好感度が上がるのかな? カーターは攻略対象者じゃないから、無効になるのかしら)


薔薇のアーチの下で困り顔をしていたロザリンは、庇護欲をそそった。

ルーファスはそんな彼女を見て、困ったように眉根を寄せた。


「ロザリン、以前も言ったが、学園内だとしても急にいなくなったら危険なんだ。どうして勝手に」

「見つけてくれると思ったのに!」


カーターの横で俯いていたロザリンは、潤んだ瞳でルーファスを見た。

その表情は、不安気というよりも怒気を孕んでいるようにも思えた。


「――見つけたじゃないか……」


ルーファスは理解できないという顔をした。


「そうじゃなくて! このイベントはそういうんじゃなかったのに!」

(――……イベント?)

「また『イベント』か……」


ルーファスは「イベント」という言葉に頭を掻いた。


「その、君の言う『イベント』が何なのか分からないけど、突然いなくなられると正直困るんだ。“救国の聖女”であると分かった君は、この国で王族に匹敵する要人なんだから」

「……――どうして、私が怒られるの?」

「怒っているわけではないんだけど……」


苛々した様子のロザリンは、ルーファスよりもずっと幼く見えた。

そして、ルーファスと一緒に現れた私たちをキッと睨みつけた。


「どうして悪役令嬢(あなた)がいるのよ!?」

「……ロザリン、彼女たちも君が一人でいるから心配してくれたんだ。護衛のカーターをやってくれたのも彼女たちの機転なんだよ」

「……護衛なんて……そんなこと、私、頼んでない! 私は、攻略対象者(あなた)たちが見つけてくれるって……どうして……ここは私の世界なはずなのに……」


ロザリンは小さな唇をきゅっと噛みしめてイザベルを見た。


(《たすく》、ロザリンが何を考えているか分かる?)

《悪役令嬢なのにって……》

(やっぱり――)

《やっぱりって?》

(この子は、私と同じ転生者なんだわ)

《転生者? イザベルと同じ世界から来たってこと?》

(たぶん、そう)


そうでなければあり得ない。

「イベント」や「悪役令嬢」なんて言葉、この世界の人の言葉ではない。

ロザリンは、私と同じ――このゲームがあった国の記憶を持っている。


「ロザリン!」


少し遅れてディオンと、レンナルトが現れた。

ふくれっ面のロザリンと、呆れた様子のルーファスを見て、ディオンはすべてを把握したようだった。


「ロザリン、心配したんだよ。もうこんなことはしないでほしい」

「……私は……」

「君が勝手にいなくなってしまうのだったら、護衛を増やす必要も出てきてしまうんだ。私たちがずっと傍にいるのが窮屈なのかもしれないが……」

「――そんなこと……」


ロザリンはディオンのお願いに、困った少女の顔をしていた。


「もう午後からの授業が始まるから」


そうディオンが言うと、ロザリンは素直に頷いた。

ディオンのレンナルトに付き添われて、ロザリンはトボトボと校舎の方へ向かった。

ディオンはロザリンの機嫌を取りながら後ろを向くと、パチンとウインクを送ってきた。


(さすがは王太子。鮮やかな対応だわ)


イザベルが感心していると、頭上からはぁというため息が聞こえた。


「お兄さま、お疲れのようね」

「私は何かおかしなことを言ったか?」


ルーファスの問いに、イリーナは首を振った。


カーン、カーン、カーン。


午後の授業を知らせる予鈴が鳴った。

中等部の棟は少し離れているため、イリーナは慌てて駆けて行った。

教室に戻ろうとする同じクラスのジゼルに、ルーファスは「次の時間は急用で出られなくなったと言っておいてくれ」と頼んだ。


「急用?」


ジゼルは一瞬きょとんとしたが、すぐに「分かったわ」と微笑み去って行った。

高等部のイザベルはジゼルと一緒に駆けた。

しかし、イザベルの二の腕がルーファスに引き留められた。


「え?」


ジゼルは分かっていたかのように、イザベルを待たずに行ってしまう。


「イザベルのことは、ディオンが適当に言っておいてくれるだろうから」


教室へ向かう生徒たちとは逆方向へ、ルーファスは迷いなく歩いていく。


(え? まさか……。これって、サボり!?)

お読みいただきありがとうございました!

「面白い」と思っていただけましたら、ぜひ「ブクマの追加」や「リアクション」、「感想」、下の☆☆☆☆☆を★★★★★に変えて応援いただけますと嬉しいです!

皆さんの応援で執筆のモチベーションがアップします!!!

どうぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただき、ありがとうございます! 「面白い」と思っていただけましたら ぜひ「ブクマの追加」や「ご評価」(下の☆☆☆☆☆を★★★★★に変更いただけると嬉しいです)リアクション、ご感想などをいただけますと、嬉しくて執筆のモチベーションが上がります! どうぞ宜しくお願い致します。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ