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異世界の王女と婚約した私を、日本政府が離してくれない  作者: KMY
第2節 いきなりの隔離病室
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アリシア:爆発と暴走

『正直、傷つきました』


エレナからの念話魔法で、こういう愚痴を言われます。部屋は違いますが、こうして会話することができます。といっても念話魔法が使えるのはわたくし、エレナ、ララだけです。念話魔法が使えない人同士で話すことはできません。


「わたくしのところのいわいさまからの説明は丁寧でしたが、おそらくわたくしに来るまでに色々なことを言われたのだと思いました」

『‥‥そもそも、外国から来た人をいきなり病院に入れる国を古今東西聞いたことがありません』

「‥‥わたくしにも思うところはありますが、今のところ敵意は向けられていませんし、しばらく様子を見ましょう。モニカとペトロナにはわたくしから直接伝えますので、エレナからは残りの3人に伝えてください」

『承知しました』


本当はペトロナにもエレナやララから伝えてもらえればいいのですが、何かあった時に止められるのはわたくしの命令だけですので‥‥念のため直接伝えます。静観はわたくしの方針であることを強調します。


‥‥さて、現状を整理しましょう。わたくしたちは1人ずつ別々の部屋に入れられ、実質的に軟禁されています。トイレやシャワーは利用でき、何かあったらボタンを押して看護師を呼び出すことができます。ただし看護師はたいてい、ここには直接来ないで、スピーカーを通して話してきます。


‥‥この待遇には面ぐらいましたし思うところもあるのですが、わたくしたちの最終目標は1人の聖女を見つけてわが王国に連れ帰ることです。そして、その聖女はできればわたくしと相思相愛であることがのぞましいです。‥‥この国の人々も、女同士で結婚して子供を産むのでしょうか。

‥‥そもそも、聖女はどこで探せばいいのでしょうか。年頃の人が集まる施設でもあればいいのですが‥‥と、そこまで考えて、わたくしたちが最初に転移したあの部屋のことを思い出します。あの部屋には大量の、わたくしと年齢の近い人がいました。あの中ならきっと見つかります。


‥‥セミロングで、メガネをかけていた子。わたくしが転移した時、すぐ目の前に座っていた子。

その顔を思い出すだけで、突然心臓が高鳴りしたような気がします。

‥‥‥‥そうですね。できればその人に゙もう一度会ってみたいです。

ああ、あの人は今もあの建物にいるのでしょうか。


   ◇


「モニカ、大丈夫、大丈夫、大丈夫ですよ」


翌朝もみなさまの心のケアは大変でした。エレナから言われて、1人ずつわたくしから直接連絡を入れます。

と、スピーカーから声が入ってきます。


『おはようございます、祝です』

「あら、おはようございます」

『先程からアリシアさん含めてみなさんが一人で喋っているように見えましたが、体調や気分は悪くないですか? 我慢してもらわなければいけないことも多いですが、つらい気持ちが強くなれば言ってくださいね。眠れなければお薬を処方することもできますよ』

「‥‥ああ、そうか、今のは念話魔法といいます。離れ離れになった人同士、魔法で会話しています」

『念話‥‥魔法なのですね。うーん‥‥念話魔法を使う時、電気とか光は出ますか?』

「‥‥魔法の仕組みはエレナのほうが詳しいと思います」

『電気の流れがなければ病院としては大丈夫ですが、政府の担当者には伝えますね。そのほかにもう1つ念のため確認したいのですが、こう‥‥えっと‥‥こう、離れたところに瞬間移動する魔法は使えますか?』

「転移魔法ですか? わたくしとエレナが使えます」

『なら、それは病院にいる間は絶対使わないようお願いします。隔離の意味がないので。部屋の中にあるものは、どんな理由があっても、必ず前室と担当者を通してくださいね』


‥‥なるほど、この世界では魔法が存在しないので、念話魔法を見られたらそういう反応になるのですね。常識が違うと理解するのに少し時間がかかります。


『それからタブレットも早めに用意しますね。映像での会話ができると思うので』

「タブレット‥‥?」

『まあ、見たら分かりますよ』


祝さんとの会話が終わってから転移魔法の件でエレナに連絡を入れます‥‥すぐ振動が伝わります。部屋全体が揺れています。え、地震ですか‥‥いえ、地震というよりはただの爆発音ですね。え、誰かが魔法を使って何かを壊したのですか?

浮足立ちますが‥‥前室から勝手に廊下に出てはいけないと言われているので、わたくしはナースコールのボタンを押します。‥‥が反応がありません。緊急事態で看護師も反応できない状態なのでしょうか。


念話で確認します。


「モニカ、何があったか分かりますか?」

『爆発音がありました。先程念話が来たのでララさまではないと思います』

「わかりました、わたくしから確認します」


そう言って念話を切ると、すぐエレナから念話が入ります。


『殿下、今の爆発音はペトロナです』

「‥‥分かりました」


ペトロナですか。ペトロナなら納得です。わたくしはふうっとため息をついて‥‥前室の前に立ちます。前室はドアのほか、透明な板が取り付けられています。この板を通して、前室の中を見ることができます。ペトロナが来るならここからですね‥‥やっぱり来ました。ドアを開けて、駆け足で入ってきます。


「殿下、助けに参りました。このような場所に長居は無用です、早く‥‥」

「ペトロナ」


わたくしは微動もせず、透明な板の前でその名前を呼びます。ペトロナを誰かが追いかけてきている様子はありませんが、廊下の方からは慌ただしい足音が聞こえます。‥‥さきほど魔法を使って攻撃したのでしょうね。この世界には魔法がないので、罪を犯すと必ず面倒なことになります。


「わたくしは最初に言いました。この世界の人と友好を結ぶ必要があります。そのためにはまず、この世界の人の基準に合わせて検査のうえ、納得してもらうことが不可欠です」

「ですがこのようなやり方は常軌を逸しています。剣や杖をとりあげたうえ、本職たちはいたって健康なのに病気扱いです。こんな扱いをする国に話すことなどありません!」

「確かにわたくしたちの今まで見聞きした内容から判断すると大変失礼であるのは明らかです。ですがこの日本の人にとっても同じでしょう。いきなり、どこともしれない場所から来たのです。日本人にとってもわたくしたちは敵か味方か分かりません。警戒するのは当然です。今のところ敵意は感じられませんので、こちらが表立って行動する理由もありません。いざというときには念話魔法で連絡が取れるのはペトロナも分かっていますね。最初に転移した部屋の中でも言いましたが、わたくしの指示があるまで不用意な行動は控えてください」


ペトロナががくっと膝をついたので、「続きは後で念話しましょう、ね」と、見えない壁こしに下を見下ろしながら優しく付け加えます。


ペトロナはおとなしく医療関係者たちに連行されました。そのあと、わたくしはもう一度、ナースコールのボタンを押します。祝さんは忙しいらしく、しばらくたって、代わりに別の人が出ました。


「このような事態になり大変申し訳ございません。厚かましいですがどうか処罰は思いとどまってくださいますか。わたくしたちも二度とこのようなことがないようつとめます」

『‥‥院長の神崎こうさきです。ご安心ください、短期的にはいろいろあるでしょうが、悲観しているようなことにはならないと思います。それに皆様の気持ちをケアするのは本来ならわれわれの仕事でしたから。報告を聞く限りアリシアさんに背負わせてしまいましたが、われわれも頑張ります』


しわがれた男の声です。わたくしはほっと息をついて「ありがとうございます」と伝えました。

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