井上真理:自宅待機と面会希望
私――井上真理は現在、自宅待機中。特に悪いことをしたわけではない。異世界人と話した、たったそれだけのことで、家から出ないでくださいと言われた。病院以外の理由で家を出るのは禁止。友達と会うのも、学校に行くのも禁止。2週間は長すぎる。
私はぽーんとベッドに飛び乗ってころころ転がる。今日はまだ3日目の金曜日。
やることないし宿題するか‥‥。面倒そうに身を起こしてあくびをすると、机に向かう。‥‥宿題面倒だなあ。友達と楽しく話しながら授業を受けるのと、家出1人で勉強するのとでは事情が違う。せめてオンライン授業でもあればいいんだけど無理か。休んでるのは私と小林だけだもんね。
まあ、これも仕方ない。宿題も毎日やらないと終わらない程度に送りつけられたし、ね。
◇
しばらくやっていると、咲希から電話が来る。ああ、昼休みの時間か。
「咲希、もしもーし」
『真理だ、おーい元気?』
「元気にしてるよー」
『病気って聞いたけど?』
「ぜんぜん違う。異世界の人がどんな病気を持ってるかわからないから、念のため様子見るって。って分かってるでしょ!」
『えへへ。萌仁花もいるよ~』
「あ、萌仁花、元気してる? 私は元気だよ」
高沢萌仁花も電話に出てきた。少しギャルっぽいというか、端的に言えばあざとい系女子。くわえて地もかわいいから、騙されてホイホイついていく男子が後を絶たないとか。
ちなみに表向き政府や警察は異世界うんぬんについて何も発表していないが、友人や同級生の間では、異世界から来たということはほぼ決定事項として扱われている。そりゃそうだ、何も無いところから突然現れたのなら信じるしかない。くわえて高校生のノリというものもある。自分で言うのもなんだけど。
そのかわり、異世界人のことをSNSには絶対書くな、と釘を差されている。それでも何人かは書いてしまったらしいけど、後で担任から指導が入って消したらしい。
と、萌仁花が話を続ける。
『ねえ~、もにか見たんだけど~、まりまりの机の上に座ってた異世界の人いたじゃん?』
「うん、アリシアちゃんね」
『アリシアちゃんっていうんだ~。なにか話してたの?』
「うん、友達になりたいって」
同じことは警察にも言った。教室の中であったことを全部絞り出された。警察の取り調べはあんなにしつこいのかと思うくらい何でも聞かれた。
『わあ~、まりまり、アリシアちゃんと友達になったらもにかにも紹介してして~』
「萌仁花も友達になりたいの?」
『ういー、もにか、興味ある系? それに~かわいいし~』
‥‥まあ、萌仁花もきっとよき友達になると思う。ギャルでちゃらいけど、人を利用するような人間ではないし。
『会う予定ある~?』
「ないよ、ないない」
‥‥会う。そうか、会う、か‥‥。よく分からないけど、お父さんに聞けばなんとかなるかもしれない‥‥。
『ねぇ~、かわいかったでしょぉ~?』
私の思考にかぶせるように、萌仁花が陽気な声を飛ばしてくる。‥‥‥‥確かにかわいらしく、愛嬌があって、美しかった。もし悪い人じゃなければ‥‥友達になりたいって言われて嬉しかった。
異世界人という物珍しさと話題性が私の思考に影響している可能性は否めない。でも‥‥あのかわいらしい顔から発される美しい声で、私と友達になりたいなんて言葉が飛び出してしまうと‥‥。なぜか心が温かい。嬉しい。あの子のこと、もっとよく知りたい。
「‥うん、確かにかわいかったね。‥‥それよりも、せっかく会ったんだから私も友達になりたい。お父さんに聞いてみるね」




