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異世界の王女と婚約した私を、日本政府が離してくれない  作者: KMY
第1節 救いの聖女を求めて
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アリシア:警察が来た

この日本の警察は、青い服に青い帽子をかぶっているようです。白い手袋もつけており、胸には何やら黒い箱のようなものがくっついています。

4人の警官たちはドアの外にいた男たちといくらか話したあと、ドアを横にずらして入ってきます。


「警察です、そのまま動かないでください」


しかし警官が腰についてる何か黒いものに手を近づけているのを見て、ペトロナがわたくしの前に回って剣を構え‥‥「ペトロナ、控えてください!」とわたくしが命じます。


「ですが殿下‥」

「この世界とは友好を結ぶために来たのです。戦うために来たのではありません」

「‥‥はい」


しぶしぶ横にどきます。わたくしも怖いですが、勇気を持って‥‥


「お待ちください、殿下」

「モニカ?」

「あたしが先触れとして対応いたします」

「‥‥そうでしたね、お願いします」


不意打ちも考えるとこの対応が正解です。あらためて、モニカがわたくしたちを代表するように前に立ちます。警官たちは遠巻きにわたくしたちを観察しているようでしたが、モニカが動かないのを見ると、そっと近づいてきます。


「ええと、ここにいるのは6人で間違いない?」

「‥‥ララさま、マノラはどちらに?」

「男が来たので床に張り付かせています」

「‥‥机の影に隠れていますが、もう1人います」


モニカが返事すると警官は「立たせてくれる?」と、覗き込むように言いました。ララがマノラを放しますが、なお手を後ろに縛られ、口に白い布を巻かれたままです。警官は警官同士でなにか相談していましたがそれ以上突っ込まず、代わりに「怪我してる人はいない?」と尋ねます。モニカはわたくしたちを振り向いてから‥‥「いません」と回答します。


「‥‥じゃあ、安全のためにいったん武器を預からせてもらっていいかな?」


とペトロナの方を向いて言います。


「こ、この剣は本職が誇りを持って殿下をお守りするためのものだ。そうやすやすと‥」

「ペトロナ、渡しなさい」

「ですが殿下‥」

「これは命令です」


わたくしが告げるとペトロナは不服そうにしますが‥‥それでも舌打ちしながら、鞘ごと腰から取り外します。ですがそれを握っても‥‥なお不安そうです。


「‥‥本職は殿下の護衛としてここに来た。本職から武器を取り上げたあとは、誰が殿下を守るのだ?」

「私たち警察が責任を持って守るからね」

「‥‥信用できん。お前らの武器を見せてみろ」

「いやー、それは‥」


警官たちが困った顔をしているのを見て、わたくしは「ペトロナ、控えなさい。あなたは体術も使えるでしょう。わたくしにも魔法の覚えがございます。十分です」と伝えます。


「‥‥そうおっしゃるならば。殿下はわが命に代えてでもお守りします」


そう言いつつ警察に剣を渡し‥‥「返してくれるのか?」と尋ねると、すぐ「帰るときまでには返すよ」という返事が来ます。

そしてエレナも身長より高い杖を警官に渡し‥‥


「ええ、これはいらないよ、刃物じゃないでしょ」

「でっ、ですが、武器を提出してくださいとのことでしたので‥‥これで魔法を使います」


エレナにとっても断腸の思いだったのでしょう。泣きそうな顔をしているのを見て警官は「‥‥とりあえずもらうね」とそれを受け取り、後ろの警官に引き渡します。


「‥‥ところで、君がモニカさん?」

「はい」

「その耳、動いてるように見えるけど、作り物だったりするよね?」

「いいえ、本物です」


モニカがぴょこぴょこ耳を動かして、尻尾も動かしてみせると‥‥警官たちは引きつった顔をします。そういえばこの世界に獣人というものは存在しないのでしたね。


「じゃあ、あの人の背中についてる翼も‥‥」

「はい、本物です」


警官たちはお互いの顔を見合わせます。


「とりあえず本物かどうかは後で確認させてもらえる。まずはこの教室にはどうやって来たの? 教室に来てから何をやったか、順番に説明してもらえるかな」

「はい」


モニカが説明する傍らで、4人のうち1人の警官が部屋の隅っこへ行って胸の箱を握り、なにか独り言をしゃべっているように見えました。


「川崎市内宿河原高校の事案。対象者7名を確認。うち少なくとも3名について通常の人間とは異なる身体的特徴を確認。対象者の会話の中で『魔法を使う』との発言あり。真偽不明ですが状況特殊。詳細確認中。応援および署への報告をお願いします」


   ◇


小一時間話している間に警官の数が増えたように思います。異世界の話をするたびに困らせているのは分かっていますが、それでも嘘をつくわけにはいきません。

わたくしとしては事を荒立てたつもりはありませんが、2人ほどの警官が部屋の中をくまなく調べて、変な箱を目にあてて光らせたりしています。あれは何という装置でしょうか。ララも興味津々で眺めています。


「救急車が到着したぞ」

「わかった、はい、それじゃ君たち、一緒に来てもらえるかな」


そう言われて、ようやくわたくしたちは部屋を出ます。ここは廊下でしょうか。先程わたくしたちがいた部屋と同じくらいの大きさの部屋が並んでいるようです。


「これからどこへ連れて行かれるのでしょうか‥」


エレナが不安げに言いますので、モニカが前の警官に確認します。


「これからどちらへ行くのでしょうか?」

「ああ‥‥言っていいかな。病院だよ。君たちの体におかしいところがないか調べてもらうんだよ」

「あたしたちはいたって健康ですが‥」

「それでも調べるんだよ」


エレナが「治療なら私の魔法でも‥」と言いますが、わたくしは「この世界の基準で納得してもらわなければいけません」と補足します。

と、わたくしたちとすれちがった2人の警官が「生きていてこんな案件がくるとは思わなかったなあ」と苦笑いしているのが見えました。

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