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異世界の王女と婚約した私を、日本政府が離してくれない  作者: KMY
第1節 救いの聖女を求めて
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アリシア:偵察

端的に言えば、一目惚れだったかもしれません。

美しく黒くかがやく髪の毛を伸ばし、かといってかわいらしくくりんとした愛嬌ある目つきからは怪しさどころか親しみすら感じさせられます。

この世界にもエレナやララのかけているようなメガネが存在するということを認識しましたが、そのせいでしょうか、真面目そうな見た目からは頭が良い、しっかりしているという雰囲気すら感じさせられます。

白い長袖薄手のシャツは見た目が地味ながら、かえって素材の美しさを引き立たせています。


わたくし――アリシアは、我ながら少しぼうっとしてしまいました。周囲では騒ぎになっているのは気付いていましたが、どうしても彼女から目が離せません。


「どうかわたくしとお友達になっていただけませんか?」

「井上、逃げろ!」


と、横から大人の‥‥わたくしたちとは顔や体の作りが明らかに異なります。あれが男という、わが世界では数百年前に絶滅した性別でしょうか。その男が、井上と呼ばれた少女の体を引っ張ります。

わたくしが声をかけても待ってくれず‥‥そのまま、部屋から出ていってしまいました。


改めて見渡してみると、この部屋は大量の机が所狭しと並んでいます。

物理的に言えば机同士に隙間は存在しますが、それでも王城で生活してきたわたくしの感覚では、ぎっしり詰め込まれているように見えます。

ここは平民‥‥いえ、日本に身分制は存在しないのでしたね。みな平等です。ですが平等だからこそ、全員がこんな狭いところを使っているのでしょう。


そこで、いまわたくしが座っているのが机の上だとようやく気づきます。下へおりると、あちこちの机の上に白い紙が乗っているのに気づきます。


「男男男男男男男男男男男男ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛~~~~~!!!!!!」


‥‥‥‥何でしょうかこの一番聞きたくない悲鳴によく似た何かは。

振り返ると‥‥案の定でした。

転移の時に怒鳴り声が聞こえたのはこれだったのですね。転移直前に乱入してきたのですね。


そのマノラが、1人の少年に馬乗りになって、ズボンを脱がして、下着を脱がせて‥‥


「殿下、この人間は男です!」

「今すぐその人間から離れなさい!」

「え~~、でもぉ、男ですし‥‥男男男男男男男男男男‥‥ハァハァハァハァハァハァハァハァ」

「ペトロナ」


ペトロナがマノラを立たせようとしますが、マノラは少年に引っ付いたまま離れません。仕方なくモニカが「失礼しますね」と、少年のほうを引っ張ります。ようやく離れてくれたので、そのままペトロナが馬乗りになって取り押さえます。

そのままわたくしは少年に一礼して‥‥


「大変失礼いたしました。怖い思いをなさったかと‥‥‥‥」


少年はわたくしの言葉が終わるのも待たず、ばたばたと走って部屋を出ていってしまいました。

‥‥‥‥‥‥‥‥。これ、大体マノラのせいでは? わたくしは2人の人間に声をかけましたがどちらにも逃げられました。マノラが変なことをして恐怖を与えたせいです。絶対そうです。


「マノラは罪人として処罰します」

「えええええ、そんなぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!!! せっかく男に会えたのにぃぃぃぃぃぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!!!!」

「うるさい」


ペトロナがその減らず口を白い布で縛り上げます。


「‥しかし、これからどうしましょうか。この世界の人間たちには逃げられてしまいますし‥‥」

「向こうに人の家らしきものが並んでいるように見えますが、まずは周辺の地形を把握しましょう」

「モニカ、それはいいですね。それではクロエ、お願いします」

「わーったよ」


と、鳥人のクロエは白い翼を広げて外へ向かって駆け出し‥‥こてんとぶつかります。


「大丈夫ですか、クロエ」

「あ、ああ‥‥見えない壁があるよ」

「ええっ!?」


触ってみます。確かに外の景色は見えるのに、見えない壁があります。害はないようですが、この世界には魔法がないのにどうして。

でもこの世界の人間と友誼を結ぶなら、周囲の物をむやみに壊すのは気が引けます。


「ここに見えない壁はないようです」


ララが腕を外へ伸ばしていたので、クロエはそちらから翼を広げて外へ飛んでいきます。


「さて、わたくしたちはこの部屋の外を見て回りましょうか。ペトロナたち、護衛をお願いします。ララはとりあえず、マノラを見てください」

「はっ」


ララは学者ですが魔道士を目指していた時期もあり、少しくらいなら拘束魔法に覚えがあります。護衛というほどではありませんが、簡単な任務はお任せできます。

さて‥‥と6人の部隊を引き連れるわたくしは、横にずらして開けるらしい珍妙なドアのもとへ向かいますが‥‥


「あれ、開かない?」


先程少年少女たちが普通に開けしめできていたはずなのに、この世界にも鍵が存在するのでしょうか、魔法もなしに鍵とは一体どのような仕組み‥‥と思っていると、ドアの窓の向こうに2人の男が立っているのが見えます。成年というよりは、少々歳を取っているように見えます。


「‥‥君はどなたですか?」

「っ、わたくしは異世界から参りました、デュトロン王国の第一王女、アリシアと申します。この日本の実権をお持ちになっている、内閣総理大臣のお目にかかる機会をいただけますでしょうか」


男たちは困った様子でお互いの目を見ます。確かに困惑させるのは致し方ないと思います。


「わたくしたちに敵意はございません。あなたたちとご友誼を結びたいと考えております。どうか話を聞いていただけないでしょうか」


そう主張しますが‥‥男たちはかえって、ひそひそ話しているように見えます。ようやくこちらを向いたかと思うと‥‥


「申し訳ありませんが、その話は警察を通してお願いします」

「警察‥‥? あ、あの、わたくしたちは怪しいものではありません!」

「‥‥そのね、懸命に話してくれたところ申し訳ないけど、君たちが怪しいかどうか私たちこの学校の者では判断できないんです。警察と話してください。私たちも生徒から聞いたことを曲げずにそのまま伝えますので」

「‥‥‥‥そうですか」


男たちも申し訳なさそうな様子だったので、わたくしたちに敵意はないと思いたいです。


すぐに窓からクロエが帰ってきました。


「大変だ、白い動くものがこの建物に向かってきている!」

「‥‥おそらくそれが警察でしょう。ここで待ちましょう」


モニカが不安そうな顔をしていたので、わたくしは「大丈夫ですよ」と抱きしめます。それから他のメンバーにも告げます。


「まずはわたくしたちに敵意がないことを相手に理解してもらうことが重要です。わたくしの指示があるまでおとなしく、この世界の人間たちの指示に従ってください」


それはメンバーたち、特に護衛にとって重い言葉でした。

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