表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/45

おまけ1:アリシア:教科書

わたくし――アリシアたち決死隊は日本に転移いたしましたが、その直後から4週間ほど隔離入院しておりました。

その途上でのお話です。


入院後2週間が経過すると段階的に隔離は緩和され、3週間がすぎるとわたくしたち同士で、短時間であれば仕切りもなく共通の部屋にいていいことになりました。共有ルームという、机や椅子などが置いてある部屋です。

そこにわたくし、モニカ、エレナ、ララの4人で集まっておりましたが、机の上に積み重なっているのは宿河原高校の1年生・2年生向け教科書と入試問題です。


「‥‥なるほど、炎色反応ですか」


エレナは興味深そうに化学の教科書を読んでおります。


「‥‥様々な小説や評論文の一部を抜粋してまとめておられるのですね」


ララは現代文の教科書を読んでおります。もっとも真理さまによると宿河原高校では現代文は1年生のみで、2年生ではやらないそうです。まあ復習には使えるかもしれませんが。


ちなみにモニカは、机の上にあるものには興味を示さず、ずっと椅子に座るわたくしの後ろに立っております。


「あら、モニカは興味のあるものはございませんか?」

「あたしが殿下より先に行動することはできません」

「‥そうでしたね」


今は日本の私服を着ておりますが、モニカはメイドとしてわたくしの後ろに控えるのが仕事になっております。‥‥今はメイドらしいことができませんが、形だけでも整えたいのでしょう。仕事熱心さには頭が下がります。


「それではわたくしは‥‥数学にいたしましょう」

「殿下、なぜ数学ですか?」


そうエレナが尋ねてくるので‥‥わたくしは少し恥ずかしくなりましたが、それでも答えます。


「真理さまのお父様が数学教師をなさっており、興味を持ちました」


‥‥するとエレナもララもくすくす笑っておりました。


「2人ともどうなさったのですか?」

「ふふふふ‥‥」

「どうなさったのですかっ?」

「ふふふふふふふふ‥‥」


2人は笑うだけで教えてくれませんでした。


   ◇


気に入った教科書をそれぞれの部屋に持ち帰ってみます。

わたくしはベッドに座りながら教科書の最初の方を見ますが‥‥日本の数学の水準はわが王国より高いようです。王国での教育でも最後の方でやっていた内容を、日本では数学の教科書のはじめの部分で扱っております。その時点で挫けそうになりますが‥‥一度高校に入ると決めた身です。懸命に勉強いたします。

‥‥それにしてもこのような内容、一般的な高校生は全員学ぶのでしょうか。日常生活において一体何に使うのでしょうね。


‥‥それでも頑張って本を後半まで読み進めてみますが、少し分からないところがございます。エレナなら分かるでしょうか‥‥。


タブレットで通話したいときもまず念話を飛ばします。タブレットの着信音よりも確実なのです。あれはトイレの中にいると聞こえにくいこともありますからね。

そうしてエレナとタブレット通話をつなげ、教科書を画面にうつします。


『‥‥わからないですね』

「そうですか‥他に分かる人はいるでしょうか」

『数学に関して、この決死隊の中では殿下が一番高度な教育を受けていると思います。それでも分からないなら日本人に聞くしかありません』

「‥‥‥‥わかりました」


通話を切るとわたくしは真理さまに念話をとばそうとして‥‥「ああ」と思い出します。わたくしと真理さまの念話が日本政府に見つかりそうになっており、今はうかつに念話をとばせないのでしたね。

わたくしはベッドに、横向きに倒れます。


はぁ‥‥こんなときにも真理さまとお話できないなんて。失ったものはあまりに大きすぎます。


‥‥退院したら何が何でも真理さまとの接触を増やそうと心に決めるのでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ