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井上真理:センサー対策

「‥‥これを本当に赤荻さんからもらったの?」


私――井上真理は目を疑った。

自宅の自室の机の上に転送されてきたその紙切れには、詳細な内容が書かれていた。


屋外

・防犯カメラ(可視+赤外)

・人感センサー

・車両検知

玄関周辺

・開閉センサー

・顔確認用カメラ

・ドア開閉ログ

・インターホン記録

室内

・人感センサー(リビング・廊下)

・ドア開閉センサー(各部屋)

・環境センサー(各部屋 温度・湿度・CO₂)

・煙/粒子センサー(各部屋)

・重量センサー

・床圧センサー

・空調変化センサー

ベッド周辺

・ベッドセンサー

・ミリ波レーダー

その他

・電力モニタ

・PCのネットワークログ

以下は実施せず

・家中の常時カメラ監視

以下は機器はあるがオフになっている。今後の関係悪化次第

・盗聴器

・監視カメラ


‥‥私はこれを見るだけで泣きたくなる。きっとアリシアも同じ気持ちだろう。

せっかく退院して新居に移ったのに、こんなのってないよ。

政府はどこまでアリシアのことを締め付けたいの。


『それは何でしょうか?』

「‥‥部屋を監視するための機器一覧です」

『‥‥やはり』


念話で伝わってくるアリシアの声は明らかに落ち込んでいた。

久しぶりにアリシアから来た念話なのに、気分が重い。


「家の中にそんなにたくさん機器があるの?」

『見た目は何もない普通の家です。どこかに厳重に隠しているのだと思います』

「‥‥‥‥」

『教えてください、念話は可能でしょうか? それから‥‥』


‥‥アリシアがこれをどこまで理解しているかは分からない。どこまで伝えればいいのか‥‥。

いや、多分アリシアよりも私のほうが機械を知っている。アリシアにとってこれは、得体のしれないものだから、私よりも恐怖しているかもしれない。


「私の先輩に詳しい人がいるから聞いてみます。他に気になるところはありますか?」

『‥‥これらは物理法則にのみ作動しますか?』

「はい、そうだと思いますが‥‥念のため先輩にも聞きます」

『でしたらこちらでも対策を考えます。当面念話は毎日出しますが、事務的な連絡のみにします』

「分かりました」


‥‥さて、アリシアだけでなく私も政府から監視されているとなると、うかつに動けない。

そうだ、この前、アリシアが編入してくるからよろしく頼むみたいなことを養護教諭から言われたんだよね。学校にも手が回っているのかなあ。

どうしようかなあ。


‥‥あ、くだんの先輩とはメールアドレス交換してるんだった。すっかり忘れてた。今まで連絡したこと無かったからどこにあるか分からない。名前で検索できないかな‥‥あ、あった。


『植松先輩 写真部2年4組の井上です しばらく部活を休んでいてすみません センサーについて聞きたいことがあります‥‥』


この写真部の先輩は物理学が得意だし、一時期は物理オリンピックへの参加を検討したこともある。機械いじりも好きで、高校のプログラミング勉強会でもヒーローだったと聞く。だから、センサーについて何か知っているかもしれない。


すぐに返事が来た。


『こんなカチカチのセンサー構成初めて聞いたなあ 忍者でも飼ってんの?笑 まあ俺なりに説明考えるから何日か待ってね 他言無用OK!』


みたいな軽い感じだった。

その返事を読むだけで、このうえなく安心する。


‥‥ごめんね、機密の漏洩かもしれないけどアリシアのためだから。

さすがにこんな扱いは私、我慢できない。


それにしても‥赤荻さん、本当にこんなリストをアリシアに渡したの?

この前電話してきたときは半信半疑だったけど‥‥赤荻さんは一体何の味方をしているんだろう。

私はため息をついて、ちらと窓の外を見た。何の変哲もない住宅街だった。私を監視してるんだったら、向かいの家を借りてカメラ向けたりしてるのかな。私はカーテンを閉めたけど‥‥カーテンをぎゅっと握りながら、これからのことを考えていた。


   ◇


2日後、ちゃんとした返事が来た。私は念話でそれを読み上げる。


『センサーのメーカー、型名、シリアル番号など書いてなかったけど、一般的な仕様に基づいて書くね

ただ、これだけカチカチにしてるんだったらきっと政府とかスパイ組織が見てるだろうと思うから、監視レベル最高なのを前提にするね(民間は適当な監視してるところも多い)


質問に順番に答えるけど、

まず、テレパシーだけど一般で言うテレパシーとはちょっと違って、声を出さないで口パクする必要があるんだっけ?

この監視内容だと中にいる人間同士の通常会話と区別は難しいから、毎日時間と場所を変えて話すならバレる確率下がるよ。

でもミリ波レーダーがあるから口パクは検出できる。手で隠しても無駄だよ。

それから、仮にテレパシー相手も監視している場合、生活リズムとの突き合わせでバレる可能性はある


それから、瞬間移動だっけ。結論から言うと、絶対やめたほうがいい。

最低でも人数の増減は分かってしまうから、簡単に検出できると思うよ。

あと、外部の人と入れ替える形での瞬間移動なら確かに人数合わせはできるけど、

人に゙よって行動パターンとか呼吸といった細かい癖が違うから、見るところがしっかり監視すれば確実にバレる。


人だけでなく瞬間移動を利用した小物の送受もできるかという質問だったけど、

スパイ組織? がどこまでできるか知らないけど

高性能のものを使って全力で監視してるんだったらバレる可能性が高いと思う


センサーで検出できるのは状態変化だけど、それ以外にも連続性というのが重要で、

例えば等速直線運動をおこなっている物体の位置が一瞬で変わるようなことはすぐ分かるよ

今回の例だと、人間は玄関から入って廊下を通って部屋に入る。その過程の一部でも観測できないと異常ということになる


あと物理法則以外に作動するかって質問の意味がよく分からないんだけど、そんなセンサーあったら逆に怖いなあ笑

他言無用はOKだけどさ、テレパシーとか瞬間移動とか一体何を監視してるんだよ笑 やばいことしてないよね』


‥‥アリシアたちの反応はしばらく返ってこなかった。エレナとの話し声がかすかに聞こえる。

‥‥やがて、そのアリシアの声は私に向いた。


『いくつか真理さまに用意してほしいものがございます。構わないでしょうか?』

「はい、頑張ります」

『それでは、できるだけ大きくて表面の凹凸の少ない紙、筆記具、そして道端や家の庭に落ちているような手のひらサイズの石を6個用意して、こちらに転送してください。こちらで魔法陣を作ってお渡しします。真理さまがこちらの家に転移している間に、人の出入りが絶対にないと確信できる部屋の中に魔法陣を置いてもらいます。真理さまの家で、そのような部屋がないかも確かめてください』

「分かりました、ええと、私も見張られてるかもしれなくて、夜に家を出るのは不自然なので明日の夜でもいいでしょうか」

『分かりました。最後に、明日の朝にまたお菓子を送りますので、いつも通りに食べてくださいね』


そのあと説明してもらったが、こちらからアリシアのところに物を送ることもできるらしい。いつもの机の端っこに物を置いて念話で連絡すれば、アリシアのほうから魔法で取りに来るらしい。


その翌朝、起きるとチョコっぽいお菓子が机の上に乗っていたので食べた。3個目だった。

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