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異世界の王女と婚約した私を、日本政府が離してくれない  作者: KMY
第1節 救いの聖女を求めて
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アリシア:作戦の準備

わたくしたち決死隊が最初にやったことは、異世界の予習です。これまでここに召喚された異世界人の記録を突き合わせると、一貫して「地球」と呼ばれる同一の異世界から召喚されたようです。つまりここと「地球」という世界は位相が近く、転移しやすいのでしょう。

この地球へ行くことを前提に研究を進めます。一度転移するとその地点の位相がこちら側に記録されるため、以降は転移先を具体的に指定して、安定した行き来ができるようになります。もちろん転移には莫大な力が必要ですが、それは初回転移の場合に限り、明確な座標を指定していればコストはかなり少なく済みます。つまり、今回の聖女探しが成功して国の危機から解放されたあとは、地球と交易する可能性すらあるのです。


「地球の『日本』という国がもっとも位相が近いそうです。転移先はこの国になる可能性が高いでしょう。日本は、ユーラシアと呼ばれる巨大な大陸の東側に位置する島国の1つです。魔法は存在せず、科学と呼ばれるものを使って生活用品を作っているらしいです‥‥」


ララがしっかり整理して説明してくれるので、たいへん分かりやすいです。わたくしたちもまとめたものだけでなく、時間に余裕があれば一次資料をしっかり見ます。


次にしたことは、この世界に召喚された聖女に対して、我が国含め各国がどのような対応をしたのかの調査です。これはそのままとまではいきませんが、地球人がわたくしたちをどう扱うか考えるに当たって参考になりうるものです。

ララは学者肌だけあって、多数の資料をまとめるのが得意です。姉のエレナと同じくフードローブに身を包んでいます。代々魔法に長けた家系なのですよね。おっと、話がそれました。


「どの資料でも大筋の部分は共通しています。聖女は召喚後、すぐ国王と面会し、そのあと自室へ案内されました。数日以内に教育が始まり、早ければ1週間や2週間で現場に立っています。わたしたちの場合‥‥日本は立憲君主制という未知の体制を採用しており、国王(※天皇)というものは存在しますが権力は別にあります。内閣総理大臣が日本の権力のトップになります。まずはそこへ連れて行かれるでしょう」


ララが既存の資料を元にした予想を述べます。わたくしたち6人はララの説明をしっかり聞きます。‥‥あれ、6人?


「ペトロナ、つまみ出してください」

「はっ」


マノラを窓から投げ飛ばしてもらったあと、わたくしはララに質問します。


「それは内閣総理大臣が国王から実権を奪ったということでしょうか?」

「殿下の『奪った』という表現と実態は大きく異なるようです。あまり詳しい資料は手元にはありませんが、日本は国民主権といわれており、国王ではなく国民が主体となって政治を行うことになっています。国王は飾り物ではありますが‥‥なんというんでしょう。この資料にもそれ以上のことは書いてないですね。意義については日本で余裕があれば確認しましょう。とにかく、資料の文脈からはポジティブな感情しか読み取れません」


この世界とは考え方が大きく異なるようですね。我が国の王政に活用できるかは分かりませんが、ついでに勉強できればいいですね。


「‥‥ララは魔法や物質に詳しいですが、社会学、政治学に詳しい学者も足したいですね」

「それならマノラの名が上がります。性格は少し変わっていますが、あの年齢で多数の論文を書き上げています」

「‥‥‥‥えっ」


周囲の人が露骨に嫌そうな顔をしています。わたくしも鏡は見ていませんが、おそらく同じ顔をしていると思います。聞かなかったことにしましょう。政治学はまた別の機会にしておきましょう。


「‥‥気を取り直して、この国と日本では価値観も異なるでしょう。最初からこの転移の目的をそのまま伝えないほうがいいでしょうか?」

「殿下はご賢明です。ある聖女の記録によると、日本の官僚は基本的に事なかれ主義で、リスクを嫌い、たとえ1人でも国民を危険に晒すことを嫌います。最初から聖女1名を連れ帰るという本来の目的を伝えると、何らかの形で妨害される可能性が高いです。ですので表向きは留学や研究など適当な理由をつけたほうがいいでしょう」


1ヶ月という短期間です。毎日のように夜遅くまで勉強会が続きました。


   ◇


ようやく当日です。わたくしはお母様たちに力強く抱かれていました。どちらのお母様も涙を流しています。


「必ず、無事でいるのです」

「はい、ビクトリアお母様」

「‥‥もしここより異世界のほうが居心地がよければ、ここを捨ててあちらに住みなさい」

「それは絶対にできません。必ず、1年後に聖女を連れて帰ってまいります」


わたくしの決心は固いのです。たとえお母様に言われても揺らぐものではありません。わたくしの一挙一動に国の存亡がかかっているのです。仮にこの任務に失敗しても、王女としてこの国で皆と一緒に死ぬ覚悟です。


メイド服を着たモニカは、わたくしの化粧道具、日用品などを入れたマジカルバッグを肩にかけ、わたくしの右隣にいます。

薄緑髪のポニーテールのペトロナは、自慢の剣を腰につけ、ぎゅっと手を握り、わたくしの左隣にいます。

護衛ながら内気なエレナは、学者のララのようにフードローブで身を包みながら、身長より大きな木の杖をぎゅっと握っています。


ウェーブした青髪をのばし、すらりとして身長も高く体つきもいいクロエは、天使のような真っ白で大きい翼を隠さず、鳥人用の背中に穴の空いた、白く薄手のワンピースを身につけています。

日本には獣人や鳥人が存在しないというので、それぞれの衣装の予備を持ってきています。それ以外の服は日本で調達します。


「みなさん、最後に重要なことを確認します。こことあちらでは社会制度や価値観が違います。最大限あちらの文化を尊重し、まずはわたくしたちの存在をなるべく好意的に受け入れていただくことが最優先です」


メンバーたちの「はい!」という大合唱を聞きます。


そして、わたくしたち6人の決死隊の足元には、巨大な魔法陣。

薄暗い神殿の大広間で、3人の魔道士が用意された呪文を詠唱し始めると、魔法陣が白く光ります。

お母様たちがどんどん、光の狭間に隠れていきます。

華麗な金髪を伸ばし、りんとして王の風格が出ている、時には厳しく時には優しい、わたくしの大好きで自慢のお母様。

必ず1年後にお会いしましょう。


「なにやつ!?」


いきなりそんな声が耳に入ってきます。‥‥が、今更詠唱が止まるはずもなく、その直後‥‥視界は全て真っ白になります。

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