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異世界の王女と婚約した私を、日本政府が離してくれない  作者: KMY
第1節 救いの聖女を求めて
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アリシア:決死隊編成

「異世界には性別なるものが存在し、あたしたちは女、それとは別に男という性別も存在すると言われていますが、殿下の結婚相手はどちらにいたしますか?」

「聖女ですから、女性でしょう。たとえ相手に種を埋め込む能力がなくても、わたくしに能力があるので子供は問題なく作れるでしょう」


ということをモニカと相談しながら、王城の回廊を歩いています。

‥‥さて、モニカは確定として、護衛は誰にしましょう‥‥などと思っていると、「あああーーーっ!!」と横からいきなり獣人が飛び出してきます。心臓が止まりそうになります。当の紫色にそまった耳を伸ばしたウサギの獣人は目を輝かせて、気持ち悪いほどによだれを垂らしておりました。


「男、男、男男男男男男男男男男?」

「え、ええと‥‥」

「殿下、話は聞きました。異世界に行かれるらしいですね!?」

「は、はい」


がしっとわたくしの肩を掴んできます。目が怖いです。


「男! 男! おとこ! お・と・こ! ハァハァ‥‥男ぉぉぉぉおおお!!! 男! 男! 男! ハァハァハァハァ‥‥」

「落ち着いてください、何をおっしゃりたいのですか?」

「男が! 見たい! 今すぐ! 男! 見たい! 同行させてくださあああああああああああいいいいい!!!!!!!!!」


‥‥‥‥この人は危ないと、わたくしは直感します。この興奮しすぎて地面に膝をついてしまったマノラという獣人は、男という伝説上の存在に昔から興味津々なのですよね。

‥‥‥‥とりあえず、異世界転移するわたくしの部隊、通称『決死隊』には入れないでおきましょう。「前向きに検討します」と言ってそのまま通り過ぎようとするわたくしの服を後ろから引っ張ります。


「男ぉぉぉぉおおおお!!! 男男男男男男男男男男男男男ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!!!!」


‥‥わたくしにモニカが耳打ちします。「護衛を決めてから追い出しましょう」「‥‥そうしましょう」


   ◇


というわけで決死隊は3名になりましたが、実質2名のままです。マノラはずっとわたくしたちの後ろから離れません。迷惑です。

いいかげん護衛を探しましょう‥‥と、訓練場へ伺います。そこでは兵士たちに剣を教えている女性の姿がありました。彼女‥‥といってもわたくしより2つくらい上の年齢ではありますが、剣の天才で、今では実力はもう隊長クラス、足りないのは実戦経験といわれている、ペトロナという子です。


「殿下! 何の御用でしょうか?」


簡潔なシャツとズボンだけのペトロナはこちらに気付いて、駆けつけてきます。薄い緑色のポニーテールを揺らし、痩身で背も高く、本当にりりしい人です。


「決死隊の話はこちらまで届いておりますでしょうか」

「はい。先程宰相に言われました。これから殿下が来られるので、護衛を考えておけと」

「それはありがたいです。推薦はございますか?」

「はい。本職が護衛となります。ほかに魔法師団からも推薦をとると宰相がおっしゃっていたので、そちらへも行かれては」

「ありがとうございます。ペトロナ、でしたね。よろしくお願いします」


挨拶をしてから、今度は魔道士が本拠として使っている訓練地に赴きます。その間もずっと後ろから「男、男ぉぉぉぉぉ♡♡」という唸り声が聞こえますが、聞かなかったことにします。


「王女殿下、お目にかかれて光栄です。私は魔法師団で新しく副団長になった、エレナと申します。私なら翻訳魔法も取り扱えますので、異世界の人間との意思疎通はお任せください」

「お噂はかねかね聞き及んでおります。最年少で、それもわたくしと同じ年齢で副団長にのぼりつめたとか」

「いえ、私はそんな‥」


魔道士らしく身長よりも大きい杖を持って、フードローブに身を包んだ、すぐ謙遜するおとなしい子のようです。黒縁のメガネをかけて、肩をすぐめながらこちらの反応を伺っています。後ろで「男、男、男ぉ♡」などと言っている誰かさんとは真逆ですね。というかこういうシーンでネタキャラはいらないでしょう。


「‥‥さて、わたくし、わたくしの世話をするモニカ、護衛のほか‥‥他に必要なものは何でしょう」

「学者はいかがですか。こちらから異世界におうかがいする数少ない機会です。異世界は学者にとって研究対象の宝庫です。この機会に連れてみてはいかがですか」

「そういえばエレナの妹は学者でしたね」

「よくご存知ですね。ララと申します。魔法学を専門にしておりますが、それ以外にも幅広い分野を少しずつかじっています。自宅におりますので、求めに応じてこちらまで呼び出します」


ララとの面談を後日する約束を取り付けて、「男、男ぉ♡」という雑音を聞き流しながら王城の建物の中に戻ります。


   ◇


ペトロナのいる訓練場に戻って、ペトロナにマノラを縛らせたあと、ほかに必要な役割がないか確認します。


「斥候はいかがでしょうか。護衛は基本的に地上戦のため、全体を見渡すのが難しいです。また異世界に空飛ぶ戦士がいるかもしれませんので、空中の戦力もあったほうが役に立つでしょう」

「なるほど‥それで推薦は?」

「‥‥クロエはどうでしょう。少し怠け癖はありますが、必要な場所ではまじめに戦います」

「ではクロエとも話をしましょう」


そこから2日くらい。あっという間に、決死隊の7名(6名)が一室に揃いました。

リーダーはわたくし、王女アリシア。

わたくしの身の回りの世話をするメイド、モニカ。

護衛の1人で剣士、ペトロナ。

護衛の1人で魔道士、エレナ。

魔法学者でエレナの妹、ララ。

鳥人の斥候、クロエ。


そして、そこに転がっているマノラには手紙を突き出しました。


『このたびは当部隊の採用に応募くださり誠にありがとうございました。厳正なる審査の結果、採用を見送らせていただきます。せっかくご応募くださったにかかわらずご期待に添えない返答となり大変申し訳ございません。貴重な時間を割いて応募くださったことに改めて感謝申し上げますとともに、今後のご活躍をお祈り申し上げます』


すると、


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛」


などと叫びながら転がり始めたので、わたくしは「‥‥護衛として最初の仕事ですよ」と言いました。ペトロナもエレナも明らかに嫌そうな顔をして、マノラを窓からつまみ出します。なんだか悲鳴が聞こえますが、ここはまだ2階ですので問題ないでしょう。

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