アリシア:聖女を求めて
※日本政府の各対応、日本がとりうる外交戦略やその詳細な理由、関係省庁連絡会議の内容のうち一部分の考案や中盤以降での議事録の作成、その他多数、物語の進行に影響を及ぼす程度にChatGPTを利用しております。あらかじめご了承ください
※他の作品と比較してかなり強めの現実主義が入っています。苦手な方はご注意ください
※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません
この世界に男という生き物がいなくなってから、数百年がたったと伝えられます。
女性同士で子をなすことができる世界において、女という言葉はやがて死語になりつつあり、人々は独自の文化を創り上げ、新しい時代を築き上げました。
――そして今、それはついえようとしています。
「試算結果が出ました。あと3年でこの国は滅亡します」
そう大広間で、学者は告げました。
「‥‥何かの間違いではありませんか?」
わたくし――アリシアに2人いるお母様のうち1人は国王として玉座に座っています。その国王ビクトリアお母様ですら、動揺を隠せなかったようです。
長い金髪を伸ばし、かわいらしい、美しい、光のようだ、と言われるわたくしも、いずれはあのお母様のようにりりしくなるのでしょうか。‥‥とみとれている場合でないことは理解しています。
「何度も試算しました。1回目の試算では4年となりましたが、前提条件に不足があり再度試算したところ3年でした。念のためもう一度同じ条件で試算して、同じ数字が出ました」
「なんということ‥‥」
「そして、仮に隕石を破壊するなら、破壊後の破片がこちらに向かうことも考慮すると‥‥これから1年1ヶ月後が、ギリギリ許容される期限です。そして、いくら迫っているとはいえ1年経過後も隕石とはかなりの距離があります。聖女の力に頼る以外に方法はないでしょう」
お母様は頭を抱えます。
そう‥‥この国にあと3年ほどで、一撃で国を滅ぼすような巨大な隕石が迫ろうとしているのです。隣国への交渉はもちろんしましたが受け入れ拒否。我が国は巨大で全員は受け入れられないのです。というか一部の科学者の見積もりではその隣国すら全てふっ飛ばされ、この世界そのものが終わるという‥‥たいていの人間はその見積もりを笑っていますが、お母様は真摯に受け止めています。
「‥‥‥‥こうなっては最後の手段しかありません。聖女の召喚です」
そうお母様は告げますが‥‥家臣たちが口々に反対します。
「私は反対です。この王国では数百年前までは聖女を召喚していましたが、最後のひとつ前の聖女は異世界からいきなり連れてこられたために激昂し、この王国に打撃を与えてから去りました。その前は、淫乱な人だったのであまり役に立ちませんでした。聖女召喚はあまりにリスクが高すぎます」
「私も反対です。つい最近は隣国で聖女召喚がおこなわれましたが、逆に王位簒奪を図り、内乱を起こしました。この国が滅ぶのが遅いか早いかの差しかないでしょう」
「しかしそれらの例は一部だけです。他の、8割以上の聖女はきちんとおつとめをこなしておられました」
「わが王国は残りの2割のうち半数以上の聖女をつかまされています。くじ運が悪いのです。どうして信頼できましょうか」
「それは全体の召喚回数を考慮していないでしょう。うちは複数の国が合体してできた大国なので歴史上も召喚回数が増えるのは当たり前です」
やいのこいの‥‥‥‥この国は聖女召喚に対する忌避感が強すぎます。
ですが、聖女がいないとこの危機を脱せないのも事実。異世界の人間はこちらに召喚される時、この世界の人間の力すらこえた大きな力を得ます。特に女性はその傾向が強いのです。
が、ここに来る聖女全員が素晴らしい性格というわけでもありません。特にこの王国は、偶然でしょうが、被害が大きめです。聖女を召喚するくらいなら滅ぶのを待つ‥‥と考える人も少なくありません。
結果的に、この国は数百年にわたって召喚がおこなわれなくなり、現在、聖女がいないのです。
「隣国にも聖女がいます。支援を受けられては?」
「おそらく拒否されます。こちらを支援すると、聖女の本国にまで手が回らなくなります。あの隕石ですから、破壊に失敗すれば周辺各国にも被害が及ぶでしょう」
また大広間での議論が紛糾します。
‥‥もう見ていられません。
どうせ王国が滅ぶのです。安泰も何もあったものではありません。
わたくしは静かに、そして大きく、おもいっきり、手を挙げました。
「アリシアです。陛下、発言をお許しください」
「構いません、何ですか」
「わたくしが異世界に行き、聖女を探してまいります。聖女は通例として王族や国王と結婚します。わたくしは次の国王となりますので、わたくし自身が探したほうが合理的でしょう」
「なりません!」
お母様はすぐに怒鳴ります。‥‥ですが家臣たちはお互い小声で相談しあったあと‥‥一斉にお母様の方を向きます。
「アリシア殿下の言を採用すべきです。聖女が必要不可欠であれば、こちらから直接探したほうが確実です。まして将来の結婚相手、殿下も間違うことはないでしょう」
「私も殿下のご意見に賛成です。普通に召喚するよりも安全です」
「わたしも賛同します」
「他に妙案がありません」
家臣たちが口々に言うのでお母様は椅子の肘掛けを強打します。‥‥が、家臣は止まる気配を見せません。
そのあと数時間くらい同じ内容を堂々巡りで議論した結果‥‥お母様は渋々、わたくしの提案を採用することになりました。
◇
「なぜあんな提案をしたのですか!」
会議が終わったあと別室に引っ張られたかと思うと、国王のビクトリアお母様、そして王妃であるビビアナお母様が、わたくしに詰め寄ります。すでに決定事項であるにかかわらず、お母様たちは遠慮がありません。
「異世界にはどんな蛇や化け物がいるか分かりません。そんなところに、次の国王が行けるわけないでしょう!」
「ですが聖女たちはその世界で生きてきました。わたくしでも生きていけるはずです」
ビクトリアお母様が舌打ちすると、今度はビビアナお母様がため息をつきます。見た目は人間でありながら獣耳をぴょこぴょこ動かす、茶髪の、大人らしいというよりはかわいらしい女性です。
「‥アリシア。妹もたくさんいるのです。聖女のことは妹に任せては?」
「大きな力を持ち、かつ国を救った英雄になるのです。そのような人が国王の妃でない時点で、わたくしの即位後も無用な争いの種となりかねません」
「確かにそれは‥‥」
「今までわたくしたちがノーリスクで勝手に聖女を呼び寄せていたのです。聖女にも都合があって家族もいるのに、同意を取らず連れ込みました。だからこそ、このような事態において都合のいいことは言えません」
「でも‥‥」
お母様たちが駄々をこねると、今度はわたくしの後ろに控えていたメイドのモニカが進み出ます。汚れもない真っ白な短髪で、猫の獣人であり長い尻尾もはやしています。わたくしより少々身長が低いです。
「アリシア殿下は王太女として、この国のために自分ができる最大限のことを考え、上奏しました。であればそれを最大限かなえるのが親の役目ではないでしょうか。王国を巨大隕石から救うという大きな利のためには、大きな障壁が伴います。それに立ち向かう覚悟を決めた殿下に対して、決定事項を覆すのは失礼ではないでしょうか」
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
お母様たちは、渋々という感じで頷いています。そうです、すでに大広間でほとんどの家臣が賛成し、決まってしまったことです。本来なら数日かけて検討する議題でしたが、学者の「1日でも早いほうがいい」という声で家臣たちが押し切ってしまったのです。わたくしも提案したその日に決まるとは思いませんでした。
それだけに、この事態は差し迫ったものです。
なにより、全くつてのない異世界でゼロから人間関係を構築し、その中から結婚相手を探すのに、1年ではあまりに短すぎるのです。
「‥‥‥‥一緒に行く人を探してください。最低でも護衛は付けてください」
「はい、ビクトリアお母様」
わたくしは深く一礼して、モニカとともに部屋を去りました。




